2014年 撮影紀行(NO.11)



12月25日 百蔵山

 百蔵山は今年1月に訪れて以来1年が経とうとしている。この時は美しい富士が展望できたものの天気はピーカンで写真としては単純にならざるを得なかった。今回は桂川沿いに発生する川霧で谷が埋め尽くされることを願い百蔵山を訪れることにした。
 百蔵浄水所先の和田美術館前を通過し、百蔵山の登山口に着いたのは午前4時。天空は満天の星空であるが、気温が高いせいか鮮明さに欠ける。風が強く気温の割には寒さが身に染みる。広葉樹は殆ど葉を落としているため風音は割と静かである。風音からは強風であることが感じられない。
 4時20分登山口を出発する。百蔵山の西コースは比較的傾斜は緩くエネルギーを多く必要としないが、途中に転石の多い箇所がありヘッドランプの灯りでは躓きそうで歩きづらい。途中、松の木の多い富士山展望所に到着する。暗くて目視では確認出来ないが、恐らく姿は出ていると思われる。これより暫く緩い登りを続けるうちに葛野部落と山頂への分岐点に差し掛かる。登山口を出発して既に1時間が経つが、ここまで来ると山頂は間もなくである。
 5時40分山頂に到着。風は強く未だ収まりを見せていない。汗を殆ど掻かなかったことから体温は上がらず寒さは一入である。温度計を見ると−1℃と気温は高いが体感温度は思いのほか低く感じる。やはり寒さを強く感じるのは気温より風の強さである。大月の山でも標高の高い北の方の山では−20℃位になることもあるが風がなければそれ程寒さは感じない。
 山頂は未だ暗く富士山は黒いシルエット姿で朧気ながら確認出来る。雲は殆ど見られずピーカンといっても良いが、日の出時間帶に変化を望みたい。期待した桂川沿いの川霧は皆無で周辺にも雲海は見当たらない。
 今日の日の出時間は6時48分、もう一週間ほどすると一年中で最も遅い6時50分台に入る。夏場の早い時間に比べると約2時間以上の差がある。因みに日の出の早い時期は6月中頃で4時25分が日の出時刻となる。山頂に明るさが増してくると周辺の状況が分かるようになってきた。雲は全般に少ないが、東から西へ連なる黒い帯状の雲が発生していて日ノ出を遮る可能性がある。やはり、この雲の影響で日の出時間が数分遅れ、日差しもやや弱く残念ながら富士山頂は期待した色づきにはならなかった。風は大分収まりを見せてきたが、時間の経過と共に雲の量は増えてきた。やがて山頂を隠す雲がべったりと貼り付き、この状態からの変化はないと判断し撮影を打ち切ることにした。
 機材を片付け9時40分に下山を始める。今日は富士山の雪も多く神々しい富士山を拝むことが出来た。登山口に戻ったのは10時40分。下山途中、1人の登山者と出会った。



今日の富士山

時間の経過と共に雲が増えやがて山頂を隠す雲が現れてきた。

僅かに色づきを見せる    6:50頃    
雲が徐々に増えてくる    7:25頃   
山頂は雲で覆われる    8:30頃









登山道と山頂の様子


以下写真は下山時に撮影したもので時間を追って並べてある


山頂の様子         9:40頃
 山頂はフラットで東西に長い  9:40頃  
葛野部落と山頂への分岐 9:55頃






中腹の展望所の景観    10:05頃  
同左。展望所にはベンチが置かれている
転石が多い箇所      10:15頃






檜林を行く登山道     10:20頃    
登山口近くの水場      10:35頃  
登山者カード提出箱    10:35頃








西コース登山口の広い駐車スペース 10:40頃












                                                                    使用カメラ: ・OLYMPUS E-P2   ・FINEPIX F300EXR








12月13日 牛奥ノ雁ヶ腹摺山

ここの所気温が下がり今回は霧氷や樹氷と富士山を狙って牛奥ノ雁ヶ腹摺山を訪れることにした。しばらく冬型の気圧配置が続き日本海側は大雪に見舞われている。そのような状況の中、十二景の山でも北の方の山には積雪があったものと推測され期待が持たれた。

 既に林道は冬季閉鎖に入り、山頂までが遠くなり体力勝負が強いられる。国道20号にも笹子辺りから路肩には白いものが見られ、期待通り山は雪で覆われていると思われた。景徳院入口を右折し県道大菩薩線(218号)に入ると路面は真っ白、数センチの積雪と思われるが、雪道の走行安定性を確保するため車のギヤを4駆に切り替える。暫く走行するが雪が深くなる傾向は見られない。

 すずらん荘の前を通過し、1km程すると右側に木材運搬用道路の黄色いゲートがあり、そこに車を止め、登山準備に取りかかる。このゲートは木材を運び出す時に開けられ平時は閉鎖されている。気温は−5℃、風がやや強い。天空は満天の星。ほぼ南中には月齢20.6日の半月状態の月が意外と明るく輝いている。

 午前3時20分ゲートを出発する。雪は意外と少なくアイゼンは不要である。木材運搬用道路は林道閉鎖時に日川林道登山口までの近道で以前から使用していたが、今年10月に始終点の取付道が新たに設置された。特に終点側(日川林道への取付)の取付道は日川林道へのアクセスが便利になった。

 日川林道の登山口には3時50分に到着。雪は思ったよりも少なく、所要時間は無雪期と変わらないと思われたが、標高が高くなるにつれ滑り易くなってきた。アイゼンを付けた方が良いと思われたが、面倒なので止めた。尾根のピーク点を5時半に通過、富士山は黒い姿で見えているが、周辺に雲はなく特別な情景は今のところ期待できないと思われた。

 山頂には6時に到着。強風でやたらと寒い。気温は−12℃やや高めであるが、強風だと体感温度は5℃程下がり、指先と耳は冷たさを通り越し痺れを感じる。この症状を通り越すと感覚がなくなり、この時は既に凍傷に罹っている状態である。今年2月に大蔵高丸で手の指先全てと両耳が凍傷に罹り3ヶ月間皮膚科に通った経緯がある。先生に耳は切断しないでくれと真剣になって懇願した。幸いにも大事に至らなかったので救われたが、未だに指先の痺れは残り、耳の色が黒ずんでいる。特に富士山に向かい西風にさらされた右耳はケロイド状となり耳がなくなるのではないかと心配した。この二の足は踏むまいと十分対策したが同じような状況にさらされた。しかし、今回は撮影に余裕があったため、痺れを感じた段階で指先や耳を擦る時間を持つことが出来たので凍傷は免れた気がする。ハクキンカイロも持参したが調子が悪いのか暖まらない。外気が低いと機能しない場合も考えられるが、今更どうにもならない。風が強いと身体のあちこちに風が入り込み暴風対策を講じても効果はあまり期待できない。シャッターを切るときはそれに集中しているため、寒さを感じず、知らないうちに凍傷に罹っている事が多いと思われる。凍傷は火傷と症状は似ている。

 霧氷や樹氷も写真になる程のもなではなく期待が外れた。東の空はオレンジ色に染まっているが棚引く黒い雲が日の出を遮るように思われる。

 日の出時間に差し掛かるが富士山に朝日が入らない。やはり東の雲が光を遮っているからである。やや遅れて朝日が入り出したが、薄いピンク色に染まった程度である。美しい富士山を補完してくれる材料が少なかったのは残念であるが、冬の厳しい気象環境に耐えている富士山の姿には感動した。自分も寒さに耐え頑張らなければと思った次第である。

 8時30分下山を始める。車を止めた所に戻ったのは10時30分。今日も登山者に出会うことはなかった。



今日の富士山


山頂は荒れ模様。そんな風雪にさらされじっと耐えている富士山には感動を覚える。




日の出少し前の富士山(表情がやや堅い)    6:35頃
  日の出時間直後               6:45頃










登山道と山頂の様子


 登山道は薄い根雪に昨晩降ったと思われる新雪が薄く乗り、標高が高くなれに連れ気温の低下と共に凍結し滑り易くなる。登りはアイゼンを装着せずに登ったが、下山では滑らないよう安全のため装着した。しかし、西尾根コースは木の根やブッシュが多く雪の少ない場合、刃を引っかけ思わず転倒することもあるので注意が必要である。

 林道閉鎖で日川林道の登山口まで歩かなければならないが、10月に登山道が開通し(県道すずらん荘前から日川林道登山口まで)林道を歩かなくともこの近道を利用することで、時間的に大分短縮出来るようになった。

 山頂は以前降った雪の上に昨晩降ったと思われる雪(あられ混じり)が数センチ積もり、真冬の情景を見せていた。


以下写真は下山時に撮影したもので、時間を追って並べてある。


山頂の様子           8:25頃    
山頂直下の下山道        8:35頃
山頂と西尾根ピーク鞍部からの枯木と富士山  







     西尾根ピーク付近     8:55頃  

西尾根からの大菩薩湖鳥瞰     9:00頃

雪で白くなった120段ある長い木製階段 9:55頃






                                                                                                                                                                                                  

雪を被った日川林道      10:00頃    


西尾根登山口          10:00頃

日川林道から県道への近道入口   10:00頃






                                            
県道への下山道         10:05頃
木材運搬道に繋がる        10:10頃  
車を止めたゲートまで繋がる    10:15頃







すずらん荘前の県道へ出る左に入る 10:25頃        




車を止めたゲート前       10:30頃







          行程:木材運搬道ゲート(午前3:20発)→日川林道登山口(3:50)→西尾根ピーク点(5:30)
                      →山頂(6:00着〜8:30発)→西尾根ピーク点(8:55) →日川林道登山口(10:00)
                                     →木材運搬道ゲート(10:30着)



                                                                                                                使用カメラ:OLYMPUSEP-2     FINEPIX  E300EXR






12月5日 笹子雁ヶ腹摺山


 笹子雁ヶ腹摺山は昨年2月に訪れて以来である。この時は道を間違え膝ぐらいまで雪のある中、山頂と逆方向を彷徨すること3時間半。登山口に戻り仕切り直した。既に疲労困憊。これ程登山に難儀したことはなかったが、その苦い経験から2年が過ぎようとしている。今回は二の足は踏むまいと決意し山に入ることにした。

  国道20号線から旧道に入り少し走ると、車はいきなりツルッと滑り出した。ゆっくりした速度で走行していたため幸いにも障害物に当たらず事なきを得た。車の温度計が0℃を示していたため凍結はしていないと思った矢先の出来事であり、不意を突かれた感じである。スタッドレスを履いた四駆でも凍結路面は良く滑る。過信は禁物であることを改めて認識した。

  矢立の杉にさしかかり道路閉鎖予定の看板が立てられていた。8日からと書かれていたので助かったという思いである。情報を得ずに来たため、冬季閉鎖されていたらゲートから登山口まで舗装道路を30分程歩かなければならず、予定に狂いを生ずることになる。その結果、余裕が損なわれ、撮影にも影響する場合もある。可能な限り情報は事前に得ておかなければならないと改めて思った。  

  笹子隧道手前の登山口に着いたのは午前3時5分。駐車場に他の車は止められていない。天空は満点の星、風は殆どない。西の空には満月1日前の小望月が輝き見せている。気温0℃、暖かい感じで寒さはない。

  3時25分、登山口を出発する。笹子峠には10分足らずで到着する僅かな距離であるが、積雪が多い場合、山頂に向かう登山道を見失い、登り初めで思わぬ時間浪費をすることが何度かあった。今回、積雪はなかったため迷わず笹子峠に到着。のっけから急峻な斜面を登る。僅かな距離であるが十二景の山では最も傾斜のきつい登山道と思われる。何とか難所を越え、最初の送電線鉄塔を横目に4時5分に通過。途中、尾根道と中腹道に分岐するが、中腹の登山道を行くことにする。

 斜面中腹に切られた登山道には枯れ葉が堆積し滑り易く、一部右側は急峻な谷となっている。ここで転倒すると転げ落ちるほどの急角度が谷に向かって伸びている。分離していた登山道は2番目の鉄塔手前で合流する。

 鉄塔を4時35分に通過。この付近から白いものがちらほら見えだした。僅かであるが登るにつれ白さの密度は増してくるが、積もっているほどではなくなく、地表に色が付いているという状態である。暫くすると緩やかな下りになり、山頂に差し掛かる手前でまた登りに入るが、山頂直前は急竣な登りが待っている。この最後の登りは結構きつい。

 息も絶え絶え山頂には5時に到着。風はなく気温−1℃。(日の出時間には−6℃に下がる)富士山はやっと見える程度の姿で存在を示している。満天の星空、小望月は既に沈んでいる。西側を望むと雲海で甲府盆地は埋め尽くされている。撮影は今まで山頂西側から行っていたが、木が伸び過ぎて、現在富士山の撮影が難しい状況である。他の場所を探したが、山頂には視界の開けた場所が何処にもなく、南に下った場所を探した結果、電波反射板の設置された付近に僅か一部、木の合間から富士山を望める箇所を見付けた。急斜面で足場は悪いが何とか三脚はセットできた。

 6時頃になると明るみが増し全体の状況が分かるようになってきた。甲府盆地の雲海はこちらには入り込んでいないようであるが、富士山に掛かる雲が形を変えながら東にゆっくり移動している。ピーカン状態は避けられるようである。

 今日の富士山は雪をたっぷり蓄え、日ノ出前の青白い姿は神秘的で、何かを訴えている様に見える。今日も平和で穏やかな一日であることを願っているのかも知れない。日の差す前から撮影を始めたが、暫くすると1人のカメラマンがやって来て、私の前で撮らせてくれと申し出があった。私の撮影に影響ないため、受け入れたが、私の前は更に足場も悪く木の枝が入り込む状況だと思われた。日の出直前でクライマックスをこれから迎える時、狭い場所で横にはスペースがなく場所を譲ることも出来ず我慢して貰った。

  6時半頃、日の出を迎え富士山頂は薄くピンクに染まった。富士山に掛かる雲は相変わらず変化を繰り返しているが、山頂は荒れ模様でなかなか良い形の雲が形成されない。

  笹子雁ヶ腹摺山からの富士山は手前に送電線鉄塔が入り込み、雲でも掛かってくれれば表現幅は広がるが、これを外そうとするとどうしても望遠レンズを使って大写しとなり、単調な構図に制限される。従って、写真の善し悪しは状況の変化に頼らざるを得ない。

  8時頃になると山頂を隠すような雲が多くなり撮影の潮時を迎えた。側のカメラマンも片付けが始まり、先に下山を始めた。私もそれに併せるように片付けを始め、8時40分に下山を始める。この時富士山の山頂は雲に隠れていた。

  登山口には10時10分に到着。途中、登山口付近で1人の登山者と出会った。





今日の富士山


甲府盆地は雲海で埋め尽くされていたが笹子の谷には入らなかった。




薄ピンクに焼けた日の出直後          6:35頃    
形を変えて次々現れる雲          7:30頃









登山道と山頂の様子


 道路の冬季閉鎖は8日からと矢立の杉近くに置かれた立て看板に表記されていた。閉鎖されると舗装道路を30分程歩かなければならず、行程に組み込んでおく必要がある。舗装道路が凍結すると滑り易く時間が掛かるので余裕を見て置いた方が良い。

 今回、積雪は殆どなかったが、積雪が多いときは難儀する山である。急斜面にはプラスティック製の階段が設けられていて、中途半端な積雪だとアイゼンの歯が引っかかり特に山頂直前の急斜面は危険な箇所があるので注意が必要である。

 山頂からの富士山撮影は木が伸びて難しい。少し南に下った電波反射板の置かれた横がお勧めであるが、狭くて足場が悪い。また、標準系のレンズではどうしても枝が入り込む。


以下写真は下山時に撮影したもので時間を追って並べてある


山頂の様子                 8:40頃    
山頂直下の急斜面             8:50頃
笹子峠から2番目の鉄塔           9:10頃






尾根道と中腹道の分岐点(1番目の鉄塔近く)
9:40頃

落ち葉で一杯の中腹登山道  
9:20頃  


笹子峠より1番目の鉄塔           9:40頃







尾根道と中腹道の分岐点(1番目の鉄塔近く)
9:40頃    


甲斐大和への分岐点     9:50頃

笹子峠(山頂に向かい急斜面が始まる)
    10:00頃  









登山口の駐車場              10:10頃














           行程:登山口(3:25発)→笹子峠(3:35)→1番目鉄塔(4:05)→2番目鉄塔(4:35)→山頂(5:00着〜8:40発)

                        →2番目鉄塔(9:10)→1番目鉄塔(9:40)→笹子峠(10:00)→登山口(10:10着)

 



                                                       使用カメラ :OLYMPUS E-M1   FINEPIX  F1000EXR