2014年 撮影紀行(NO.9)



10月7日 御前山

 台風一過、文字通り以前は秋の紺碧の空を見られたが、ここ数年はこのような空が見られなくなったように思われる。5年ほど前から台風が去った後、大月の山に必ずと言って良いほど富士山を狙い山頂に立ったが、この間、富士山の姿を見られることが殆どなかった。
 最近、天候不順を否定出来ないが、気候変動は温暖化が原因と云われている。温暖化の原因は自然の要素と人為的なものがあり、その度合いは定かではないが、温暖化には宇宙規模で次元の異なる要素も含まれ人為的にコントロールすることで影響を少なくすることは焼け石に水と言ったことかも知れない。現在、既に氷河期に入っているという説もあり温暖化どころでない話しである。現在の温暖化現象が氷河期への引き金にならないことを祈るのみである。
 何れにしても台風一過は過去の出来事となるのだろうか?そう言いつつも、7日の天気予報は晴のち曇り。ピーカンより雲がある方が絵になる。そんな情景を思い浮かべながら御前山を訪れることにした。
 御前山は10番の九鬼山の代わりとして秀麗富岳十二景の中に暫定的に組み入られている。御前山は前面が大きく開け、寄せて富士山を撮るより、標準〜広角系で前衛の山並みをしっかりレイアウトして撮影すると、御前山からの富士山の魅力を最大限に引き出すことが出来ると思われる。
 山頂からの日ノ出時間は5時40分頃で一時よりだいぶ遅くなり、山頂に立つ時間も楽になってき
た。車中泊は別として、自宅を出発する時間も夏場に比べ1〜1.5時間ほど遅くて済み、その分、睡
眠時間も多少なりとも延長できて気分的に楽である。今回、自宅を2時に出発したが、天空を見ると雲空。西空の雲の切れ間から小望月(こもちづき)が明るい光を放ち、時折見え隠れする。tenki.jpの予報では日が変わる頃から晴となっていたが、暫く車を走らせているうちにフロントガラスに雨が落ちるようになってきた。予報は外れたのだろうか?現地に着いてみないと何とも云えないが、上野原に入ると雨は止んでいた。路面は濡れているが、相変わらずの曇り空である。
 午前3時45分、厄王山4合目の鳥居のある登山口に到着した。雲の切れ間は多少窺えるが星を見ることはできない。山頂に着く頃には天気が回復して欲しいと願いを込める。
 4時、登山口を出発。風はなく、薄い長袖シャツではやや寒い感じであるが、暫く登ると汗が滲み出てきた。気温は低いが湿度が高い感じを受ける。7合目の鳥居を過ぎた辺りからつづら折りの登山道が始まり急坂が続く。この斜面の登山道は火山砕石物のような粗めの地質が堆積していて、水分を含まなくとも、ザレ場のように滑りやすい状態にある。荷が重いとズルズルと斜面下方に足が持って行かれるため、ヘッドランプの灯りだけでは慎重にならざるを得ない。暫く登ると尾根に出る。ここからは緩やかな斜面となるが、途中岩場(昭文社の高原地図には危険箇所と書かれている)の中腹を通るが、ロープが張られているものの踏み外したら谷に転落である。ヘッドランプで足場をしっかり確認しながら難所を通過する。厄王山10合目を通過すると間もなく山頂である。
 山頂には5時20到着。慎重を期したためオーバイタイムは否めない。既に明るさを増し、周辺の山は良く確認できるが、富士山の姿は厚い雲に覆われ見ることができない。今日は雲に切れ間は多少あるものの全体に曇り空で天気予報は外れた感がある。直感的にいくら待っても富士山は姿を現すことはないと思われた。北風がやや強く、気温13℃。風は冷たく日差しもないため防寒服を重ね着ぎする。直ぐに下山しようと思ったが万が一と言うこともあり、少し留まることにした。
 9時まで待機したが思った通り状況は変わらず、下山することにした。花の写真を撮りながら登山口には10時20分到着。今日は登山者と出会うことはなかった。
 台風一過は見事に覆されたが、最近のこの状況をしっかり認識し、今後の撮影計画に結びつけていきたい。


山の状況と花の開花状況


 現在咲いている花は、秋を代表するキク科の花が多い。登山口に咲いていたコウヤボウキは珍しい花である。アキノキリンソウ、シロヨメナは他の山でも多く見られる。
 御前山は標高が低いため、紅葉は未だ少なく、夏の面影を残している。台風の影響は殆ど感じられない。大きな木の倒木はなく、大小の枝が登山道の所々に散乱している状況である。


以下写真は時間を追って並べてある。


の出直後の東の空(雲が多く朝日を
遮っている) 5:55頃  

富士山の見える方向(厚い雲に覆わ
れ姿はない) 8:20頃

コウヤボウキ(キク科)     山頂
に咲く              

コウヤボウキのつぼみ





御前山山頂          9:05頃  


アキノタムラソウ(シソ科)

山頂直下の急斜面の       登
山道          9:15頃  

 

コシオガマ(ハマウツボ科)




厄王山10合目             
(祠がある)     9:40頃


アキノキリンソウ(キク科)


シロヨメナ(キク科)            


     同左





檜林を行く登山道(ザレ場のようにズ
ルズル滑りやすい    



7合目の鳥居          9:55頃



イワニンジン(セリ科)            


登山道を横断している倒木       
 10:15頃




4合目の鳥居(登山口)          10:20
頃    

ツルソバ(ダテ科) 登山口   付近
に咲く

ツリフネソウ(ツリフネソウ科) 登山口
付近に咲く      

ユウガギク(キク科) 登山口付近に咲





                                       使用カメラ:OLYMPUS E-M1   FINEPIX  F1000EXR






10月17日 雁ヶ腹摺山


台風19号が去り安定した天気に恵まれるような状況になってきた。そして、16日には富士山に初冠雪が見られ、いよいよ本格的な富士山撮影の到来である。早速、紅葉を求め雁ヶ腹摺山を訪れることにした。
大峠の駐車場には午前3時20分に到着。林道途中で赤い車に追い越しされたが、以前、雁ヶ腹摺山でお会いした神奈川県のカメラマンである。既に赤い車も含め、6台の車が駐車されていた。大峠は強風で木々の葉が揺らされ大きな音を立てている。気温は6℃とやや高めの感じであるが、天空には満天の星空が広がっている。抜けが良く星は瞬きを見せている。ここの所、数回山に登ったが、天気が安定せず富士山を望むことが出来なかった。今日は間違いなくカメラに収めることが出来ると確信した。
 3時40分に大峠を出発。隣の車の人も同時に出発した。歩く速度も違うと思い先に行って貰うことにした。相変わらず風は強いが、長袖のシャツにチョッキ姿でも寒さは感じず少し歩いただけでも汗ばんでくる。途中、沢を渡る長い木道橋は補修され歩板面の板が新しくなっていた。それも、進行方向に長い木材でなく、直角方向に幅30cm位の滑りにくい木材で並べられていた。設置に手間の掛かる作業だったと思われたが、この方が雨などで歩面が濡れている時に滑らなくて安全である。登山者に取って安全性が確保されるのは有り難いことである。
 途中、視界の開けた展望所からは黒い姿の富士山が確認できるが、風は強いのに靄が掛かった感じで鮮明さに欠けているように見える。今日は多くの人が入っているようで山頂下の大きな岩の上での撮影場所の確保(赤い車の人はいつもこの場所で撮影していることが多い)は難しいかも知れない。そこで、大きな岩を少し下った所の奥まった場所を確保することにした。
 4時40分に撮影場所に到着。ラッキーなことにまだ誰にも確保されていない。この場所は大きな岩を登った上に狭いテラスがあるが、3人がやっと撮影できるスペースである。
 この場所からは富士山に向かい、手前下方から湯ノ沢の谷、その上方に滝子山、更に三ツ峠と視線が上昇し、聳え立つ富士山の頂点へと誘導される。更に、落差が大きく奥行きのある立体感に富んだ景観が得られる絶好の撮影場所である。ここからの撮影は手前に紅葉する樹林を配し、更なる奥行きが最大限表現できる構図とした。靄の発生で抜けの悪かった富士山を遠くに配することによって、その効果は一層得られると確信しシャッターを切った。
 撮影を続けていると1人のカメラマンが、隣で撮らせてくれと岩を登ってきた。更に、暫くして隣の人の仲間と思われる女性カメラマンがやって来たが、私含めて3人になると殆ど身動きすら取れずスペースの確保が難しかったため私の居た場所を空け、そこに入って貰うことにした。
  撮影場所を山頂に移そうと8時にこの場を後にした。山頂に着いた時は誰の姿も見当たらず、既に撮影を終えて下山したと思われた。先程まで強かった風もだいぶ治まってきた。
 最近まで山頂から左右の大きな樹木が富士山方向の視界を狭めていたが、その樹木も伐採され視界は大きく広がった。我々カメラマンに取っては表現の幅が広がり有り難いことである。いつも登山道の安全性に関する管理や富士山の景観などに配慮いただいている自治体の方々にお礼を申し上げたい。
  山頂からは富士山の右側にレイアウトできるモミジやカエデが見事に紅葉し富士山の撮影に力が入る。未だ全般に紅葉は早いような感じであるが、山頂正面のダケカンバは殆ど葉を落としているため早いとも云えない。暫くすると登山者が1人登ってきた。私の方は撮影を殆ど済ませ、そろそろ下山しようと思っていたところであったが、その人との世間話に花が咲いた。その間に1人の登山者がやって来た。
  下山を始めたのは11時10分。だいぶ山頂に長居をしてしまったようである。登山道の状況を撮りながら大峠の駐車場に着いたのは12時10分。自分の車も含め6台の車が止められていた。駐車場の南側の木が伐採され富士山が眺められるようになった。山頂に登れない人達にも雁ヶ腹摺山からの日本一の富士山が展望できるようになったことは大変素晴らしいことである。
 また、大峠に近い林道橋の何橋かが補修され車の走行が良くなったことも有り難いことである。



今日の富士山


 富士山の抜けは余り良くなかったものの、綺麗な紅葉に助けられたように、初冠雪の秋らしい富士山が撮れたように思われる。


                            
                   山頂近くの奥ま
った場所より 6:59頃





                                     
                              山頂より  
            8:25頃

 
 
 
 
 
 
 

 








                  山頂および登山道の状況

 現在、花は殆どなく沢を渡る木橋の所にヤマトリカブトが数輪咲いていただけである。そして、この木橋は床面が補修され歩き易くなった。部分的な補修で取りあえず済んだかも知れないが、安全性や快適性を重視して全面的に補修されたことは、管理者の登山者に対する思い遣る気持ちを感じる。

  登山道から見られる紅葉は現在最盛期を迎えているようである。  山頂および登山道の状況 

山頂の様子       8:10頃  
山頂直下の姥子山への分岐11:10頃
山頂近くの登山道   11:15頃
造形したような自然大岩石(山頂近
く)




ロープが張られた山頂近くの急斜
面    

落ち葉の積もった登山道  11:30頃
補修された木橋     11:50頃
見事なカエデの紅葉





水場の水量は豊富          

御硯水と書かれた水場    12:00頃
大峠の駐車場     12:10頃
大峠からの富士山     (木が伐
採された)



                                                        山頂に登れない人達に取っては嬉しい


           行程:大峠(3:40発)⇒ 撮影場所A(4:40〜8:10)⇒ 撮影場所B(8:15〜11:15)⇒ 大峠(12:10着)

                                                              場所Aは山頂下の奥まった所・Bは山頂

                                                  使用カメラ:OLYMPUS E-M1   FINEPIX  F1000EXR