2017年 撮影紀行(その6)




9月13日 倉岳山

 足腰の状態が未だ不完全なことも有り、最近山登りは月1回の少ないペースとなっている。早く元のペースに戻したいところであるが、年齢のせいもあり、回復に時間が掛かっている。今回は37日ぶりの撮影となるが、倉岳山から狙うことにした。
 倉岳山も高畑山と並んで富岳十二景の山の中では撮影者が少ないやや不人気な山である。原因は富士山撮影に支障する樹木が前面にはだかり、意図した表現が難しいことにあると推測される。樹木は年々生長し恒久的な管理が必要なため、管理者としても富岳十二景の20山ある全ての管理は中々難しいと思われる。
 倉岳山に登るコースは大月側からと秋山側から入るコースがあり、今回も最も短時間で行ける秋山無生野の登山口から入山することにした。このコースは穴路峠を経て山頂に到達するが、利用者が少なく登山道は荒れている箇所が多い。
 午前2時30分無生野の登山口に到着。今日は日が変わる頃から晴の予報が出されていたが、星空を窺うことはできない。気温は高めで湿度も高く、霧ではなく靄に被われている感じである。昨日雨が降り雲海が期待できる状況もあるが、昨日の降水量は少なく気温が高いことを考えると雲海発生は難しそうである。
 2時45分登山口を出発。このコースは暫く穴路沢を行くが、初めの登りは大きな岩がゴロゴロした水量のある沢の中を歩く。昨日の雨で水嵩が増えているようで深いところは膝ぐらいの深さがある。沢沿いの登山道は杉林に囲まれ、杉の枯れ枝が散乱していて場所によっては覆い被さり登山道を判別するのが難しい。特に暗い中での歩行はしづらい。水のある沢を離れると谷間に設けられた登山道となるが、杉の枯れ枝は散乱もなく、沢沿いに比べ大分歩き易い。谷間の登山道を登り切ると穴路峠である。3時30分到着。出発から45分の所要時間である。穴路峠は風の通りが良く一息付けるところであるが、今日は風もなく残念ながら?いた汗の涼を得ることが出来ない。この峠は西に高畑山、北に猿橋小篠、北東に倉岳山へと登山道が分岐している場所でもある。これより山頂へは尾根道を登り、急な登りを3箇所越えると間もなく山頂である。
 山頂到着は4時15分。登山口から1時間30分の所要時間となった。体調を踏まえて予定した時間より少し早く到着した。山頂は濃い靄に包まれ街の灯りは輝いているものの、近隣の山は全く見えない状況で視界が悪い。予報は晴であるが時間の経過と共に好天していく様子が何となく窺える。日の出時間は5時22分(東京)それまでに富士山が姿を見せてくれると朝焼け富士が見られる可能性がある。とにかく撮影準備をしておいた方が良さそうである。
 5時を過ぎてからようやく富士山の裾が見えだし徐々に全体が姿を現した。雲は多いものの富士山を隠す雲は今の所なさそうである。日の出時間が近づくと富士山の正面が朝日を浴び色付き始めた。クライマックスは、日の出時間を15分ほど過ぎてからであったが、赤味はやや薄いものの、赤富士が現れた。
 時間の経過と共に、時々山頂を隠す雲が現れるようになった。間もなく全体雲に被われると思われたため、撮影を切り上げることにした。7時45分、山頂を後に下山を始める。
 以前、山頂で登山者と出会うことが多かったが、今回は誰とも出会うことはなかった。



今日の富士山

 雲の多い状況であったが、日の出時間帯に赤富士が見られた。7時半頃には富士山に雲が掛かり間もなく山頂は雲の中に姿を隠した。

日の出時間を過ぎ赤味はピークを迎えた     5:40頃  
天空の雲も焼けた              5:40頃


空の色が青く落ち着いてきた  6:35頃      
雲が徐々に多くなり間もなく富士山は雲の中へ  7:10頃



山頂及び登山道の様子

 山頂は比較的広くベンチが置かれている。北側を望むと大月市内が俯瞰できる。直近の山では岩殿山、百蔵山、扇山が展望出来るが、北の方の山は雲に被われ山容が確認出来ず山名が特定できなかった。
 今年はどういう訳か秋に咲く花が見られない。登ってくるときヘッドランプの灯りが白い花を捉えたが、良く見るとシモバシラだった。下山時に撮影しようと咲いている場所を確認したが、どうも見落としたようである。登る時はほぼ目の高さで捉えていたが、下山時は足元付近で見ることになり大分景色が異なる。登って来たときのイメージが残り、咲いている場所を見落としたと思われる。目印を付けておけば見落とさず済んだと反省頻り。他に花は咲いていないかと思い下山時に注意して見ていたが、花を目にすることはなかった。
 登山口から穴路峠までは登山道の傾斜は比較的緩やかで危険箇所も確認出来ない。穴路峠から山頂までは傾斜のきついところが3箇所あり、山頂の尾根に取り付く箇所が最も急坂で、ロープが張られ安全対策が施されていた。
               以下写真は下山時に撮影したもので時間順に配置してある

山頂           7:45頃    
山頂からの下山道    7:45頃
山頂伝いの尾根から穴路峠への
分岐点            7:50頃


急斜面にはロープが張られている
7:50頃    
無生野登山口への案内標  
8:00頃
穴路峠へ向かう明るい尾根道
8:10頃


穴路峠(倉岳山・高畑山分岐点)
8:20頃  
穴路峠からの下山道      8:20頃
水量の多い穴路沢     8:55頃


岩がゴロゴロした穴路沢    9:00頃  
秋山無生野登山口         9:10頃



                              使用カメラ(デジタル): ・OLYMPUS  E-M1   ・CASIO  EX-ZR62





8月7日 高川山

 台風が接近する中、当日の天候は晴れ間のある予報となっていた。8月は夏の風物詩と云っても良い富士山の登山道には明かり灯り夜空を飾ってくれる。9年前、8月の満月の夜に素晴らしい情景に出会い、その情景を追い求め、毎年同時期に高川山を訪れているが、それ以降出会えたことがない。
 今回もまた満月日(今回は小望月)に夏の風物詩たる情景に出会えることを願い撮影に出掛けることにした。
  6日(月)21時30分初狩側の登山口に到着。天空を仰ぐと煌々と小望月が夜空を明るく照らしている。気温は20℃であるがかなり蒸し暑い感じである。天気は良さそうで素晴らしい情景が期待できそうである。
 今回は未だ腰の状態が完全でなく、毎回男坂を登っていたが、傾斜の緩い沢コース(別名:玉子石コース)を往復することにした。今日は月明かりで、ヘッドランプが不要なくらい周辺を明るくし、安心感を与えてくれる。月の明かりは登山者の強い味方である。    
 22時登山口を出発。暫く林道を歩くが所々舗装されている箇所がある。悪路も多く普通乗用車での通行は厳しそうである。出来れば終点まで車で入りたかったが、最近の林道情報が無いため車の進入は避け歩くことにした。
 林道は沢沿い沿って敷設され、上流にある砂防ダムが終点である。これから先は登山道となり、途中から女坂コースに合流し以降、女坂コースを行くことになる。沢コースは文字通り沢の中腹を歩くことになるが、滑り易く1部沢底まで深いところが有り滑落したら、命取りになる可能性はある。最近このような危険箇所にロープが張られ、危険回避が図られている。登山者としては有り難いことである。
 沢を離れるとつづら折りの登山道となるが比較的歩き易い。間もなく女坂コースに合流しなければならないが、なかなかその場所に行き着かない。道を誤ったようである。女坂合流点までは1本道と思っていたが、別のルートがあったようだ。結局、女坂合流点は通過せず、山頂に0時20分に到着。
 出発してから2時間20分と、ゆっくりペースと道を誤ったことにより驚くべき所要時間となった。小望月(満月の前日)は煌々と天空の高い位置から下界を照らし、富士山を始め周辺の山々をハッキリ確認させてくれる。富士山の中腹に雲が掛かり、山頂の1部の明かりは見えているが、湿度が90%以上と高く抜けが悪い。台風の影響か時折強い風が吹くが、ベットリとした風で涼しさはない。撮影準備にはランプは不要な位明るく、山頂にただ1人であるが、寂しさや不安は感じない。
 2時を少し過ぎた頃から富士山周辺は抜けが良くなってきた。9年前の再現である。この情景は夜間登山によって得られるもので、多くの方々に味わって欲しいと思う。特にこの高川山からの8月の夜景はここでしか得られない絶景である。
 小望月は三ツ峠山頂に3時半頃沈むが、この瞬間は素晴らしい。雲に彩が付き滅多に見られない光景である。月が沈むといきなり暗夜となり、不安が頭を過ぎるが、30分もすると夜明けが近く天空が明るみを帯びてくる。
 日の出時間は4時53分(東京)、今朝は東の空には雲は少なく、時間通り太陽が昇った。感動の一瞬である。富士山上空も朝焼け富士山頂も色づいた。
 今日は久しぶりに素晴らしい情景に出会うことが出来た。夜景を十分カメラに収めた。この紀行の写真はデジタルの画像であるが、同時にフィルムでも撮っているのでその現像の出来上がりが楽しみである。特に夜景はデジタルとは色が異なりどちらか自然色かは別として圧倒的にフィルムが綺麗である。フィルムの色はデジタルでは作ることが出来ない。似た色にすることは可能であるが色の奥行きが出ない。
 8時山頂を後に下山を始める。沢コースを下り登山口に戻ったのは10時だった。駐車場に止められていた車は1台もなかった。



今日の富士山

 月の逆光線に輝く雲は普段あまり見ることの出来ない光景である。もう少し条件が整えば更に珍しい情景が見られると思われる。
 特に夜景は長時間露光するため、実際目で見られない情景が写り新鮮な感覚で見ることが出来る。

小望月は三ツ峠山頂に沈もうとしている                              3:45頃


月の逆光に照らされる彩雲          2:35頃    
夏富士の朝焼け            5:00頃




山頂及び登山道の様子

 沢コースは何回か下ったことはあるが、登るのは始めてである。下りで大体の様子は把握していたが、道を誤った地点はおよそ推測できる。現在の沢コースは比較的新しいコースで以前からあるコースは鍵掛峠に向かう登山道だったと思われたが、この峠を通過しなかったよう気がしたので、昭文社の地図には記載されていない別の登山道に入った可能性はある。道はかなり荒れていたため利用者は少ないコースと考えられる。
 今年はどういう訳か他の山も含め、花が少ないような気がする。唯一山頂に群生していたママコナは(ゴマノハグサ科)半寄生植物で珍しい生殖機能を持つ花である。


  ハナチサン(ユキノシタ科)    
ママコナ(ゴマノハグサ科)
山頂の様子         8:00頃


女坂コースの崩落場     8:25頃    
沢コースへの分岐点    8:55頃
林道終点(左手に砂防ダムあり)
9:20頃


コース名となっている玉子石
9:40頃  
アキノタムラソウ(シソ科)
9:45頃
フシグロセンノウ(ナデシコ科)
9:50頃


ヤマアジサイ(ユキノシタ科)
9:50頃    
男坂・女坂コース登山口  
9:55頃
登山口駐車場(他の車は無い)
9:55頃




                                使用カメラ(デジタル):・OLYMPUS E-M1    ・EXILIM EX-ZR62





7月31日 奈良倉山

 腰を痛め暫く山登りが出来ない状況だったが、治療を受けているカイロプラクティック(骨盤矯正))の先生から荷物を背負っての山登りに許可が下りた。腰の状態は未だ不完全だが、多少痛みがあっても無理しない範囲で使った方が良いと治療に対する考えを常々述べていたこともあり、早速、撮影機材を背負って奈良倉山を訪れることにした。腰への負担を減らすため機材を絞り、余計なものは持たず、1食分の食料を含め、重量は合計12.5kg(カメラ他10kg+三脚2.5kg)となった。三脚はザックに付けず肩に掛けることにした。
  当日の天気は1日曇りの予報。降水確率を見ても午前中は10〜20%と雨は降らないと見られるが、富士山が姿を現すかが問題である。前日は降雨も有り雲海の発生確率は高いが、富士山の姿がなければ写真にならない。今まで撮影には前日訪れて車中泊するか或いは自宅を夜中に出発し、日の出を山頂で迎えるパターンが殆どであったが、今回、日の出は期待できず、出発前にライブカメラで富士山の姿があるか確認してから出発することにした。この時期は富士山の山道に明かりが灯り、暗くてもある程度判断出来る。
 早朝4時にパソコンを開き姿があることを確認。4時20分自宅を出発。 松姫峠には青梅街道経由で午前6時05分に到着。小菅村に入ると途中ガスが発生していて、その切れ間から太陽の光が差し、天候の回復が窺われた。峠の駐車場に到着したとき天空は青空が広がり、葛野川沿い及びその周辺の谷は雲海で埋め尽くされていた。その雲海上に富士山の姿が浮かび、久々に対面したその姿に感動を隠すことが出来ない。
 6時20分松姫峠を出発する。早く撮影ポイントに到着しないと視界が閉じてしまうのではないかと気持ちが逸るばかり。しかし、身体が付いていかないのは歯がゆい思いである。今回は林道の視界の広がる場所で撮影し、その後、山頂へ移動し引き続き撮影する予定である。
  林道はガスに被われ、時折その合間から太陽の光線が斜めに差し込み、素晴らしい光景を見せてくれている。暫くするとガスは立ち去り、天空は青空に変わった。これで富士山は暫く安定して見ることが出来ると思われた。林道は時折、猟の人達の車が通る。雨上がりでその車が作った轍には雨水が溜まり、歩き辛い状況がある。
 撮影場所には6時50分に到着。雲海、富士山共に健在である。早速、撮影準備に取りかかり、撮影を始める。林道の撮影場所は山頂に比べ視界が広がり、雲海と富士山を撮影するには絶好の撮影ポイントである。今日は空気に含まれる水蒸気が多く、全般に鮮明さが不足し、クリヤーな画像を得ることは難しそうである。もう1時間早く到着していれば、鮮明な画像を得ることが出来たと思われる。
 7時50分、撮影場所を山頂に移動する。林道から山頂へ登るコースは近くに2箇所あり、短時間で行ける南側の入口から登ることにした。山頂到着8時10分。気温が上がり、富士山に掛かる雲が多くなってきた。同時に鮮明さを失い抜けが悪くなってきた。時間的に撮影時間を逸した気がする。
 山頂では数枚撮影の後、8時50分、山頂を後に下山。南西に向かうコースから林道に降り松姫峠に向かう。松姫峠の駐車場には9時30分に到着。峠はガスに被われ視界はあまり良くない。朝到着した時、見られた富士山はガスに被われ今は見られない。
 今日は登山者とも出会うことはなかった。林道の撮影地点に向かう途中、猟師?3人乗った車に出会うが、猟期は一般に11月〜2月の3ヶ月間とされている。山奥にイノシシの罠でも仕掛けてあるのだろうか。



今日の富士山


林道西側からのパノラマ展望(周辺の谷は雲海で埋まっている)     7:15頃



林道からの富士山(雲海と青空に筋雲)     6:55頃  
山頂からの富士山(山頂に掛かる雲が多くなってきた
8:20頃




山頂及び山道の状況

 以下写真は松姫峠到着時から戻るまで時間を追って配置してある。

松姫峠からの富士山(到着時)
6:20頃  
林道歩行中(木漏れ日溢れる)
6:25頃
林道から山頂に向かう入口
6:45頃


林道の撮影地点       7:55頃  
林道に多く見られる水溜まり
8:00頃  
林道から山頂に向かう南側入口
8:00頃


山頂に向かう登山道      8:00頃  
山頂直下の富士山展望所  8:50頃
山頂の様子         8:50頃


山頂から林道への案内標  
8:55頃  
山頂から林道への取り付き点
9:00頃
松姫峠へ向かう林道     9:30頃


松姫峠の駐車場(他に車はない)
9:35頃  
大月側への通行は出来ない
9:35頃
松姫峠から(富士山は雲に隠れ
見えない)  9:50頃



                                使用カメラ(デジタル):・OLYMPUS E-M1    ・EXILIM EX-ZR62