2015年 撮影紀行(その12)
10月3日 百蔵山
10月に入ってもすっきりした青空は見られず雲の多い日が続いている。富士山もなかなかクリアな姿を見せてくれずカレンダー作りの写真やコンテスト応募用写真が思うように撮影出来ていない。
今回は天気予報を基に雲海発生を予測し百蔵山を訪れることにした。大月市内を流れる桂川は水量も豊富で川霧を発生する機会が多く、地形的条件から雲海に発展しやすい場所である。前日の雨で大地に湿り気が与えられ、その水量や気温の降下、風の状態など、各々の条件によって雲海発生が決定づけられる。
雲海と富士山のイメージは、朝焼けた雲海の上にポッカリ富士山が頭を出し、俺が誰よりも一番背が高いのだと、自信ありげに堂々と容姿を誇示していることである。そんな情景を撮影出来ればと百蔵山からの富士山を狙うことにした。
西コースの登山口を午前2時35分に出発。周辺がやや明るく感じるが、天空を仰ぐと右下が少し欠けた月齢20日の月が輝いている。また、一等星と思われ明るい星が所々で瞬を見せている。今日は天候に恵まれたようで、意図した富士山が撮れればと願う。
西コースは東コースに比べ、急斜面は少なく比較的容易に登れる。途中、石がゴロゴロして歩きにくい場所も一部あるが、登山道は全般的に整備されていて歩き易い。
風は殆ど無く気温は高めで湿気が多く歩いていると汗が滲んでくる。途中の富士山展望所を3時10分に通過するが、靄が発生しているようで街の灯りが朧気に見える。遠方の視界は利かず、近隣の山や富士山の姿は確認できない。
百蔵山稜線の鞍部に(葛野部落への分岐点)に3時25分に到着。冷たい風が通り抜け一息付くが、ガスが発生していて視界が悪い。山頂には3時45分に到着。更にガスは濃く全く視界が利かない。上空ではガスの動きが活発でその合間から時折月が顔を出す。上空のガスは薄く思えるが、百蔵山は標高が1003mと低いため山全体がガスで覆われている可能性がある。このような状況の時、一瞬にして視界が開けることもあり、撮影準備をしておくことにする。
日ノ出時間に近づくにつれ辺りは明るみを帯びてくるが、視界が開くに至らない。時折、半端に開くことはあるが、街の朧気な灯りは見えても周辺の山の姿は見られない。一時、日ノ出時間に朝焼け雲がガスの合間から見られたが瞬時の出来事で視界は間を置かず閉じられた。
桂川沿いの谷からは時折ガスが上がり山頂を覆い尽くす。そのような繰り返しが続き、回復の兆しは全くなく、富士山を望む事は絶望的と思われた。今日の撮影は諦め下山準備に取り掛かる。下山しようとすると、いきなり視界が開き富士山が姿を現した。既に7時を過ぎ遅い時間になったためか、ガスの膜が張って抜けの悪い情景が目前に迫る。不鮮明ながらも雲海に浮かぶ富士山は格別なものがあり、コントラストに欠けるがフィルムカメラにもしっかり収めた。
桂川沿いの雲海は上野原を越え相模湖付近まで連なっていると思われる。更に雲海は谷を一つ越えた道志川の谷にも発生している状況が窺える。雲海予測はある程度的中したと思われるが標高の高い山であれば状況が違っていた事も考えられ、イメージした情景に出会えたかも知れない。
今日は7時過ぎに一度下山を決めたが、状況の変化に暫く山頂に留まった。下山開始は9時頃とやや遅くなったが、登山者の訪れる時間帯で、土曜日と相まって途中出会った登山者は都合15名位と多かった。
今日の富士山
7時10分頃にやっと姿を現した富士山。ガスが充満し抜けは悪いが、やはり雲海上に浮かぶ富士山は格別である。日ノ出時間に視界が開けていたらと悔やまれる。
桂川沿いの谷から次から次に湧いて くるガス 7:30頃 |
山頂の木葉も色づきを見せてい る 7:50頃 |
秋を象徴する情景 8:20 頃 |
棚引く雲も大分減ってきた 8:35頃 |
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ガスが晴れた直後(ガスが舞って抜けが悪い)桂川沿いの雲海は東に長く延びている。
←東側 上段の雲海は道志川の谷に発生したものと思われる。 7:20頃 富士山 西側→
登山道と花の開花
今年は全般に花の種類と花数が少なく更に花の色付き余り良くない気がする。梅雨時から猛暑が続き雨の日が多く日照不足が原因している可能性はある。
日ノ出時間にガスの合間から見えた 朝焼け雲 |
シロヨメナ(キク科) 山頂に 咲く |
ヤハズヒゴタイ(キク科) 山頂に 咲く |
百蔵大明神遺跡 山頂に 設置されている |
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百蔵山山頂 8:50 頃 |
山頂は広く細長い 8:50 頃 |
葛野部落への分岐点 9:05 頃 |
中腹の富士山展望所 9:15頃 |
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アキノキリンソウ(キク科) 展望所 に咲く |
ナンテンハギ(マメ科) 登山道 に咲く |
猿橋駅への分岐点 9: 35頃 |
登山口近くの水場 (何時も 水量豊富) |
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登山口の駐車スペース 9:40 頃 |
ハナニガナ(キク科) 登山口 に咲く |
オオニガナ(キク科) 登山口 に咲く |
ナンテンハギ(マメ科) 登山口 に咲く |
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使用カメラ:OLYMPUS E-M1 FINE PIX F1000EXR
9月19日 牛奥ノ雁ヶ腹摺山・小金沢山
9月に入っても天気は安定せず、下界に日差しがあるものの高い山の上ではガスが発生し、視界は閉ざされ富士山が見えないことが多い。天気予報もその日の天気が日を追う毎に変化し、その信頼度もCクラスと低い。
今回は気象予報から雲海が出ると予測できる日を選んで牛奥ノ雁ヶ腹摺山から富士山を狙うことにした。雪の無い富士山はやはり単独では絵にならない。夏だと大きな花をレイアウトし華やいだ雰囲気を出すことは可能であるが、紅葉には未だ早く、この時期は雲海で演出するしか思が浮かばない。
日川林道の登山口から2000m級の牛奥ノ雁ヶ腹摺山に短時間で立つことができる西尾根ルートは、撮影を目的とした我々カメラマンにとって貴重な登山コースである。更に小金沢山まで足を伸ばせば、異なる景観で再び富士山を撮影することができる。また、積雪期もその量にもよるが、比較的容易に山頂まで行くことができる。西尾根ルートは小金沢連嶺からの富士山撮影に最適コースと云っても良い。
午前3時20分、日川林道の登山口を出発する。天空を仰ぐと満天の星空が望め天気は良さそうである。を見ることができ、富士山と雲海の撮影に期待が掛かる。
登山口一帯は最近大規模な樹木の伐採が行われ以前の光景は一変した。登山口からの登り初めは2段階で木製階段が設けられ、都合180段程の段数がある。伐採はその上部の最終段まで広範囲に及び、登山道入口から日中であれば遙か先に連なる木製階段を見ることができる。伐採されたことにより視界は大きく広がり階段上部から日川ダムや近隣の山々の素晴らしい景色を望むことができる。
牛奥ノ雁ヶ腹摺山へ直登するこのコースは以前から存在していたが、殆ど利用されていない状況にあった。2008年の秋にそのコースの存在を知り、直ぐに登山道の調査を進め、翌年3月、林道の閉鎖されている時期に初めてこのコースを利用し山頂を踏んだ。その当時は、登山道が荒れていて視角の狭いヘッドランプではコースを外すことが度々あった。それにより所要時間を多く要し予定通りの行動が取れなかった。その後、登る度に登山道が不明瞭な箇所にはテープを木に巻き付けるなど道標を設けた。暗夜でも見過ごさないよう幅広の赤いテープの上にそれより狭いヘッドランプに反射するよう白色テープを巻き付け目立つようにした。そして2010年に昭文社の「山と高原地図」にこのコースが記載され、利用者が大幅に増えた。これにより登山道の整備が進展し暗い中でもコースアウトはなくなった。
西尾根のピ−クを4時25分に通過。富士山は黒い姿で存在を示し、暗いながらも東西に連続した雲海が発生していることが不明瞭ながらも確認できる。予想通りの展開に心は逸る。
山頂到着4時50分。気温は10℃。風は殆ど無いが時折冷たい風が吹き抜ける。富士山は抜けの良い堂々とした姿を現している。雲海トップの位置は富士山7合目付近にあり、それをピークに東西に連なった雲海が目前に迫る。甲府盆地も完全に雲海によって埋め尽くされ、その素晴らしい景観に感動を隠すことはできない。
日ノ出は5時26分(東京)間もなく日の出を迎えようとしているが、徐々に富士山正面の雲海が減少し始めた。冷たい空気と暖かい空気の交わりによって雲海の量に変化を伴うのかも知れない。東西に連続していた雲海が富士山正面で途切れているような形に見える。朝日による雲海の色付きを期待したが、朝日が東の雲に遮られ、遅れて雲海に届いたため色付きは僅かなものとなった。
日の出から1時間程すると甲府盆地からの雲海が流れ込み、富士山前面に雲海が復活してきた。日ノ出前のものに比べるとボリューム感に欠けるが、東側に大きな雲が現れ、躍動的な展開が繰り広げられた。やがて7時頃になると周辺にガスが発生し、視界は閉ざされた。暫く待機したが、視界は晴れず小金沢山に移動することとした。
小金沢山には8時25分到着。小金沢山山頂はガスに覆われ、時折視界は開いても富士山が見えるには至らない。回復を待ったがその見込みはなく10時15分、下山を始める。
牛奥ノ雁ヶ腹摺山に11時到着。10分程休憩し西尾根を下山。12時15分、日川林道の登山口に到着。今日は大菩薩方面からの単独登山者4人と湯ノ沢方面からの登山者1人と下山途中で出会った。
今日の富士山
日ノ出前(雲海トップの位置が高い) 5:15頃 |
日ノ出時間10分後(前景の山に 朝日が入 る) 5:35頃 |
東側に大きな雲が発生し同時に甲府盆地側から雲 海が流れ込む 6:55頃 |
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←東側(大月市) 黒岳 牛奥ノ雁ヶ腹摺山からの雲海パノラマ (甲府盆地)西側→

登山道の状況
以下写真は小金沢山からの下山時に撮影したもので時間を追って並べてある。
小金沢山より 6:30頃 |
原生林(牛奥雁腹山と小金沢山の中 間点) 9:05頃 |
笹源(牛奥雁腹山と小金沢山の中間 点) 9:15頃 |
牛奥雁腹山と小金沢山の中間点に 咲くスミレ 9:15頃 |
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牛奥ノ雁ヶ腹摺山山頂 9: 20頃 |
山頂直近の西尾根登山道 9:20頃 | 西尾根ピークに向かう鞍部の立ち枯 れ樹木 9:30頃 |
倒木の多い牛奥山頂と西尾根ピーク の鞍部 9:30頃 |
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西尾根ピーク付近から望む 上日川 ダム 9:35頃 |
新芽の吹き出たサラサ ドウダ ン 9:40頃 |
モミジの花 9:55頃 |
新緑が眩しい 10:10頃 |
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行程:西尾根登山口(3:20発)→ 西尾根ピーク点(4:25)→ 牛奥ノ雁ヶ腹摺山(4:50着〜7:40発)
→(小金沢山(8:25着〜10:15)→ 牛奥ノ雁ヶ腹摺山(11:00着〜11:10発)→ 西尾根登山口(12:20着)
使用カメラ:OLYMPUS E-M1 FINE PIX F1000EXR
9月11日 ハマイバ
台風18号が日本海で温帯低気圧に変わりそれが暫く停滞し、そこに向かって南から暖かい湿った空気が流れ込み、関東、東北は豪雨に見舞われた。その結果、茨城、栃木、福島、宮城など各地に大きな被害をもたらした。台風が過ぎ去っても雲が多く、時折日差しはあるものの急な降雨など不安定な天気が続いている。
そのような状況の中、当日の予報は曇りのち晴となっていたが、撮影に出掛けるかどうか躊躇した。ここの所、撮影に出掛けても富士山が姿を現さない事が多く、天気予報も当てにならない状況となっている。撮影に出掛けるかどうかの選択として、ライブカメラに富士山が写っているかどうかで決めることにした。ライブカメラによる確認は夜中となるため暗くて写らない可能性もあるが、現在、富士山の登山道の灯りがあるため、その灯りが見えるかどうかで判断出来る。そして、「河口湖逆さ富士」のライブカメラでそれが確認出来た。早速スタンバイ、車に機材を積み込み、自宅を午前1時に出発する。出掛けに天空を見上げると満天の星が輝いていた。
大月ICを降り、国道20号から景徳院入口を右折し国道218号線に入る。台風の影響で、こちらも風雨が強かったと思われるが、焼山沢林道の状況も確認せずに出発した。閉鎖という事態も考えられ心配しつつ林道の入口に到着したが、特に閉鎖を示すような案内板は立てられていない。ホッとして進入するが、路面には折れた枝や葉が散乱し、強風が吹き荒れたことが窺える。途中、3箇所ほど斜面からの土砂が路面に流出し、道路幅が狭められているが、通行には支障ない状態である。
大雨の後は落石が多く、安全のため注意しながら速度を落として進むが日川林道の入口に差し掛かかった所で左手にあるゲートが閉鎖されていた。これより、林道は未舗装区間となり、湯ノ沢峠へは直進するが、バリケードが設けられ進入禁止となっていた。路面状態の悪化によって閉鎖されていると考えられた。車を空き地に駐車し、これより湯ノ沢峠までは歩いては入ることになる。予定が30分程遅れるが日の出時間には間に合いそうである。天を仰ぐと満天の星空、今日は富士山の姿が望めそうである。
湯ノ沢峠には3時50分到着。薄いガスが発生している。星は見えないが新月間もない細い月が時々ガスの合間から見え隠れする。お花畑通過の頃はガスで視界が殆どなくなっていた。大蔵丸4時30分に到着。ガスで視界ゼロ、時折雨が混ざるようになり、嫌な予感が脳裏を掠めたが、駐車した空き地で星空が見えたことは、視界が開けることを意味しているように思えた。
ハマイバの撮影地点(山頂の北側)には5時に到着。相変わらずガスで視界はないが、既に明るみを帯びてきている。視界が開くのは時間の問題と思われた。
今日の日の出時間は5時20分、15分程すると一気に視界が開けた。夏富士がポッカリ姿を現している。そして甲府盆地は一面雲海で満たされている様子が確認できる。風は殆どないが雲海はゆっくり東に移動している。東からの風により富士山の正面に到達するまで暫く時間は掛かったが、一気に富士山前面の谷も雲海で埋め尽くされた。富士山から南アルプスの北側まで連なり大雲海が展開された。時折このような情景に出会うと感動を隠せない。感動出来る場面にたまに出会えるからこそ撮影が止められない所以である。
情景を全て取り込もうと夢中でシャッターを切るが、2台のカメラのレンズは湿気でくもり、拭き取りが忙しい。この作業は撮影に集中力が削がれると同時に、鬱陶しさが加わり、まさにカメラマン泣かせである。
今日は晴れ間もあるが雲が多く光も少ない。更に湿度が高く、薄いガスが幕を張り抜けは良いとは云えない。時折、ガスが発生し視界が塞がれる。時間と共にこのような状況が頻繁となってきたため、8時に大蔵丸に向かい下山を始める。9時に大蔵丸に到着した時は視界が閉ざされていた。1時間ほど待機するが回復の兆しはなく、湯ノ沢峠に向かって下山を始める。駐車した日川林道入口の空き地に11時30分に到着。そこには自分の車を含め、4台駐車されていた。到着した時は日川林道のゲートは開けられていたが、ユンボを積んだトラックが土砂崩れの場所に向かって行った。役所の人と思われるが、通行止めとなっている未舗装の抉れた部分を改修するため砂利を積んだダンプがこれから入ると言っていた。今日中に作業が終われば直ちに通行止めは解除される見込み。焼山沢林道は土砂崩れの改修工事が始まったため、日川林道経由で帰ることにした。
今日は下山時に大蔵丸で単独の登山者と、お花畑に下る途中で夫婦と、お花畑では3人の登山者グループと出会った。台風が去った直後、更に林道の一区間が通行止めされ、悪条件にも関わらず登山者が訪れていることは人気の山であることが窺える。
今日の富士山
素晴らしい大雲海に出会えたが、その感動を伝えるため、何処にポイントを置いて撮影すれば良いか難しい。雲海に色が付いていればポイントを絞りやすいが、朝日が入るのが遅れたため、白一色。前景に花などをレイアウトすれば夏富士も生きてくるが、白い雲海のみでは残念なことに表現方法が思いつかない。
大雲海(右の方が甲府盆地であるが雲海で埋め尽くされている)雲海は時間と共に 富士山方向へ寄せて くる 6:30頃 |
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富士山頂に朝日が入った 瞬間(光 が入るのが遅れた)5:55頃 |
富士山前面の谷が埋め 尽くさ れた 7:40頃 |
躍動感溢れる雲 7:50頃 | 雲海トップの位置は更なる高みを得 た 7:50頃 |
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使用カメラ:OLYMPUS E-M1 FINEPIX F1000EXR