2020年撮影紀行(その5)




11月12日  ハマイバ

「2021年版 秀麗富岳十二景カレンダー」用の写真撮影も大詰めを迎え、残り11月分と12月分となった。残念なことに今年7月は天候に恵まれず、富士山は殆んど姿を見せてくれなかった.このため撮影チャンスを逸することになった。カレンダーの月に撮影できなかったことはカレンダー作りの趣旨に反することになるが、他の年に撮影した写真を代用せざるを得ない状況である。カレンダーに環境の変化をリアルに表現できればという目的から、これに対応するため前年に撮影した最も新しい富士山の写真を採用することを前提にカレンダー作りに取り組んでいる。
 撮影場所が重複しないよう、今回は初冬を迎えたハマイバを訪れることにした。1か月程すると焼山沢林道も冬季閉鎖に入り、アプローチが長くなって登山時間も半端でなくなる。冬季閉鎖になる前に気象状況を精査し、間違いなく撮影できる日を選んだ。
 現在、焼山沢林道は修復工事中で暫く閉鎖が続いていることから、車で湯ノ沢峠に直接入ることが出来ない。このため日川ダム経由で日川林道から焼山沢林道の閉鎖された交差部まで車で行き、そこから湯ノ沢峠まで規制された林道約2qを歩くことにした。
 林道交差部には車で午前2時30分に到着。閉鎖された日川林道のゲート手前に駐車し、2時45分、ハマイバに向かい出発する。今日は今年1番の最低気温になると予報されていたが、風はなくそれ程寒さは感じない。東の空には細く鋭い形をした新月を間もなく迎えようとしている月齢26日の細長い月が姿を見せている。夜空を明るく照らす月ではないが、何か大事なメッセージが込められた月のように見える。  湯ノ沢峠には3時25分に到着。出発から40分。この間の林道を歩くのは初めてである。車で通ると未舗装の悪路というイメージがあったが、歩くとそれほど感じない。現在は豪雨が齎した路面上の大きな溝は修復されていて、普通乗用車でも問題なく走行できそうな状態になっている。
  湯ノ沢お花畑を通過する際、西方向に甲府盆地の灯りが鮮明に映し出されている。時々雲海で埋まっていることがあるが、現在、雲海は発生していない。大蔵高丸には4時15分に到着。暗いため富士山は黒いシルエット姿で存在を示している。恐らく甲府盆地の上方には南アルプスの峰々が見えていると思われるが、暗くて確認できない。
 ハマイバ山頂を通過し少し下った視界の開けた撮影場所に5時00分到着。日の出時間(東京6時14分)まで1時間以上ある。富士山は暗い中、黒い姿を見せている。遠くの谷には所々霧の発生が見られる。気温はマイナス5℃、風は殆ど無く、氷点下だがそれ程寒さは感じない。明るくなるまでバルブ撮影を試みるが、遠くの霧が徐々に発達し目の前の視界が一気に閉じた。暫く待機するが視界が開く様子が伺えない。いつ回復するのか分からない状況を、霧に閉ざされた中で待つのは辛いものがある。下山しようかと何度も思ったが、もう少しの辛抱だと自分に言い聞かせ、じっと耐えた。その結果、8時10分に視界が開いた。閉じたのが6時00分だったことから2時間以上視界の無い霧の中に1人で居たことになる。
 視界が開いた一瞬、富士山は雲海上に聳え立っていた。この光景は感動的としか言いようがない。視界が開く前に下山していたら、このような感動を得ることが出来なかった。暫く撮影に集中したが、間もなくすると富士山に雲が掛かり、撮影が出来なくなった。富士山を撮影できた時間はたった40分間。待機時間を考えると余りにも40分は短時間に思える。
 ハマイバでは雹が降り天気は悪くなる傾向である。雲が掛かった富士山はやがて姿が見えなくなる可能性が高い。間も無く撮影は潮時を迎えることになり、9時15分湯ノ沢峠へ向かい下山を始める。
 大蔵高丸を9時55分に通過。富士山には厚い雲が掛かり、天候の悪化が予測される。湯ノ沢峠を10時50分に通過、車を止めてある日川林道の交差部には11時25分に到着。
  今回の撮影状況は前回の雁ガ腹摺山に天候パターンが似ていた感じである。取敢えず富士山が撮影出来てホッとしているが、前回10月の雁が腹摺山からの富士山と今回11月の富士山の写真は雲海上という共通点があり、カレンダーの写真として同じような写真が続くのは好ましいとは言えない。
 今日は山頂で2人の単独登山者と下山途中で1人の若い登山者と出会った。




今日の富士山

 今回も10月の雁ガ腹摺山と同じ天候パターンとなり残念ながら同じような雲海上の富士山が11月も続くことになる。雲海上は霧が浮遊していて富士山の鮮明さが損なわれ、ぼやけた写真になりがちである。今回も御多分に漏れずとなるが、それを少しでも解消するため、画像ソフトにより調整している。

ハマイバ山頂を下った視界の開けた場所から撮影  8:20頃  
左と同場所からアップで撮影          8:25頃

        雲海で埋め尽くされ、下方の木々には霧氷が見られる                        右下の木々に霧氷が見られる


上の撮影場所から富士山方向に下った場所から撮影   8:35頃  
左上の写真と同場所から撮影            8:45頃

                            富士山に雲が掛かり始めた





山頂および登山道の状況

 多少紅葉が見られると思ったが、木々の葉は全て落葉し真冬の装いとなっていた。今年の夏は猛暑が続き植物への影響は大きく、山に咲く花も少なかった。今年は今までになく環境の変化が大きかったような気がする。

撮影場所から下山を始めた時の 富士山は
雲に隠れていた          9:15頃      
ハマイバ山頂     9:20頃
一時雹が降った     9:20頃


ハマイバお花畑南側の扉      9:30頃    
北側の扉             9:30頃
大蔵高丸からの富士山     9:50頃


大蔵高丸山頂          9:55頃    
大蔵高丸でも雹が降った   10:00頃
倒木が登山道を跨いでいる  10:10頃


枯葉が積もっている登山道   10:10頃    
湯ノ沢峠への案内標        10:25頃
湯ノ沢お花畑の西側扉     10:30頃


草枯れの湯ノ沢お花畑      10:30頃    
お花畑からの白谷丸       10:35頃
お花畑からの大蔵高丸    10:35頃


お花畑北側の扉          10:40頃    
湯ノ沢峠(右側はカウンター)   10:45頃
湯ノ沢峠避難小屋        10:45頃


湯ノ沢峠駐車場         10:45頃    
舗装されていない林道    11:05頃
路面が部分的に修復されている 11:15頃


日川林道との交差部        11:20頃  
日川林道の終点に置いた車  11:20頃



                                              使用カメラ:OLYMPUS E-M1   ・CASIO EX-ZR62






10月27日  雁ガ腹摺山

 今回は2021年版の自作カレンダー用写真を撮影するため、紅葉を求め雁ガ腹摺山を訪れることにした。1か月ぶりの登山となり腰痛もやや気になるが、腰への負担を減らすため時間を掛け山頂を目指す心算である。
  撮影日を決めるに当たり、気象予報を精査し天候の良い日を選んだ結果、10月27日(火)が最も安定した天気状況があり、この日に山を訪れることにした。秋に相応しく抜けるような青空、紅葉と富士山が撮影できれば、自作カレンダー2021年10月の写真として採用するつもりである。
 午前2時45分、大峠の駐車場に到着。風はなく天空は満天の星空。予報通り快晴の天気。駐車場には既に1台の車が止められていた。紅葉撮影で多くの人が訪れると思われたが意外と少ない。撮影場所取りの心配は無くホットした気持ちである。1台止められた車の中に人の気配はなく、星撮りの撮影者だろうか?だとすると白谷丸に登り既に撮影しているかも知れない。
 3時10分、雁ガ腹摺山を目指し出発。今回の撮影場所は、日の出時間帯に山頂直下の巨大岩の上から行う予定である。その後、山頂に場所を移動し、紅葉と富士山を撮影することにしている。
 巨大岩の撮影場所に4時50分到着。先客は誰も居なかったため、岩の上は自分1人の占有となった。天空は満天の星空だったが、富士山の姿は何処にもない。暗くてはっきりしないが雲に隠れているようである。天空は晴れているため、日の出時間帯には姿を現すと考えられた。気温2℃、湿度60%、湿度がやや高いが、標高の低い麓の方でガスが発生し始めている。時間の経過とともにガスが発達し前面を覆い、やがて視界が閉じた。思いも依らずガスの発生は意外な展開である。
 暫く視界が閉じた状態は続いたが、日の出時間(東京5時58分)になるとガスが1部開き富士山が姿を現した。しかし、ガスの充満で鮮明な富士山の姿を望むことは出来ない。富士山が姿を現していた時間は僅か20分間で、間も無く視界が閉じた。写真にならないと思われる富士山を取敢えず30カット程撮影した。
 日の出時間少し前に1人の若い撮影者が一緒に撮らせてくれと現れた。岩の上は狭く2人がやっと撮影できる状態で、その人は岩の上には上らず岩の脇に三脚を立て撮影準備を始めた。富士山が姿を現すと、私とほぼ同じペースで撮影に勤しんでいた。どちらからお越しですかと尋ねると、愛知県から車で夜どうし掛けてやって来たと話す。晴れるのを待ち暫く一緒に待機していたが、7時半頃には、お先にと言って下山して行った。
 その後、山頂に移動し視界が晴れるのを待ったが、状況に変化はなく、8時50分下山を始めた。大峠の駐車場には10時半ごろ戻ったが、富士山は未だ姿を現していなかった。駐車場には自分の車を含め3台止められていた。
 紅葉は、山頂付近では殆ど見られなかった。カエデやモミジの根元の落ち葉を観察すると色は付かず枯れているものが多い。この様子を鑑みると山頂付近は紅葉した状況は無かったと云える。一方、下山途中の中腹から大峠に掛けては紅葉が進み見ごろを迎えていた。
 今日は撮影場所で1人の撮影者、下山途中で男性2人と女性1人の登山者グループ、駐車場で男性2人組の登山者と出会った。




今日の富士山

 今日の撮影は巨大岩の上から20分程の短時間の中で、同じような画像しか撮影できなかった。撮影画像はガスが充満し極めて不鮮明なものだったが、画像処理し、ある程度見られる画像に調整してある。

上空が僅かに焼けた日の出時間帯の富士山    6:00頃  
富士山と雲海に朝日がやっと当たり始めた   6:10頃





山頂と登山道の状況

  山頂の紅葉は殆ど見ることは出来なかったが、中腹から大峠に掛けては綺麗な紅葉が見られた。

以下、山頂から登山口まで下山時に撮影したもので時間を追って並べてある

山頂のカエデの幹もとには紅葉せずに
枯れ落ちた葉が多く、紅葉しなかった事を
物語っている。  
500円札のモデルとなった写真の説明書き
山頂を示す山名看板    8:45頃


山頂直下の下山道          8:50頃    
山頂直下の紅葉したカエデ    8:55頃
山頂直下の巨大な自然岩     8:55頃

 

巨大岩の撮影場所         8:55頃      
見事に色付いたカエデ      9:05頃
車を止めクサリが設けられている急斜面
9:15頃


枯葉で一杯の登山道       9:25頃    
カエデの紅葉            9:50頃
谷を跨ぐ長い木道橋          9:50頃


水場                  10:20頃    
大峠駐車場             10:25頃
富士山の姿はない大峠     9:50頃


                                              使用カメラ:OLYMPUS E-M1   ・CASIO EX-ZR62