2012年以前撮影紀行(抜粋) NO2





2009年12月18日 本社ヶ丸・清八山


 本社ヶ丸・清八山は2月18日に訪れて以来今年2回目となる。10ヶ月ぶりであるが今回も前回同様本社ヶ丸からの富士山撮影をメインに行い、その後、清八山へ移動する予定である。
 ここのところ寒さが厳しく今日も例外ではないようである。大月ICを午前2時40分に降りた時は車の温度計はマイナス3℃を示していた。風も強く山頂は標高差を考えるとマイナス10℃前後と思われる。強風で気温が低い状況は撮影条件として最悪であるが天気の良い証拠でもあり、今日の富士山はどのような姿を見せてくれるだろうかと撮影意欲が掻き立てられる。
 大月ICから甲州街道で笹子へ向かい暫く走ると笹子駅を通過する。清八峠への登山口はこれより数分で笹子トンネル入口手前のヘアピンカーブに差し掛かるが、この直前にある道路を左折すると登山口に向かう。ここは大月市笹子町黒野田で追分人形(人形浄瑠璃)が有名な所である。左折後舗装された道路を道なりに暫く進むと変電所があり、これを巻き込むように通過し、橋を渡ると舗装された道路はここで一旦終わる。これからは未舗装の荒れた道となるがまた舗装された道路になり暫く行った先は行き止まりである。以前、この付近は樹木が伐採されたままの荒地であったが、約1年前から整地工事が始まり、尾根から入るルートの登山道は工事のため途中寸断されていた。そのため沢から入るルートが案内版に方向表示されていたが、今回はその方向表示が以前の尾根ルートの方向に向けられていた。整地工事が進み尾根ルートが復活したようである。車を少し手前の空き地に止め登山の準備を始める。夜空は満天の星で等級が下位の星まで良く見え今日は晴天である。この地点は標高900m前後と思われるが、気温もマイナス6℃で強風を伴い半端な寒さではない。
 午前3時25分に出発する。整地工事により迂回をしながら尾根道に入るが沢ルートに比べるとずっと歩きやすい。出発する時、車に積んであるアイゼンを持参するかどうか迷ったが、必要ないだろうと判断した。ところが途中の休憩所(展望所)を過ぎて暫くすると登山道にちらほら白いものが見えるようになってきた。登るに連れ雪が徐々に増えアイゼンを持参しなかったことが悔やまれたが、時間を掛けて滑らないように一歩一歩慎重に登る。下山では難儀することが予測され何とかしなければと思いつつも不安を感じる。
 清八峠を越え本社ヶ丸へは6時10分に到着したが、清八峠までの凍結雪と清八峠から本社ヶ丸間の岩場で時間を費やしたため20分のオーバータイムである。
 山頂は強風で気温はマイナス9℃と冷え込み体感温度は更に5℃程の差がある。この強風と寒さで富士山は日の出前にも関わらず最高のコントラストを見せている。周辺の山並みも鮮明に展望できるが遠く北側の空は灰色を成し冬型の気圧配置が伺える。直ぐに撮影準備を始めるが、突風で身体が振られ三脚も立てられず準備が思うように捗らない。瞬間風速は20m/sec前後と思われるが、風が弱まった時を狙って三脚をセットし、倒れないように錘を付ける。
 富士山の山頂は目まぐるしく雲が渦巻き強烈な風が吹き荒れている状況が伺える。この烈しく渦巻く雲と富士山に朝日が当たれば素晴らしい情景が撮影できるだろうと期待したが、日の出時刻を過ぎても東の空に棚引く雲が太陽を遮り、色づきを見ることは出来ない。10分程過ぎてから富士山に光は入ったが時遅く一瞬薄紅色になったものの直ぐに色を失った。
 今日の富士山頂付近は強烈な風で雲の舞い方を見ると猛吹雪なのかも知れない。写真にタイトルを付けるとすれば「荒れる富士」「富士荒ぶる」などが相応しいような今日の富士山である。強風、突風で写真にブレが生じている可能性が高く現像結果が心配である。
 8時20分山頂を後に清八山に向かう。途中足場の悪い岩場が数カ所あり、下降時は強風に煽られるとバランスを崩しやすく危険性が高い。特に重い荷物を背負っていると影響が大きく滑落したら命取りになる。荷物の調整や、風が静まった時を狙って行動したため清八山への到着が大幅に遅れた。
  清八山には9時50分到着。相変わらず強風で静まる様子は伺えない。この時間になると太陽の位置も高くなり撮影条件が悪くなる。富士山も相変わらず猛烈な強風下に晒されているようで今日一日この様な状況が続くのかも知れない。
  清八山での撮影を済ませ10時45分下山を始める。清八峠までは登山道に殆ど雪はないが、峠を少し下ると凍結した雪が登山道を覆っている。このコースは登山口まで北斜面に付けられているため一日中陽が当たらず融けることはない。緩斜面は慎重に歩けば何とかなるが、急な斜面になると必ず滑る。ここでまたアイゼンを持参しなかったことが悔やまれる。何とか下山しなければならず、杖で支えたり、頼りない枯れた草に掴まったり、時には登山道を外しヤブの中を歩いたり、何とか雪が少なくなるところまでたどり着いた。変なところに力が入ったせいか右足太ももに痛みを訴えたが下山を続けるうちに痛みは消えた。
  登山口の車を止めたところに戻ったのは12時15分。今日は平日と云うことも有って登山中誰とも会うことはなかった。




今日の富士山

 

本社ヶ丸より               6:59撮影  




清八山より                10:34撮影








登山道の状況


 変電所側からの登山道入口は沢沿いを歩き途中から尾根に入るルートと、林道の終点から林道沿いに直接尾根に入る2ルートがコース設定されていたが、林道終点の荒地整備工事が始まり尾根ルートは暫く寸断されていた。工事が進み尾根ルートは復活されたが、沢沿いから入るルートは廃止されたような状況が伺える。沢沿いルートも使えると思われるが、岩がゴロゴロしていて水量も多く歩きにくい。このため案内標通り尾根ルートを選択するのが賢明である。
 清八峠への登山コースは北側斜面に敷設されているため、12月中旬になると登山道には凍結した雪が残っているためアイゼンを持参する必要がある。シーズンに降った雪は標高1000mを超える北斜面では日中でも気温は氷点下を下回るため融けることは殆ど無いと考えてよい。今回も休憩所を越えた標高1300m位から凍結した雪が多くなってきた。
  清八峠から本社ヶ丸の間も凍結した雪はあるが清八峠までの登山道よりは少ないため滑って転倒する危険性はあまりない。それよりも数ヶ所ある岩場は足場が悪く危険性が高い。特に山頂直前の岩場はそれ程高くはないが(2m位)ホールドする箇所が少ないため、重い荷物を背負った下降時は危険性が高い。クサリやロープが設置されると安全性が確保され有り難いが・・・・。

 


本社ヶ丸山頂     8:16


清八山山頂                10:32
斜面の登山道(雪は凍結している) 11:04





途中の休憩所(市内や大菩薩方面の山が展
望できる)  11:43





林道の終点(林道沿いに先へ進むと尾根ル
ートの登山口がある)      12:24    
(左に入ると沢沿いルートで以前は表示板が
あったが現在は無くなっている)









行程:登山口近くの空き地(3:25発)→休憩所(4:10)→清八峠(5:10)→本社ヶ丸山頂(6:10着・

     8:20発)→清八峠(9:35)→清八山山頂(9:50着・10:45発)→清八峠(10:55)→休憩所

(11:40)→登山口近くの空き地(12:15着)




                                       使用カメラ: ・OLYMPUS E3   ・PANASONIC DMC-TZ7







2009年6月9日 倉岳山


 倉岳山には先月11日に訪れたが、早いもので1ヶ月が経った。この時は曇り空で満月と富士山の姿は朧で写真にならなかった。今回は今年最後のチャンスであり先月の不発を取り返えそうと期待を込めて倉岳山を訪れた。
  今日の月は満月から2日目に当たり、“立待ち月”という名で呼ばれている。満月を過ぎると徐々に月の出が遅くなるため、月の出を待つ心境を言い表した呼び名が付けられている。満月の次の日を十六夜(いざよい)、2日目を立待ち月(たちまちづき)、3日目を居待ち月(いまちづき)、4日目を寝待ち月(ねまちづき)、5日目を更待ち月(ふけまちづき)というふうに満月を過ぎると月の出が1日1日遅くなる様子を表している。昔の人が風情のある呼び名を付けたものだと感心させられる。
  秋山無生野から林道奥の空き地に車を止めたのは2時20分である。準備し2時40分に倉岳山目指し出発する。山頂には4時到着目標である。今日の天気予報は曇から晴れマークになっていたが、登山口は霧つつまれていた。天気がどうなるか心配である。歩き始めは沢の中を行くが、昨日の雨の影響で水量が多く大変歩きにくい。これを通過すると沢から離れ、杉林に覆われた緩斜面の登山道に入る。暫く歩くと沢の音も聞こえなくなり静けさが漂う。暗夜でやや不安げな気持ちになるが、ヘッドランプの明かりを頼りにひたすら歩く。時折霧が途切れ杉林の間から朧気な月が見え隠れする。もしかして今日は期待通りの写真が撮れるかも知れないと期待を抱く。
 穴路峠を3時30分に通過、満月は富士山頂上に4時10分に達するため、予定時間に到着しないと富士山頂上の月は撮影できない。穴路峠から暫くすると急斜面が始まり、昨日の雨で登山道は泥濘で滑り易く遅れ気味のペースとなる。やや焦りを覚えるが、何とか山頂には予定時間に到着する。ところが先月同様、朧気な満月と富士山の姿を見ることになる。間もなくすると月は雲の中に姿を隠し、またしても満月と富士山の写真は不発に終った。
 この時期の日の出は早く4時30分ごろには日が昇り、朧気な富士山山頂にも光が入り僅かながら赤みを帯びたと思うと直ぐに富士山も雲の中に姿を消した。暫くすると山頂は霧に包まれ雨が降り出す。下山しようと準備を始めたが、突然霧が晴れ時折富士山が姿を見せる。下山を躊躇したが結局足止めされる。しかしながらまた霧と雨、この繰り返しを何度か経たが、今日は天気が良くならないことを悟る。結局下山を始めたのは9時、なんと5時間も山頂で思わせぶりな天気に惑わされていたことになる。
 満月と富士山の撮影は2007年から始め3年経過したが満足な写真は撮れていない。来年も同じ5月、6月の時期になるが、今年以上に富士山頂と満月が離れ、撮影条件が悪くなる。このため満月と富士山撮影をいつまで続けるか決め倦んでいる。「カシミール3D※1」を使用し富士山頂と満月の離れを調べてみると満月は2011年に富士山頂から最も離れ、2015年になると近づき(過去では2005年)、約10年周期で離れたり近づいたり繰り返しているようである。このような現象は地球及び月の公転が円軌道でないために起こるものである。     ※1 http://www.kashmir3d.com/


 




カシミール3Dより 2009年6月9日倉岳山からの月の軌跡(4時10分には山頂上に達した)













山頂付近に達した月(年々富士山と満月の離れが大きくなっ
ている)4時08分撮影・4時25分に月は雲の中に姿を消した。













登山道の状況


山頂の様子(雨交じりの霧で視界が悪い) 5:
37撮影      





同左










花の開花状況


 山頂にはコゴメウツギやモミジイチゴの実が多く見られる。登山口付近の沢沿いの道にはセンリョウ科のフタリシズカ(花穂が1本から3本)が数多く見られる。ヤマアジサイは未だ蕾の状態で開花はこれからである。


不明(イチゴの仲間と          思われ
る)  

モミジイチゴの実       バラ科
ヤマザクラの実         バラ科
コゴメウツギ         バラ科




マルバウツギ    ユキノシタ科
不明(ウツギの仲間と思われ るが)

コアジサイ       ユキノシタ科
ヤマアジサイ(開花はまだ先)ユキノ
シタ科





フタリシズカ(花穂が1本〜3本以上のこともある。1本のものはヒトリシズカとは異なる)  センリョウ科














                                                                 使用カメラ: Olympus E-3  ・ RICOH R8