2015年 撮影紀行(その14)



11月27日 牛奥ノ雁ヶ腹摺山

 ここの所寒い日が続きやっと冬らしくなってきた。テレビの天気予報では関東北部の山には積雪があったと報道されている。今回は霧氷と富士山を狙い大月でも北に位置する牛奥ノ雁ヶ腹摺山を訪れることにした。事前に林道状況を峡東林務事務所へ問い合わせたところ、多少雪はあるものの林道閉鎖はしないという情報が得られた。
 日川林道に接する西尾根登山口に午前2時40分に到着。途中、道路の積雪は確認出来なかった。ここ登山口でも山に雪があるような状況は見られない。今日は十六夜月、満月同様で周辺を明るく照らしている。この明るさではヘッドランプ無しでも山に登れそうである。
 今日は冬型の気圧配置となり風が強く、木々のざわついた音が聞こえてくる。気温は−3℃であるが、体感温度はかなり低く感じる。3時10分、登山口を出発。中腹辺りから積雪がある可能性もあり荷は増えるがアイゼンを持参することにした。登り初めの木製階段約150段を登りきると取りあえず一息付ける。振り返ると甲府盆地の街灯りが夜空に浮かび幻想的に見える。このような光景は夜間登山でないと味わうことが出来ない。登山道やその周辺は月明かりに照らされ、淋しさや不安は解消される。暗い夜に天から授かる光明は登山者の強い味方になってくれる。
 中腹を越えた辺りから、月明かりに照らされた白く光るものがちらほら見え始める。昨日降った雪と思われるが、積もったという程のものではなく所々に見られる状況である。雪面はザラ付いていて滑るようなことは無い。
 暫くすると山頂へ向かう稜線に出る。視界が広がり富士山の姿も月明かりではっきり確認出来る。山頂には雲がまとわり付いているように見られるが、他に雲はない。稜線のピークを4時30分に通過。一度下り、鞍部から登りに入ると間もなく山頂である。
 山頂到着4時50分。雲もなく霧氷もないピーカン状態であるが、富士山は相変わらず鮮明な姿を見せている。強風と湿度不足で期待した雲海発生も霧氷もなかったのは残念である。牛奥山頂の雪もまばらで、富士山の副題としては役に立つことはなさそうである。ピーカンをどのような構図で撮ろうかと、そんなことを考えながら撮影準備に入る。
 今日の日の出は6時28分(東京)。東の空が大分明るくなってきた。山頂に到着したときの気温は−6℃であったが、日の出時間になると温度計は−11℃を示していた。日の出が近づくにつれ富士山頂に朝の光が少ずつ届きクライマックスを迎えたが、残念なことに朝焼けは殆どなかった。強風も相変わらずで1年ぶりにこの寒さを味わうことになった。
 富士山は相変わらず端麗な姿を見せているが、雲もなく変化に乏しい状況にもはや撮影意欲が失せ、8時10分下山を始める。入れ替わりに湯ノ沢方面から若い登山者が1人山頂にやって来た。また、下山途中、利用者の少ない西尾根コースでは珍しいことに1人の登山者と出会った。
 登山口近くの木製階段途中で北西方向に目を向けると雪を被った奥秩父の山々が連なっていた。その姿は全く冬山の装いであった。9時15分、登山口に到着。


今日の富士山

 富士山頂の雪は範囲を増したが少しむらがあり美しさにやや欠ける(写真は日の出時間帯に撮影)

強風で富士山頂は雪が舞っている様子が窺える  6:30頃  


前面の斜面に朝日が入り茶色に焼ける         6:35頃








山頂と登山道の状況

山頂から中腹ぐらいまで所々に雪は有るが雪面はザラ付いて滑ることは無い

牛奥ノ雁ヶ腹摺山山頂          8:10
頃    

山頂近くの登山道     8:15頃

立ち枯れ(鞍部)    8:20頃    

稜線ピークに向かう登山道    8:25




西尾根ピーク点からの展望(大菩薩
湖)      8:30頃  

同左場所からの富士山          8:
30頃          

西尾根ピーク付近の細尾根登山道
8:30頃  

 細尾根を下った所の巨大岩 8:40頃




登山口に向かう登山道        8:45
頃  

木製階段上部からの展望     9:10


100段以上ある木製階段       9:15







雪を被った奥秩父の山々(木製階段途中から)    9:20頃



                              使用カメラ ・OLYMPUS E-M1  ・FINEPIX  F1000EXR 





11月16日 雁ヶ腹摺山

 11月中旬にも関わらず暖かい日が続き、今年も暖冬の気配を感じる。天候不順により富士山が姿を現す機会も減少している。この現象は温暖化の影響によるものと思われる。特に今年はエルニーニョ現象で異常気温、多降雨により富士山撮影のチャンスも少なくなっている。
 暫く雨が続いたが、当日は晴の予報が示されている。雨の直後には普段見られない情景に出会えることもあるが、今回は雁ヶ腹摺山を訪れ、晩秋の富士山にスポットを当て撮影することにした。
 午前2時50分、大峠の駐車場に到着。未だ他の車は止められていない。天空は満天の星空。暗いながらも黒くシルエット状の富士山の姿が確認出来る。雲海が出ている様子は未だ暗く伺うことが出来ないが、その可能性は十分あると思われる。
 準備が整い3時10分に大峠を出発。この時点で未だ車は1台も到着していない。目的の撮影場所の確保はできそうである。撮影場所は山頂直下の奥まった所にあり、広く深い視界が得られるため、晩秋を撮るには格好の場所と云える。今日は風もなく気温は高めで歩いていると汗が滴り落ちる。とても11月中旬の気候とは思えない。季節外れの気温に富士山はどのような姿を見せるのだろうか。
 撮影場所には4時10分に到着。勿論、誰もいない。狭いスペースで所々岩が露出し、斜面となっていて足場は悪い。この状況から三脚4本立てるのが限界のようである。富士山は堂々とした薄黒い姿を見せているが周辺には雲一つなく、快晴状態であるが、ピーカンの撮影は変化に乏しく撮影者は嫌う傾向にある。気温は12℃とこの時期にしては思いの外高く、時間が経過すると雲が現れる可能性は十分考えられる。
 気温の割には天空の抜けは良く、綺麗な星空と富士山を撮ろうとバルブ撮影の準備を始める。すると遠くから熊除けの鈴の音が微かに聞こえてくる。この時間、カメラマン以外は考えられないが、この場所を目指しているのであれば、バルブ撮影の途中で到着する可能性があり、撮影を一時控えることにした。この撮影場所は山頂近くで登山道から外れ、笹藪を掻き分け入ってこなければならない場所である。案の定、笹を掻き分ける音が近づき、ヘッドランプを灯したカメラマンが5時にやって来た。誰も来ないと思い狭いスペースを大分陣取っていたため、移動する羽目になった。そのカメラマンは足場が悪いことから準備に時間を要し、自分の左隣に三脚を並べた。これによりバルブ撮影のチャンスは逸してしまい、日の出を待つことにした。
 大分明るくなったことから周辺の状況が分かるようになってきた。富士山頂の雪は雨が降って溶けたのだろうか、初冠雪の時に比べかなり少なくなっている。富士山に絡む雲は周辺に全くなく、ピーカン状態である。甲府盆地には雲海が発生しているが、東に流れても富士山に絡むことはなさそうである。
 日ノ出時間は6時17分(東京)、東に雲があり遅れて山頂に朝日は入ったが朝焼けは殆どない。山頂の雪も少なく、11月中旬とは思えない富士山である。
 7時20分、隣のカメラマンと一緒に山頂に向かう。山頂には登山者が1人、富士山を眺めていた。暫く山頂で富士山を眺めながら過ごしていたが、その間、登山者が3人訪れ山頂はにわかに賑やかになった。その中の若い登山者は十二景の20山を踏破中で、姥子山が最終だと云って向かって行った。
 8時40分下山を始める。一緒だったカメラマンは自分より先に下山を始めた。途中の大きな岩に差し掛かる頃、富士山上空に筋雲が現れ、その岩の上から再度撮影を始める。西側にあったその筋雲は徐々に東側に移動し、タイミングを見計らってシャッターを切る。
 今回はピーカン状態で変化に乏しい単調な写真になったが、富士山の姿がなければ写真にもならない。大峠には11時に到着。この頃には富士山に雲が掛かりだした。今日は天候に恵まれ、多くの登山者に出会った。



今日の富士山


 11月中旬にしては山頂の雪も少なく、1ヶ月前の富士山である。撮影日を示しても信用して貰えそうもない。今年は紅葉も思ったような彩はない。暖冬と云われているが冬がどうなるのか心配である。晩秋のイメージで撮影したが、やはり富士山の雪が少なすぎる。


山頂直下の奥まった場所から(日の出直後)  6:25頃



同左(直下の谷に朝日が入る)   6:30頃














山頂直下の大きな岩の上から         (筋雲
現る)   9:30頃



同左 (浮き雲現る)             9:50頃















山頂と登山道の状況

  今シーズンは6月から猛暑が続き十二景の山では夏に咲く山野の花も数が少なく、毎年咲いている花が観られなかった。秋になってもその影響を引きずり、気温は下がらず紅葉も不作となった。今年は登山道に堆積した落ち葉が多いような気がする。

       

山頂より 500円札に描かれた説明書
きと富士山  8:00頃  

山名板と山頂の様子  8:30頃
姥子山への分岐点  8:35頃  

山頂直下の登山道    8:40頃




大きな岩の上から    10:15頃
沢を渡る木道橋  10:40頃    
御硯水と書かれた水場    10:55頃
大峠の駐車場       11:00頃





                                       使用カメラ ・OLYMPUS E-M1  ・FINEPIX  F1000EXR



11月3日 笹子雁ヶ腹摺山

 笹子雁ヶ腹摺山には、ここ10年間に15回程訪れているが、他の十二景の山に比べ最も回数が少ない。また、大月市の写真コンテストにおいても応募者が少なく、カメラマンには不人気の山のようである。その要因は「労多くして功少なし」というのがカメラマン達の本音のような気がする。鉄塔が乱立し美しい富士山の画面に入り込み、更に前景の山々はその山稜の凹凸が少なく、その上部に聳える美しい富士山を表現するのが難しい。また、積雪期の登山は体力的に厳しく撮影のために訪れる人は殆ど居ないというのが現状である。いつしか雲海や美しい雲が現れることに希望を託し足繁く通っている今の自分がある。
 今回も雲海や形の良い雲が現れることを願って笹子雁ヶ腹摺山を訪れることにした。前日は雨で大地に水分は蓄えられ、当日は未明から晴の予報が示されていることから雲海発生の可能は十分あると考えられた。
 午前2時50分、笹子峠の登山口に到着する。自宅を1時00に出発した時は予報に反し小雨が売っていた。この雨は大月市に入ると止んでいたが、車道は未だ濡れていた。 登山口辺りは霧が発生し視界が悪いが、霧の合間から時折星が見え隠れしているため、間もなく天空は抜けてくると思われる。
 登山口を3時20分に出発。笹子雁ヶ腹摺山は登り初めと山頂直下に急斜面があり、所要時間は比較的短いが、十二景の山では最もハードな山登りである。気温はやや高め、霧と汗で眼鏡がくもり、外して歩いた方が良く見える。登山口から2番目の鉄塔を4時30分に通過。暫くすると山頂直下の急斜面に差し掛かる。登っていて今までになく荷物の重さを感じる。今年3月に痛めた腰の影響と思われるが急斜面では力が入らず登るペースは極端落ちる。
 山頂到着は5時丁度。やや強めの風が吹いている。天空は満天の星空。富士山の姿もハッキリ確認出来、抜けは良い。西側の甲府盆地は雲海で満たされ、東側(大月側)でも小規模な雲海が見られるが、笹子の正面には雲海はない。東西から雲海は押し寄せてくるが、笹子の谷はトンネル上部の山に遮られ雲海はそれを登り切るエネルギーはなさそうである。
 山頂から周辺を見渡すと、東側の谷(桂川、秋山川、道志川)には小規模ながら雲海が発生し、扇山、百蔵山、岩殿山、倉岳山、高畑山、各々雲海上の富士山が既に見えていると思われる。また、西側の甲府盆地は大規模な雲海が発生し(所々に垂直に立ち上がる雲も見られる)、雁ヶ腹摺山、小金沢山、牛奥ノ雁ヶ腹摺山、大蔵丸、ハマイバ、滝子山でも雲海上に聳える富士山が立ち上がっていると思われる。
 山頂からの撮影は小木が邪魔となり富士山に入り込む。このため少し南に下った電波塔付近が撮影場所として良いが、ここしかないというポイントである。斜面で足場が悪く上下左右とも樹木などで視界が狭められていて大変撮影しづらい場所である。
 富士山山頂は昨日の降雪で6合目ぐらいまで白くなっている。東には黒っぽい雲が棚引き、日の出を遮っている。日の出時間(東京6時04分)を過ぎても山頂には光は差さず、暗い表情の富士山の姿がある。6時半頃になってやっと光が差したが、時間既に遅く赤みは殆ど付かなかった。
 今日は残念ながら、雲も殆どなく平凡な富士山となった。8時45分山頂を後に下山を始める。山頂には3人の登山者グループが休憩をしていた。また途中で1人の若い登山者と出会った。登山口に戻ったのは10時10分だった。


今日の富士山


 地形的に雲海の発生しにくい山のため雲海に出会うことはなかった。周辺が余程大雲海で満たされればおこぼれ頂戴の可能性はあるが、今日は残念ながら単調な富士山となった。晩秋の程良い雪の富士山が見られた。

日の出時間を大分過ぎてから光が差した 6:30頃





斜面を這った雲が現れた          8:10頃









山頂からの景観


甲府盆地の大規模な雲海(山頂に着いたときは既に発生していた)                   6:45頃


 


大月方面の雲海(山頂を南に下った通信塔より) 7;10頃

 

 7;10頃大月方面(東側)の雲海は小規模ながら広範囲に及び、
桂川、秋山川、道志川各々の谷沿いに発生していたと見られる




山頂及び登山道の状況


以下写真は時間を追って並べてある。

葉は枯れているが健気に咲く野菊  
 7:55頃    

山頂の様子       8:45頃
枯葉の堆積している登山道   8:55

紅葉と富士山(第2鉄塔付近)9:10
頃    




 登山口より2番目の鉄塔    9:10

 尾根道と新道の分岐点      9:15

 尾根道と新道の合流点      9:40
頃    

  青空に映える紅葉         9:40
頃  




  甲斐大和への分岐点       9:
50頃

   笹子峠の分岐点          
10:00頃    

  登山口の駐車場          10:10
頃  

旧道の笹子隧道    10;15頃





                                           使用カメラ:OLYMPUS E-M1   FINEPIX  F1000EXR