2018年撮影紀行(その7)




12月7日 岩殿山

 今回は桂川沿いに川霧が発生することを予測し岩殿山を訪れることにした。前日少量ながら降雨があり、ある程度の湿度が保たれ雲海に発達するチャンスが考えられた。しかし、気圧配置図を見ると等高線が縦に密なため風が強い状況が予測され雲海に発展しない可能性が考えられた。岩殿山には桜の撮影で4月に訪れて以来である。  
 岩殿山直下の駐車場は工事用の車が置かれ、一般の人の利用はまだできない状況となっていた。今回は前回同様、市民会館に置かせて貰った。
 山頂には5時20分到着。既に雲海が発生していた。風は殆ど無風。気温は高め。天気予報は的を外していた。更に晴の予報は外れて曇り空。ここの所予報が外れることが多いような気がする。雲海のトップ位置は発達途上の雲のため未だ低く、その上にやっと見える程度のコントラストのない富士山が佇んでいる。東側は厚い雲に被われ1時間後の日の出時間に光が差すとは到底考えられない。
 暫く待機し様子を窺うが、雲海は更なる発達を遂げている。富士山は相変わらず抜けが悪く光が殆ど無い状態では富士山を撮影してもコントラストが無く写真が成立しない。今日は諦めるしかないかと出直しも考えたが、折角来たのだからもう暫く待とうと気持ちを切り換えた。
 9時を過ぎてやっと充満していたガスも少しずつ取れ、富士山の抜けが良くなってきたと思われたが、相変わらず富士山に同化した山頂付近の曇空の色。これではコントラストのない写真にならざるを得ない感じがする。 撮影はフィルムでも行ったが、今回の写真が来年のカレンダーの12月用に使えるかどうかやや疑問である。
 再度出直すにも時間が無いし、デジタル画像を調整すれば何とかなる気がする。 10時過ぎに下山開始。11時には市民会館の駐車場に到着。
 今日は山頂で市内に住むカメラマンと出会った。また、山頂に登ってきた単独登山者やグループ合わせて12名程と出会った。


今日の富士山

光不足と山頂付近の空に同化した富士山。コントラスト不足でメリハリのない写真となった。

日の出前の富士山               6:25頃  
相変わらず霧が充満し抜けが悪い      8:00頃


山頂に多少光りが差してきた感じ       8:15頃    
青空が若干見えてきたが未だ光が差さない   9:30頃




山頂の様子と登山道


山頂から北側の展望    8:30頃    
百蔵山の雄姿        9:00頃
山頂                      9:55 頃


山頂から下山道      10:00頃    
枯葉で一杯の階段道   10:05頃
椿の花がだいぶ落ちている 10:30頃



                                   使用カメラ: ・OLYMPUS  E-M1   ・CASIO EXILIM EX-ZR62 





12月3日 大蔵高丸

 前日の予報では夕方から雨となっていた。更に、当日は早朝から晴れの予報が出され、このような気象情報から降水量がある程度あれば雲海発生の確率が高く、撮影チャンスに結びつくと思われた。撮影は雲海上の富士山が目的で、標高が低い山だと雲海に飲みこまれる可能性が高く、撮影できないことも考えられるため、今回は標高1781mの大藏高丸から富士山を狙うことにした。
 今回の撮影では同行者1 名と行動を共にすることになり、前日、湯ノ沢峠の駐車場で車中泊し、早朝の出発に備えることにした。私は腰の調子が悪く狭い車内での就寝は寝返りが打てず、腰に負担が掛かるため湯ノ沢峠の避難小屋に泊まることにした。
 21 時頃から雨が降り出し、明け方3 時頃まで降っていた。トタン屋根で雨音が耳に残り、更に寒さで小屋に寝ていても思うように睡眠が取れず1 時間おきに小用を足す羽目になった。また、小屋の中にネズミが居て一晩中カリカリと音を立て、ライトを点けると物をかじる音は止み、ライトを消すとまた始まる。といった繰り返しで睡眠は殆ど取れていない。
 4 時20 分、湯ノ沢峠を出発。雨は止み天空を仰ぐと満天の星空が輝いている。雲海が発生しているかどうか、お花畑から西側を望むと、ガスで視界は閉ざされている。恐らく甲府盆地は雲海で埋められていると推測される。
 大藏高丸には5 時30 分に到着。ガスで視界は被われているが、時折、雲海の頂部に富士山の頂が見え隠れを繰り返している。しかし、30 分程すると完全に視界は閉ざされた。丁度日ノ出時間になっていた。今日の日の出時間は6 時30 分であるが、その時間に視界は閉ざされた。
 再度、視界が開いたのは1 時間ほど経った7 時30 分、大規模な雲海が発生していた。迫力と共に躍動感に溢れている。惜しむらくは日の出から1 時間経過しているため。雲海に色が付かなかったことである。暫く安定した富士山が見られたが、また、40 分ほどして視界が閉じた。天候は安定しているように思えたが、冷たい空気と暖かい空気のせめぎ合いで落ち着かない。
 再々度、視界が開いたのは40 分ほど経った8 時50 分。太陽は高い位置に昇り東側からの斜光が眩しい。左目を隠さないとファインダー越しに情景が見づらい。雲海は未だ発達しているようでトップの位置がだいぶ上がっている。躍動感と迫力は未だ失われていない。9 時半頃になって雲海は少しづつばらけてきた。雲海は未だ残っていたが、太陽もだいぶ高い位置となり潮時と判断し、下山を始める。
 途中1 人の登山者と出会った。湯ノ沢峠の駐車場には11 時10 分に到着。今回は素晴らしい雲海に出会うことが出来、大変ラッキーだった。しかし、雲海は白一色、富士山も同様に白く撮影の難しさがある。今回の雲海に限っては迫力と躍動感があり動きのある撮影が出来たと思われる。雲海を狙って撮影に出掛けることは多いが、今回のような躍動感ある雲海に出会えたのは珍しい事である。


今日の富士山

6:10 頃 撮影(日の出前)
7:55 頃 撮影


8:55 頃 撮影
9:00 頃 撮影



山頂及び登山道の状況

 樹木は殆どが葉を落とし既に冬の準備が出来ている。今年は1 月に大雪が降ったり、6 月から猛暑日が続いたり、更に9 月は強風が吹き荒れ、山の動植物にとっては災難続きとなった。
 温暖化が進み気候変動が顕著に進むと人間社会に於いても生活に大きな影響を及ぼすことは避けられない。数年後には予想を遙かに超えた結果になることも頭の隅に入れておく必要がある。
 登山道は手厚い管理のもと、大雪や強風による倒木は殆ど片づけられ、現在は登山に支障することはないが、登山道には、夏のうちに落葉した葉も多く場所によっては厚く堆積している所も多く見られる。枯葉は雨上がには滑り易く注意が必要である。

大藏高丸山頂 10:05 頃  
山頂付近の登山道 10:10 頃
枯葉が堆積した登山道 10:15 頃


隈笹の新葉が見られる  10:30 頃  
白谷丸を望む  10:40 頃
お花畑から大藏高丸  10:40 頃


南アルプス方面は雲多い 10:50 頃
湯ノ沢峠     11:05 頃
駐車場      11:10 頃


                     

                             使用カメラ: ・OLYMPUS  E-M1   ・CASIO EXILIM EX-ZR62 


 




11月15日 清八山

 清八山は昨年1 月に訪れて以来約2 年振りになる。その当時、積雪が多く笹子側から入山することに困難があると懸念され、標高差の少ない三ツ峠側から入山することにした経緯がある。今回は未だ積雪は無く標高差600m の笹子側から時間を掛ければ何とか登れると思われた。笹子側から登るのは2016 年8 月以来となるが、その当時は未だ体力も多少は残されていた。しかし、それから2 年数ヶ月が経過し体力の低下や腰痛の悪化など考えると標高差600m の登山はかなり厳しいと思われた。勿論、標高差の少ない三ツ峠側から登ることも検討したが、自宅から三ツ峠登山口までの距離も長く笹子側登山口からと山頂到着に大きな差は無いと思われた。しかし、体力の消耗を考えると雲泥の差がある。以前、笹子側登山口から山頂まで無雪期では2 時間弱の所要時間であったが、現在の体調では5 割増の所要時間でやっと登り切れると思われる。更に体力消耗や腰痛の後遺症を減らすため、4 時間程度の所要時間を見積り、日の出時間に余裕を持たせ山頂到着を目差すことにした。
 笹子側の出発点は林道を南に車で入れるところまで行き、その場所に車を置いた。登山準備をし、午前1 時20 分に出発した。林道を15 分程歩くと植林された小高い丘の下に到着。ここには動物の侵入を防ぐためネットが広範囲に張り巡らされている。2010 年にヒノキの苗が植林され、現在8 年程経過ししているが、ヒノキは人間の背丈以上に生長している。ほどほどに生長したヒノキは何と食害の対象となっているようである。進入防止ネットに囲われたエリアへ入るには、出入り口を開閉する必要があり、設置された看板に扉の開閉方法が示されている。その手順に従い出入り口の開閉を行いエリア内に進入した。ヒノキは小高い丘全体に植林されていて、全てネットで囲われている。これらの進入防止ネットはかなり広いエリアに及んでいる。登山道は植林されたヒノキの合間を抜けるように敷設されているが、草などが生い茂りヘッドランプの灯りでは足元が確認出来ず、更に草は濡れ、歩面も滑り易い状況の中、小高い丘を登り切る。すると、南の奥にも出入り口があり、同じ手順で開閉しエリア外に出た。ここから先が以前からの登山道を行くことになる。
 暫く登りが続きベンチのある休憩所に3 時20 分到着。既に歩き始めから2 時間が経過していた。やっと半分登ったことになるが、更に登りが延々と続く。清八峠には4 時35 分到着。天空は満天の星空が綺麗で歓迎してくれているかのような気持ちになる。東の空は既に明るみを帯び夜明けの準備をしている。風は殆ど無いが、だいぶ冷え込んでいる感じがする。ここまで来ると山頂までもう一息である。
 山頂到着、4 時50 分。歩き始めから何と3 時間30 分掛かっている。休み休み登って来たため道中長かった感じがする。日の出時間は6 時16 分。それまで未だ1 時間半程ある。撮影準備をゆっくり始めることにする。富士山には未だ光りが入らず、黒い姿で堂々と佇んでいる。天空を窺うと雲一つ無い晴天で申し分ない最高の天気である。眼下を見下ろすと河口湖の湖面は霧が発生しているようで雲海のように見える。5 時半頃になると明るさが増し、周辺の山々がハッキリしてきた。富士山に続き南アルプス連峰、八ヶ岳連峰、更に金峰山を初めとした奧秩父の山々、大パノラマが展開されている。6 時の気温−2℃と冷え込みが強い。日の出時間6 時16 分、ほぼピタリの時間に一筋の光が差し込んできた。富士山頂の白い雪面が徐々に赤味を帯びてきた。今日の富士山は鮮明で神々しい。辛い想いを背負って登って来たが、疲れもすっ飛ぶ感動の一瞬である。他に誰もいない独り占めの富士山が目前に迫る。暗いうちから登ってきた甲斐があった。
  8 時20 分、下山開始。清八峠を通り笹子に向かう。登山口まで下りが続き腰への負担が多いが時間を掛けて下山し、車を置いた場所に到着したのは11 時。やはり時間を掛けても腰への負担は大きい。鹿による食害を防ぐため広範囲に進入防止ネットを張り巡らせ、対策を取っているが、林業にとっては深刻な問題だと認識させられる。他の山でも同じような対策が取られているが、ネットを張るだけでも大作業であり、当事者の負担は大きいと思われる。
 笹子から清八山や本社ヶ丸に入る登山者は少ないと思われ、今回も誰とも出会うことはなかった。富士山を独り占めできても高い山で、たった1 人は、寂しい想いは否めない。登山口に入山者のカウンターが設置されているが、清八山のカウントは100 となっていた。



今日の富士山

 雲一つ無い快晴となった今日、神聖な富士山に向き合うことが出来た。ピーカンの富士山は撮影が難しいと云われているが、変化に乏しいというのが理由のようである。まさに今日の富士山は映像としての表現はしいが、その姿は心の奥に宿るが如く美しい。

日の出直後の富士山             6;25頃    
上空には雲一つ無い晴天         6;45頃


清八山からのパノラマ(南アルプス連峰・八ヶ岳連峰)                               7:00頃

                              

山頂及び登山道

清八山山頂         8:20頃    
清八峠への登山道     8:30頃
清八峠付近から本社ヶ丸  8:35頃


清八峠           8:35頃  
枯 葉で一杯の下山道    8:35頃
中腹の休憩所        9:20頃


落葉松の紅葉       8:35頃  
南側の開閉口     9:50頃
小高い丘の上から展望   10:10頃


8年前に植えられたヒノキも

背丈以上に生長     8:35頃    
北側の開閉口       10:45頃
車を止めた林道の途中   10:55頃



使用カメラ: ・OLYMPUS  E-M1   ・CASIO EXILIM EX-ZR62      


   




10月3日 雁ヶ腹摺山

 現在、秀麗富岳十二景の写真撮影は自作カレンダー用の写真を優先して撮っている。来年のカレンダーの場合、前年に撮影したカレンダー月の富士山を採用する前提としている。更に十二景の山が重複しないことも条件である。来年用の写真は、カレンダー用写真は10月、11月、12月と残すところ3ヶ月分となった。今回は10月用の写真を撮るため雁ヶ腹摺山から撮影する予定を組んである。
 10月は紅葉の季節であるが、夏が暑すぎたためきれいな紅葉は見られないという話しもある。しかし、綺麗な芸術的写真よりもその年の季節が反映された写真であれば良いと考えている。即ち、写真は記録と捉えているためであり、だからこそ記録は新しいものでなければならないという考え方に沿ったものと言っても良い。
 今日の天気は午前中ほぼ晴れ、午後は天気が崩れる予報となっている。写真は基本的に日の出時間帯を狙っているが、思うような結果につながっていない。富士山が姿を見せなければ自然現象に従ったためで仕方が無いことであるが、それでも気象情報を精査し、確実に撮影できる日を選んでいる。 今日は午後から晴れ間がなくなり徐々に雨間になることが考えられ、午前中にも天候に何らかの影響が出る可能性がある。また、気温が最も下がり、素晴らしい情景に出会える可能性も残されている。
  大峠の駐車場に着いたのは午前2時45分。車は止められていない。撮影場所は山頂直下の大きな岩の上から狙う予定である。間違いなくその場所は確保できそうである。  
 3時10分大峠を出発。暗くて富士山の姿が出ているかどうか確認出来ない。気温はそれ程低くなく少し登っただけで汗ばんでくる。また、湿度が高めに感じるため汗が引く感じは無い。台風24号が去ったばかりで山中は相当荒れていると思われたが、小枝か散乱している程度で、登山道を塞ぐような倒木は殆ど見当たらない。途中の展望地で富士山の姿を確認するが暗くてよく分からない。  
 撮影場所の大きな岩の上に着いたのは4時55分。途中、大きな岩ノ下の奥まった道へどういう訳か入り込んでしまったらしい、間違ったことに気が付き戻ったため10分ほどのロスタイムが発生した。それにしても新月でも無いのになんと暗い夜なのだろうか。目を凝らしても富士山の姿は朧気である。やはり湿度が相当高そうで、濃い靄が発生している。これらが山全体を被っているため、光りが遮断され暗いと思われる。既に明るみを帯びて来ているが、天気はあまり良くない状況である。 今日の日の出時間は5時37分。東の空はここから確認出来ないが朝焼けを感じることはない。富士山の5合目ぐらいまで濃い靄が掛かり恰も雲海のように見える。残念ながら鮮明さはなく写真の写りは良くない。
 日の出時間になると富士山上空が赤味を帯びてきた。 大きな岩の上での撮影を終え、6時40分、山頂へ向かう。天候は回復傾向で、山頂にも時々光りが入るようになってきた。山頂の木々は紅葉が終わったのか、紅葉しなかったのか定かで無いが、富士山の前景となる既に枯れている木々が並んでいる。山頂からの富士山の眺めは素晴らしい。改めてそう思う。やはり十二景の中では山番号の通りである。
 山頂で撮影していると1人のカメラマンが登って来た。どこから来たか尋ねると、相模原からと返答があった。話しを聞いていると熊に対する恐怖を強く持っている人のようで、1万円以上する熊除けスプレーを持っていた。熊に遭遇したことはないようであるが、熊スプレーの噴射は実戦していないと云うことだった。そこで実戦に備え試しに噴射したそうです。この時、向かい風で噴射した霧が自分の方へ流れ、それを吸ってしまったそうです。その霧の中身は熊を気絶させる薬剤が入っているようで、本人曰く、呼吸困難に陥り死ぬかと思ったそうです。
 8時40分、山頂を後にする。下山時に3人グループの登山者と挨拶を交わした。登山口に戻ったのは9時50分だった。


今日の富士山

 今朝は6℃と気温が下がり水蒸気が上昇し濃い靄が発生している。このため富士山は不鮮明な姿で佇んでいる。山頂からも紅葉があるのか、枯れているような感じもある。

空に色が付いた日の出時間の富士山       5時37分    
上空の白い雲に僅かながら光りが入る    5:55頃

靄が徐々に抜け秋らしい青空に       6::00分 頃    
山頂から(靄が未だ棚引いている)       7:25頃



山頂と登山道の状況

 台風24号の影響は比較的少なかったように思われる。倒木は皆無ではないが登山道を塞いでいるものは殆ど確認できなかった。また、土砂崩れ等の被害も見受けられなかった。
  紅葉も早いのか既に終わっているのかも良く分からない状況であるが、そんな中で緑の木々が多く見られた。それを見ると紅葉は未だかとも思われる。

山頂                 8:20頃    
巨大な自然石          8:30頃
大きな岩の撮影場所      8:30頃


クサリの張られた急斜面   8:40頃      
途中の展望所から    8:40頃      
  不明(調査中)


道を塞いでいる倒木    8:55頃    
緑の樹木が多い      9:00頃  
大峠への案内標      9:10頃


倒木(登山道には影響なし) 9:15頃      
同左          9:15頃
トリカブト(ユキノシタ科)


沢を横断する木橋      8:20頃      
コアジサイ?(ユキノシタ科)季節外れ
紅葉しているが色が悪い

台風の影響で小枝が散乱   9:40頃  
登山口近くの水場      9:45頃
大峠の駐車場      9:50頃


大峠からの富士山             9:55頃




                                                                使用カメラ: ・OLYMPUS  E-M1   ・CASIO EXILIM EX-ZR62