2019年撮影紀行(その3)





9月10日 清八山

 清八山は昨年11月に訪れて以来である。今回も2020年の秀麗富岳十二景カレンダー作成のため、9月用の写真を清八山から撮影することにした。 今年の夏は猛暑日が続き9月に入ってもその暑さは止まらず、体調にも影響している。体力を考えれば三ツ峠側から入れば、距離も短く暑い中、体力の消耗も押さえられるが、笹子側からは距離は長く体力勝負となる。気持ちとしては三ツ峠側から楽に登りたいが、笹子側からであれば、登山道は十分把握し慣れていることから安心感があり、今回も笹子側から入山することにした。  
 今回は台風明けで大地には十分水分が補給され、気温が下がれば雲海発生の可能性が十分あり、素晴らしい情景に出会えることに期待した。 登山口は林道終点にあるが、最近は林道が荒れ、車で終点まで乗り入れるのは難しく、変電所の先の橋を渡った所に車を置き、そこから登山口まで歩くことにしている。
 登山口から清八山山頂まで以前は2時間で登っていたが、現在の体力では3時間見込まないと途中でギブアップの可能性が高く、行程には十分余裕を持たせることにした。
 車を置いてある場所を午前2時に出発。風は殆どなく満天の星空。空気は澄んでいる感じがする。気温は17℃と心地良さはあるが、少し歩くと汗ばんでくる。林道を暫く登るが車が走行できそうもない大きな石がゴロゴロした箇所、大雨で抉れた大きな溝、車が走行出来る舗装された箇所など、現在は様々な状態の林道となっている。また、沢を横断する箇所では水量が多く登山靴がスッポリ潜るくらいの水位があり台風の影響であることが窺える。一方、台風による強風の影響は殆どなく、小枝や葉が散らばっている程度で、被害は殆どなかった様子が見られる。  
 カウンターの設置してある登山道入口に着いたのは2時25分。ここから植林された小高い丘を登るが、動物による食害を防ぐためのネットが広範囲に張られている。バリア内に入るためネットの張られたポールを1本外して中に進入しポールを元に戻す。小高い丘には植林されたヒノキが高さ1.5m〜2mに生長し、そのヒノキの合間を潜り抜けるよう登山道が敷設されているが、ヒノキの根本や脇には雑草が生い茂り、ヘッドランプが足元に届かない。1歩足を出すにも靴底で登山道と確認しながら登ることになり、想像以上に時間が掛かる。暫く登るとバリア内からの出口があり、入ったときと同じ要領でバリア外に出る。ここからが以前からの登山道が始まり、午前3時10分、山頂目指し出発する。  
 登山道は徐々に急になり、気温は低い方だが汗の放出は半端でなく体力の消耗を感じる。暫く登りを続けるとベンチの置いてある休憩所に到着。ここまで来ると通常は沢音が聞こえなくなるが、台風の影響で沢の水量が多く割と間近に聞こえてくる。少し休憩を取り、4時登山再開。 これからが正念場。
 つづら折れの登山道が暫く続き、呼吸を整えゆっくり登る。清八峠には5時15分到着。今日の日の出時間は5時19分。山頂までは残り10分。日の出時間を僅かに過ぎる。途中、道を外し15分程のロスタイムを負った。これがなければ日の出時間に間に合っていた。
 5時25分山頂到着。強風ではないがガスが渦巻き視界は殆どない。勿論、富士山を見ることは出来ない。暫くすると天空に時々青空が見え隠れを始める。時間の問題で富士山は姿を現すと思われた。取り敢えず何時でも撮影できるよう準備を始める。5分程すると富士山の山頂の僅かな部分が見え始めた。暫くこの状態は1時間半程続き、全容を現したのは7時10分頃になってからである。8時頃になると富士山は雲の中に隠れ、周辺の雲が全体を覆い始めた。撮影機材を片付け準備が整い、下山を始めたのは8時30分。
 下山は膝や腰への負担が大きく、登る時間と同じぐらいの時間を掛け、中腹の休憩所で一呼吸。植林された小高い丘を下るのに足元が悪く赤土の部分は滑り易く何度か尻餅を付いた。膝や腰の疲労で踏ん張りが利かなくなっていたからと思う。
 この小高い丘の下の方で高齢者の夫婦と出会った。清八山へ登るそうだが、短時間で登れるようなことを口にしていた。最低でも2時間は掛かると伝えたらビックリしていた。初めてなのだろうか?、簡単に考えていたようである。
 車を置いてある場所に着いたのは10時55分。日差しは強く真夏に戻ったようだ。




今日の富士山

 台風明けの日であったが台風一過とはならず、雲が多く大気は不安定な状況だった。山頂に到着したとき富士山の姿はなく、撮影を諦めようと思っていたが、暫く待機した結果、姿を現してくれたのはラッキーだった。河口湖の水面は写真でブラインドーになっているが、水面上に雲が現れ面白い場面も見られた。
 また、写真にあるように山頂の右側の松の木が枯れ始めている。観察すると最期を迎えているように見える。今日は雲が多く大気は不安定で富士山が姿を見せてくれた時間帯は5時半頃から8時頃まで2時間半と短時間だったが、カレンダーに使えそうな写真は撮れたのではないかと思う。

最初に頭を覗かせた富士山(この状態が1時間30分程続いた)  

           5:35頃                        
棚引く雲は有るがほぼ全容を現した(河口湖上の雲が面白い)
  7:10頃


左上に有る松の木は幹から枯れ始めている  
    7:20頃                          
左の松は健全だが、右の松は最期を迎えているように見える    7:35頃  
















山頂及び登山道の状況

 小高い丘に植林された食害エリア内の登山道はこの時期、足元が分からない位の雑草が生え、特に暗い時間帯は大変歩きにくい。また、下山時には滑り易いので注意が必要である。エリアを抜けると以前から有る登山道となる。山頂の松の木1本が幹から枯れ始めていて、よく観察すると最期が近づいていると思われる。

山頂の山名板        8:30頃  
松の木のある山頂南側
8:30頃  
山頂の北側        8:30頃

清八峠の案内標       8:40頃  
同 左           8:40頃  
清八峠からの下山道     8:45頃


清八峠近くに咲いていたトリカブト
8:50頃
台風の強風で飛び散った葉
9:05頃  
ベンチの置いてある中腹休憩所
9:30頃


終点に近い登山道     9:55頃  
食害防止エリアの出入り口
10:00頃  
小高い丘の頂点からの景色
10:00頃


エリア内の登山道は雑草に
被われている  10:15頃      
案内標         10:35頃
笹子側の出入り口     10:40頃


車を置いた場所(橋を渡った所)      10:55頃




                                         使用カメラ: OLYMPUS  E-M1      CASIO  EX-ZR62







8月17日 牛奥ノ雁ヶ腹摺山

 牛奥ノ雁ヶ腹摺山は十二景の中では景観が素晴らしく私のお気に入りの山である。大月市でも最北に位置し、立ち入る人の少ない静かな山である。石丸峠を起点に小金沢山、牛奥ノ雁ヶ腹摺山、黒岳と標高2000m級の山が連なる尾根を小金沢連嶺と呼び、大月市の屋根とも云われている。先日の山の日に因み日本一長い山名としてテレビで紹介された。これを期に登山者が増えてくれれば良いと思う。
 この時期に過去何度か当山を訪れているが、山頂直下の南斜面にはマルバダケブキの黄色い花が咲き景観に彩りが添えられている。鹿も食べないと云われているマルバダケブキであるが、南アルプスの山で鹿が食べているのを目撃したという人がいるそうである。毒性があるのだろうか。食糧不足でやむなく食べているのかも知れない。今回はマルバダケブキと富士山を撮影するため、牛奥ノ雁ヶ腹摺山を訪れることにした。今回も同様、山頂へは牛奥ノ雁ヶ腹摺山西側尾根ルートを登る予定。
 牛奥ノ雁ヶ腹摺山の西側尾根登山道は以前から存在していたが利用する人は殆どいなく、廃道同然となっていた。私が始めてこの登山道を利用したのは2009年3月であるが、殆ど未整備で山頂に近づくにつれ登山道を見失うことが多かった。というよりも登山道として未整備だったと云っても良い。昼間であれば勘が働き登山道らしきものは確認出来たと思われるが、夜間の霧の発生は視界が殆どなくは盲目状態で勘も働かない。訪れる度に赤色や白色のテープを木に巻き道標とした。これにより迷うことが少なくなったが完全ではなかった。その後、甲州市の方で整備の手が入り、登山道として明確化されたが、それでも夜間では不明確な箇所が数カ所あり、夜でも確認出来る道標の設置が望まれる。
 日川林道に面した登山口の駐車場に着いたのは午前2時30分。やや風があり天空は晴れているが霧が発生していて視界が悪い。気温は低めで肌寒い感じである。登山口周辺の樹木は数年前に伐採され、新たに苗木が植林されているが、動物による食害を防ぐため広範囲にネットが張り巡らされている。山頂に向かうにはそのエリアに入り、退出しなければならない。
 2時50分、登山口を出発。間もなくするとネットに突き当たる。ネットが張られているポールはヒモで括られ、これを解きポールを1本外してエリア内に入る。暫く登るとエリアの出口があり入口同様ポールを外して退出する。霧の発生で視界は悪くヘッドランプが霧に反射し少し先が確認出来ない。中腹を越えると登山道が不明瞭となり、登山道かどうか足の裏で判断するしかない。取り敢えず難所は越えたと思われたが、気が付いてみると足の裏の感覚がどうも登山道とは違う。間違えたと思われる地点まで下り登山道に取り付くが、このような箇所に3度程遭遇し30分のロスタイムを負った。
 やっとパノラマ岩と云われる自然大岩石のある場所に着いた。既に4時半を過ぎ、周辺は明るくなりつつあった。ここからは細尾根を歩くため道を間違うことはない。尾根のピークを5時に通過。山頂には遅くとも日の出時間の5時には到着したいと思っていたが、30分の遅れである。これより山頂までは30分程見込まなければならない。
 山頂到着5時25分。霧はやや薄くなったが富士山の姿は見当たらない。天空は晴れているようで時々青空を覗かせる。5時半の気温は14℃、湿度65%、風速約2m/sec。体感は肌寒く防寒着を着込む。暫く待機すれば富士山は姿を現すと思われたが、突然霧は晴れ夏富士が姿を現した。素晴らしい光景に出会い、感動の一瞬を迎えた。
 霧が充満し、クリアーな視界は得られないが、雲海も出て北方の山らしい光景を見ることが出来た。何度か霧に包まれ視界がなくなったりしたが、6時を過ぎると視界は少しずつ安定してきた。
 南側の斜面にはマルバダケブキの黄色い花が咲き、盛りをやや過ぎているものの辺りを華やかに飾っている。目的としていた富士山とマルバダケブキの撮影は叶った。
 7時35分山頂を後にした。山頂を下った途中のサグ部で枯木と富士山を撮影。その後、下山を再開し日川林道の登山口に10時到着。今回は土曜日と云うこともあり若い男性登山者と山頂で出会った。その人は日川林道の登山口から50分で登って来たと云っていた。トレイルランをしている人のようだ。滅多に無いことであるが下山時にも登山者2人の男性と出会った。何れも若い人達だった。



今日の富士山  

 台風一過にしては霧が発生し、目まぐるしい天候となったが、それが幸いして素晴らしい情景に出会う事が出来た。目的としていた富士山とマルバタケブキの撮影が今回叶ったことは幸いだった。

視界が開いた瞬間               5:30頃 
雲海の上に佇む               6:50頃


マルバダケブキと富士山         7:10頃    
枯木と富士山                8:10頃











登山道と花の開花状況

 山頂直下の斜面には、やや盛りを過ぎたマルバダケブキ(キク科)が咲き景観に彩りを添えていた。山頂及び登山道際には花は見られなかったが、登山口付近にはホタルブクロやオダマキ、オトギリソウが見られた。  登山道は以前に比べ整備はだいぶ進んでいるが、途中分かりにくいところが数カ所ある。ヘッドラン
に反射するテープなど機会があるごとに枝に巻き付け、夜用の道標にして行けたらと思う。

山頂の様子         7:35頃
山頂から日川林道へ下る案内標
7:50頃  
パノラマ岩(巨大な自然石)
8:35頃


パノラマ岩を下った先の登山道
8:35頃  
パノラマ岩の下部から   8:40頃
 所々にある案内標      8:40頃  


枝が散乱し不明瞭な登山道
8:50頃    
岩が露出した急斜面が多い
9:05頃
急斜面に設置された木製階段
9:05頃


ネットが張られ動物の侵入を
     防いでいる。   9:35頃    
ヤマホタルブクロ
(キキョウ科)
キバナヤマオダマキ
(キンポウゲ科)


オトギリソウ(オトギリソウ科)  
ヒヨドリバナ(キク科)
日川林道に面した西尾根登山口
10:00頃


林道際の駐車スペース      10:00頃



                                使用カメラ: OLYMPUS  E-M      CASIO  EX-ZR62






7月29日 高川山

 梅雨明けが遅れ、すっきりしない天気が続いている。ライブカメラを覗いても富士山は殆ど雲の中。やっと梅雨明けかと思われた当日は晴の予報が出されていた、雨上がりで雲海発生の可能性が高く、久々に高川山から富士山を狙うことにした。高川山は昨年8月に訪れて以来、ほぼ1年ぶりとなるが、この日は早朝から蒸し暑く、沢コースから登ったが、途中で登山道を外し、四苦八苦したことが思い起こされる。今回は二の足は踏むまいと登山回数の多い男坂コースを登り沢コースを下山することにした。
 初狩側の登山口駐車場に着いたのは午前2時。霧が駐車場を被っている。時折雨が混じる天気で、風はなくかなり蒸し暑い。早朝からこの天候では日の出時間に富士山は姿を現さない可能性がある。腰の状態が未だ不完全で、登りに時間が掛かり、余裕を持って出発時間を決めようと、かなり早めに登山口駐車場に到着した。男坂コースの登りはきついが、他のコースに比べ距離は短く最も短時間で山頂を踏むことが出来る。
 今日の日の出時間は4時46分(東京)。登山時間に余裕を持たせ2時20分出発。 霧で見通しは悪いが、何度も登っているコースなので道を外すことはないと思われた。しかし、女坂コースとの分岐点を通過し男坂コースに入り暫くすると、靴底から伝わる路面の感覚が柔らかく感じる。確かに現在、斜面の中腹を歩いていること自体が変だ。本来ならば急斜面を登っていなければならずない筈だが、やっと登山道を外したことに気が付いた。獣道に入り込んだようで暫く時間が経つ。どれだけ戻れば良いか不明であり、時間が読めない。地形的にある程度頭に入っているため、直登すれば登山道に接続できると思い、道なき斜面を登り始めた。
 雨は上がり、霧も晴れ視界は良くなったが、ヘッドランプが頼りである。急斜面は水分を多く含み、ズルズルと滑って1歩登るのに難儀する。途中、巨大な岩が目前に現れる。岩の中央に割れ目があり、そこから超えられないかと思い1歩踏み込んだが、とても岩の急傾斜で越えることは出来ない。やむを得ず巨大岩をトラバースしようとしたが、動物のねぐらが巨大岩の中にあるのだろうか?用を足したばかりと思われる生臭い糞の匂いが漂ってくる。イノシシかクマかタヌキか不明だが、早くこの場を離れなければと思い、急いでこの巨大岩をトラバースしたが、斜面が急で殊の外難儀した。
 辺りは白みだし、地形が確認出来るようになってきた。やっと登山道に取り付いたのは大分明るくなってからである。その地点は未だ男坂コースの中間点を少し過ぎた辺りである。これからが男坂の急な登が始まる。予定外のコースアウトに体力を使い果たし、いつになったら山頂に到着するのか、疲労感が強く先が読めない状況である。気合いを入れ直し、山頂に向かうも一向にペースが上がらない。男坂、女坂の合流点を4時40分に通過。既に日の出時間に近い。合流点から通常であれば20分程で山頂に到着出来るが、体力の消耗した状態ではその2倍近く掛かると思われた。
 やっと山頂に到着。日の出時間を30分程過ぎた5時15分となっていた。出発してから3時間。長い道程だった。登山道を外し、1時間30分のロスタイムを生じた。日の出時間は大分過ぎていたが、富士山頂は雲の中。左右の裾のみが姿を見せていた。雲海も多少発生しているが湿度が高く靄が掛かったように視界が悪い。間もなく富士山頂も姿を現すと思われるが、靄の掛かった状況は撮影条件として最悪である。
 結局、フィルムは使わずデジタルカメラで撮影した。 暫く撮影に時間を費やしたが、やがて富士山は雲の中に姿を消した。これを期に下山することにした。
 沢コースは雨上がりで滑り易く、沢の深いところでは慎重にならざるを得ない。沢コースの終点に近い舗装された林道の途中で高齢者4人の男性登山グループと出会った。沢沿いは滑り易いので注意するよう伝えた。登山口到着9時35分。暑い日差しが照りつけていた。
 1年ぶりに訪れた高川山だったが、今回も登山道を外すたことに対し、二の足を踏んでしまった。


今日の富士山

 今日は湿度が高く靄が掛かったように視界が悪い。撮影条件としては悪い状態にあり、写真として体を成していない。このため画像に調整を加えてある。

僅かに雲海の発生があった           7:20頃
空に鱗雲が発生               6:25頃



登山道と花の開花状況

   以下写真は下山時に撮影したもので時間順に配置してある。

山頂に咲く:オカトラノオ   8:10頃    
山頂の様子
山頂に咲く:ママコナ


男坂と女坂の分岐点      8:35頃  
女坂コースの登山道    8:35頃
沢の崩落跡
(ロープが張られている)  8:40頃


女坂から沢コースへの分岐点
8:55頃      
沢コースの登山道    8:55頃
登山道から舗装された林道に
変わる場所   9:15頃


斜面に止まっている玉子石  
9:30頃    
男坂、女坂コース入口  
9:35頃  
初狩側駐車場(登山口)
9:40頃



                         使用カメラ: OLYMPUS  E-M1   CASIO  EX-ZR62