2020年撮影紀行(その6)




12月4日  九鬼山

 九鬼山は今年2月に訪れ2回目である。山頂や富士見平は杉の木が成長し、撮影しづらいため、最近は山頂下の天狗岩から撮る事が多い。ところがこの場所も杉の枝が伸び過ぎて邪魔となり、これを避けようとすると大写しに成らざるを得ない。どこの山から写したか分からないような写真はカレンダーとしてはあまり好ましくないように思う。何れの場所も撮影に対する制限を受けるため、今回は山頂からの撮影状況を改めて確かめる目的で、天狗岩には寄らず直接山頂を訪れることにした。
  当日の天気は日本気象協会のピンポイント予報を参考にし、確実に撮影できる日を選んで12月4日(金)に決めた。しかし、予報に反し、季節の変わり目は晴れの予報が覆ることが多く、早朝に霧の発生が生じると、暫く視界がないことがある。早朝に霧が発生した場合、日の出時間を2〜3時間過ぎてから富士山が頭を出すことが多い。今回も12月4日の気象情報を精査したつもりだが早朝に霧が発生する可能性は考えられる。
  禾生側登山口近くの空き地に到着したのは午前2時30分。既に霧が漂い視界はあまり良くない。天空を望むと雲の切れ間から星空が見え隠れするが、全般に曇り空である。前回と同じように早朝から視界が無く富士山が出るまで待機せざるを得ないことも考えられる。今回も愛宕神社コースから山頂を目指すが、登山道は迷わないようしっかり整備されている。禾生側からは他に杉山新道コースもあるが、登山道は愛宕神社コースに比べ緩やかである。当コースの距離は比較的短いが全体的に急勾配である。特に山頂近くはロープが張られ更に急である。
  午前3時、登山口を出発。暫く枯葉が堆積した登山道を行くが、歩く度に枯葉を踏んだ音が付いて回る。この音もこの時期特有のもので初冬の風物詩と言っても良いかも知れない。それ程視界を遮るものではないが霧が漂っている。池の山コースの分岐点を4時に通過。暫くなだらかな登山道が続く。南東側(登山道の右手)には都留市の街灯りがキラキラ輝いて見える。暫くすると杉の植林された急斜面の登山道に差し掛かる。途中から新登山道と急坂登山道に分かれるが、登り易い新登山道を行くことにする。天狗岩への入口を通過し山頂には5時20分に到着。案の定、霧の発生で視界が無い。暫く待機するが視界が晴れる見通しが立たない。東に位置する大月方面には、地平線付近に、日の出を待っているオレンジ色の明かりが、細長く水平方向に光を放っている。回復する兆しと見られるが、視界が開き富士山が姿を現すまで待つことにする。日の出時間が近づくに従い、周辺の状況が分かるようになって来た。大きな雲海が発生していたが、富士山方面は黒い雲に覆われ富士山の姿は望むことが出来ない。この状況から富士山が姿を現すまでは大分時間が掛かると思われた。今回の目的である山頂からの撮影状況は富士山が出ないと確認は出来ない。確認したとしても、撮影できない状況では元も子もない。
  6時35分、視界の晴れるのを待たず、天狗岩に向かい下山開始。天狗岩には7時に到着したが、富士山の姿は無い。天候の回復は間もなくと思われるが、中々富士山の姿は見られない。7時50分、やっと富士山の一部が姿を現す。霧に塗れ、鮮明さに欠けるが、撮影出来る状況となった。時間と共に鮮明さは改善されある程度納得いく撮影が出来た。残念ながら今回山頂での撮影は叶わなかったが、次回に委ねることにする。9時50分、天狗岩を後に、車の止めてある登山口に向かい下山する。到着は11時25分。今日は歩き始めから右側腰に痛みがあり、それを庇うようにしたため右の太ももに負担が掛かり思うように歩くことが出来なかった。その結果、残念ながら登り下りとも予想以上に所要時間が掛かった。天候は曇り空だったが、雨が降るようなことは無かった。今日は寂しいかな、誰一人登山者と出会うことは無かった。



今日の富士山

 結局、今日も前回に引き続き天狗岩からの富士山となった。制約を受け定点固定したように大写しとなったが、来年12月のカレンダーに使おうと考えている。カレンダーの写真としては理想を外れるが、もう少し撮影回数が多ければ最適な撮影が出来た可能性はある。体調を考えると止むを得ない結果と思う。


天狗岩からの富士山                   9:00頃      
同  左                           9:30頃




山頂および登山道

 愛宕神社コースを往復したが、出発前から腰痛があり、今回ほど急坂が多かったことを意識したのは初めてだった。もちろん高齢化の要因もあるが、予測を遥かに超えた所要時間となった。特に山頂付近の急斜面は登り下り共に足腰への負担が大きかった。

 山頂から東の朝焼け  6:20頃  
山頂から雲海に発生を見る  6:20頃      
山頂の山名看板       6:20頃  


山梨百名山の標柱       6:25頃  
ロープが張られている急斜面  6:48頃  
天狗岩からの展望       9:50頃


天狗岩入口(天狗岩で富士山撮影)9;55頃  
新登山道と急坂登山道の合流点 10:10頃
なだらかな尾根道(都留市を展望)10:20頃


之平登コース分岐点   10:15頃    
枯れ葉の積った登山道   10:30頃
愛宕神社鳥居      11:20頃


車を止めた空き地     11:25頃




                                              使用カメラ:OLYMPUS E-M1   ・CASIO EX-ZR62






2月7日  岩殿山 丸山公園

 今日の天候は快晴でで、気温は今シーズン最低気温を記録するという前日からの天気予報だった。気温が下がれば空気は透明感を増しクリヤーな富士山を見ることが出来ると思われた。
 来年(2021年)のカレンダー作りを考えると、3か月先まで撮影する山の計画を立てておかなければならず、夏場を過ぎる頃には山の選択肢が徐々に狭まり、12月になると選ぶことが殆ど出来なくなる。
 今回は倉岳山から撮影することを以前から計画していた。日の出30分前までには無生野の登山口に到着する予定で自宅を出発した。上野原ICを降り秋山経由で無生野から登山口に向かって林道に入ったが、150m程進入すると、高さ2m程のバリケードがいきなり現れた。車を降り状況を確かめたが、扉には鍵が掛かり徒歩でも中に入ることが出来ない。暗くて状況がハッキリしないが、土砂崩れでもあったのだろうか、大々的な工事が行われているようである。
 秋山側から山頂へは他のルートもあるが、殆ど使ったことはなく迷う可能性が高いと考えられた。近くには九鬼山の登山口もあるが、日の出までに山頂到着は厳しいと思われた。そこで、岩殿山であれば時間的に余裕もあるし楽に登ることが出来ると判断された。そこで急遽岩殿山の登山口に車で向かうことにした。
 登山口近くの駐車場には午前3時に到着したが、駐車場には立て看板が置かれていた。その看板には山頂付近は落石が多く、山頂までは行けず、丸山公園までと案内されていた。北側からの登山口からは落石の危険は無いということで、山頂まで行けるという地図付きの説明が入口の所に下げられていた。そのルートは登ったことはなく、どのぐらい時間が掛かるかも分からず、結局、丸山公園から撮影することにした。
 丸山公園までは駐車場から徒歩15分程で行けるため、今度は時間を持て余した。車の中で待機したが、エンジンを掛けっぱなしで車の中に閉じこもっているのも環境問題を引き起こすため早々に丸山公園に向かった。
 丸山公園には午前5時ごろ到着。東の空が白み出してきているが、富士山の姿は暗くて確認できない。今日は予報通りかなり冷え込み、5時半の気温は−9℃に下がっていた。富士山の姿が確認できたのは6時頃になってからである。
 雪に覆われた富士山は空の色に同化し多少明るくなっても確認は出来なかった。 今日の日の出時間は6時37分(東京)。東に雲が漂い富士山に日が差すのが遅れ、紅富士は見ることは出来なかったが、7時頃になってやっと朝日が富士山頂に差し、真っ白い神聖な富士山を見ることが出来た。


今日の富士山


日の出目前の富士山                6:25頃  
東の雲が日の出を遮り紅富士が見られなかった    7:05頃


立派な松の木と富士山                 8:20頃    
筋雲が天空に変化を齎す              8:25頃



 今回は目的の倉岳山へ登ることが出来なかった。恐らく土砂崩れがあり、復旧工事に入っていたのだと思われる。倉岳山山頂に行くには、秋山側から今回目指した無生野の登山口以外にも他のルートがあり、以前に登ったことはあるが、暫くぶりで、暗い夜道では道に迷うのがオチである。近くの九鬼山も考えたが、年齢的なことも考慮し、無理は禁物と岩殿山に変更した。ところが、その先の岩殿山でも落石の危険性があり山頂に行くことが出来なかった。
 結局、今回は丸山公園で撮影することにしたが、今期、最低気温となった。空気が澄み渡り、神聖な富士山を見ることが出来たことは、運がよかったと思う。



                                                               使用カメラ:OLYMPUS E-M1





1月9日  百蔵山

 今年も2021年版「秀麗富岳十二景カレンダー」を継続して作成する予定である。来年1月のカレンダー写真として、百蔵山を選別し撮影に訪れることにした。確実に富士山を撮影できる日を決めるため気象情報を精査し1月9日撮影に挑んだ。
  3時15分、登山口を出発。暫く谷部を登るため強風は避けられているため寒さはそれ程感じない。中腹の富士山展望所までは登山道に石や岩の破片が多く、急斜面はないものの浮き石なども有り、ヘッドランプの灯りでは心持たない。
 午前3時、百蔵山登山口の駐車場に到着。気温は高めだが風が強く尾根に出たら強風だろうと思われる。天空は星空が伺えるが、鮮明さにやや欠ける。
 中腹の富士山展望所には4時に到着。暗くて富士山の姿はハッキリ確認できないが、見えないだけで恐らく姿は現していると思われる。
 山頂からの東西に伸びる尾根に出たのは4時20分。突然体が揺らされる強風を受ける。気温は高めであるが寒さを強く感じる。この地点は分岐点で西へ向かうと七保町葛野へ通じ、東に道を取ると百蔵山山頂である。山頂までは比較的緩斜面で石や岩の散乱は少なく歩き易いが、やはり尾根道は強風で風の音がうるさい位に聞こえる。登山道を振り返ると西に傾いた満月に近い十三夜の月が背中を押してくれている。
 山頂到着4時40分。相変わらず強風が吹き荒れている。富士山は黒いシルエットに覆われたような姿を現している。これで富士山の撮影は叶ったと確信した。眼下には街灯りが鮮明に映し出され、眩しささえ感じる。日の出時間まで2時間以上待ち時間が有り、ライブコンポジット機能を使い夜景を撮影することにした。東の空はオレンジ色に染まり始めているが朝焼け富士はどのような姿を見セルだろうか。
 日の出時間が刻々と迫り6時51分(1年中で最も遅い11日間の期間中)時間通り日の出の光りが富士山頂に入る。しかし、思ったように紅く焼けることはなかったが、神聖な富士山を撮ることが出来た。
 雲が発生する様子もなく、晴天が続き状況の変化は期待できず、7時45分山頂を後にすることにした。下山途中、富士山展望所から登山口寄りの中腹で中年夫婦の登山者と出会った。登山口到着は8時40分。強風は幾分治まった感じを受けるが、日差しは強く暖かい1日になりそうである。
 今回、富士山を撮影することは出来たが、天気が良すぎ雲一つない晴天(ピーカン)で変化に乏しい写真となった。取り敢えず富士山が写っているため来年のカレンダー候補にしておきたい。

秀麗富岳十二景写真コンテストに対する思い。
 白籏先生が11月30日に逝去されました。謹んでお悔やみ申し上げます。大月市の秀麗富岳十二景写真コンテストの審査員長を長く務められ、憧れの方だったという思いも強く、毎年コンテストに応募し先生の目に留まるよう作品作りをしてきました。これからは先生の目に触れることもなく、大変残念でなりません。心の支えにしていただけに、淋しい気持ちで一杯です。秀麗富岳十二景写真コンテストも当面中止となることと思いますが、新たに審査委員長を迎え、復活して欲しいと願っています。



今日の富士山

  雲一つない快晴となり撮影する立場としては難しい被写体であるが、新年から爽やかで神聖な富士山が見られたことは幸運である。

夜明け前の富士山               6:10頃  
日の出直前の神聖な富士山          6:30頃


前景の松や雑木に光りが入った瞬間     7:05 頃





山頂と登山道の状況

以下写真は、下山時に山頂から登山口まで順次撮影したもので、時間を追って並べてある。

頂の様子 7:45 頃  
東西に細長い山頂 7:45 頃
山頂からの尾根伝いは松が多い
7:55 頃


富士山展望所近くの案内標
7:45 頃
展望所からの富士山 8:10 頃
展望所にはベンチがあり
最高の眺め   8:10 頃


石や岩の破片が多い登山道
8:20 頃
登山口近くの水場
8:35 頃


登山者のカウンター設置場所
8:35 頃
登山口の駐車場(他に車はない)
8:45 頃



                              使用カメラ:OLYMPUS E-M1   ・CASIO EX-ZR62