2012年撮影紀行 NO14




8月22日 牛奥ノ雁ヶ腹摺山


 山頂南側の斜面には黄色い花を付けたマルバダケブキが一面を飾っている時である。昨年も同時期に富士山とマルバダケブキを撮影するため訪れたが、富士山は霞に被われ役不足で思うような写真が撮れなかった。今回も富士山とマルバダケブキを狙い再チャレンジとなるが、クリヤーな富士山が望めることを切に願い牛奥ノ雁ヶ腹摺山を訪れることにした。
 今回も山頂まで最も短時間で登ることの出来る、日川林道を登山口とする西尾根コースを直登することにした。午前2時50分、登山口近くの車2台ほど置ける広い路肩に車を止める。視界が悪く霧雨が現在降っている。気温は15℃と風もないが半袖では寒く感じる。登山口の標高は1600mで十二景の山の中では湯ノ沢峠とほぼ同じ高さであり、山頂との標高差約400mは比較的楽に山頂を踏むことができる。しかし、林道閉鎖期は簡単ではない。
 3時10分登山口を出発する。ヘッドランプの灯りが霧雨に反射し、細かい雪が降っているかのように白く見える。今日は晴の予報が出されているため、天気は回復し富士山が見られることに希望を託す所であるが、山の天気は気ままである。霧雨は途中から霧に変わり、標高を稼ぐにつれ霧は薄れてくる傾向にある。細尾根の頂点に立った時には視界がないものの霧に動きが見られ天気が良くなる兆しを感じる。
 細尾根の頂点から山頂までは一度下ってまた登ることになるが、下りきったサグ地点は倒木が多く、6月の初めに訪れた時には登山道は倒木で塞がれ、迂回するのに四苦八苦した経緯がある。2箇月ほど経過した現在は登山者によって迂回路が踏まれ、難なく通過出来るようになったことは大変有り難い。
  山頂には4時30に到着。風はやや強いが、霧は未だ晴れず視界不良である。天空は既に明るみを帯び、時折霧の合間から周辺の山が一瞬見えることがあるため、天気は間もなく回復し、富士山が姿を現してくれることと思う。この様な時に一瞬のシャッターチャンスが訪れることがあり、急いで撮影準備に取り掛かる。準備を始めて間もなく霧は晴れ、クリヤーな富士山が突然現れる。富士山の前面には、甲斐大和の谷が真白い雲海に覆われた素晴らしい情景が目に入る。日ノ出時間(5時05分頃)が近づくに連れ、雲海に少しずつ色が付き、またとないシャッターチャンスが訪れる。
 山頂南側の斜面には黄色い花を付けたマルバダケブキが色を添えている。昨年は富士山が霞で被われ存在感を失っていたが今日は申し分ない。富士山にマルバダケブキをどのように配置するか効果的なことを考えると難しい所であるが、試行錯誤を繰り返した上で撮影することが不可欠である。
 今日はしばらく安定した素晴らしい富士山が望めたが、8時頃のなると雲が出はじめ、1時間ほどの短い間に富士山は雲に覆われ姿が見えなくなる。小金沢山への往復も考えたが、富士山が姿を再び現すことも考えられず、9時10分山頂を後にする。
 登山口には10時10分に到着。 今回は素晴らしい富士山に出会え、マルバダケブキの花も最盛期で撮影の目的は達成された気がする。花と富士山は、タイミングが難しく、上手くはまった時は喜びも大きい。
 今日は山頂及び登山道で誰とも出会うことはなかった。暑さで訪れる人も少ないと思われるが、標高2000mの山は涼しく、秋の気配すら感じられる。


日の出前(雲海に動きがある)        4:50頃  




日の出時の富士山              5:10頃






マルバダケブキと富士山         6:30頃




山頂南斜面のマルバダケブキと富士山        6:50頃








花の開花状況


 何と云ってもマルバダケブキの黄色い花が、山頂南の斜面から南に下った“賽の河原”に掛けて最盛期を迎えている。また、アキノキリンソウ、ウスユキソウ、なども咲き、全般にキク科の花が圧倒的に多い。やはり、秋はそこまで来ていることが伺える。


ハクサンフウロ       (フウ
ロソウ科)

 

    コウリンカ(キク科)


ノコギリソウ(キク科)

ウスユキソウ(キク科)
タチフウロに似るがこちらの方
が紫色が濃い





ヤマハハコに似るがこちらは葉
にギザギザがある





ニガナ(キク科)  
 

コオニユリ(ユリ科)

マルバダケブキ(キク科)

シロバナツリガネ    ニンジ
ン(キキョウ科)





毒があるのか定かでないが、鹿
が食べないことで知られて い
る。しかし、北岳の二股分岐で
食べているのを見たという情報
もある。それ程、他の植物を食
べ尽くしたのだろうか。






雁ヶ腹摺山と       マルバ
ダケブキ

ウメバチソウ       (ユキノ
シタ科)

マルバダケブキ(キク科)

ツリガネニンジン    (キキョ
ウ科)




ヤマハハコ(キク科)




アキノキリンソウ    (キク
科)









行程:日川林道登山口(午前3:10発)→牛奥ノ雁ヶ腹摺山(4:30着〜8:00発)→

             賽の河原(8:25〜8:35)→牛奥ノ雁ヶ腹摺山(9:00着〜9:10発)日川林道登山口(10:10着)


 

                                        使用カメラ:  ・PENTAX 645N   ・FINEPIX F300EXR






8月1日 高川山


 今回は夕景、夜景、朝焼けの富士山を撮影するため、山頂で一晩過ごす予定を立て、早速、高川山を訪れることにした。ここのところ猛暑が続きこの日の予報も同様で、陽のあるうちに登るのは久々である。暑さに耐えられるか少々心配である。
 今日は夕方に男坂コースを登り、明朝に女坂を下る予定である。初狩駅から南へ向かい林道奥の登山口に車で到着したのは17時10分。日没まで1時間半以上の間はあるが、未だ陽差しは強く、動かなくても汗が流れるほどで厳しい暑さを感じる。
 17時30分登山口を出発する。男坂の分岐点までも傾斜の急な所があり息が上がる。男坂は更に運動量が多く汗で体力を消耗する。何とか急坂を登り切り、山頂に18時45分に到着。富士山は霞に被われながらも姿を見せている。山頂に到着した時はちょうど日没時間であったが、太陽の直射はないものの、山頂の岩が焼け、強い熱気が漂っている。汗で衣服はびしょ濡れになり、これを乾かすため、下半身の一部を残して脱ぎ捨て、木に吊して置くが、湿気が多くなかなか乾かない。夜の帳が下りる頃には気温が下がり、一変寒さを感じるようになる。衣服は夜露で乾くどころか濡れる一方で、これを身につける訳にはいかず、セーターを素肌に直接着込みその上に防水ウェアーを重ねる。更にツエルトを体に巻き付け寒い思いで一晩を過ごすことになる。せめて、下着の持ち合わせあればと今になっては悔やまれる。
 富士山撮影は長時間露光で行うためシャッターは暫く開放状態となるが、その間にレンズが夜露で曇ると失敗する。デジタルカメラでは撮り直しが可能であるが、フィルムカメラでは現像が仕上がって結果が判明するため、入念にレンズを繰り返し拭くより方法が無く、現像結果にこの影響がないことを願うのみである。
 今日は十三夜の月で、満月に近く光量が豊富である。このため山頂は明るく、ランプの灯りも要らないほどである。月明かりで富士山も浮かび上がって見えるが、霞が棚引き抜けは悪く、撮影条件は良いとは云えない。日が変わる頃には薄雲が立ち込め、富士山は一時雲に隠れることもあったが、間もなく回復する。この時期の富士山は登山者が多く、登山道の明かりが山頂まで連なる光景は夏の夜空を飾る風物詩といっても良い。
 午前3時15分、月は三つ峠山頂付近に沈み、明るかった山頂もいきなり暗夜と化した。ヘッドランプの明かりを灯し、ラジオを聴き不安を紛らわすが、この時間は僅かな間で、4時頃になると東の空は明るみを帯び、ホッとした時間が訪れる。日ノ出時間が近づくに連れ、天空の色が徐徐に変化を始め、今日の幕開けが始まる。この僅かな時間の感動は生きて良かったと思う瞬間である。
 朝になっても水蒸気が多く、相変わらず富士山の抜けは悪い。間もなくすると富士山は雲に隠れ、このまま現れることは無いように思われた。これ以上の回復は見込まれず、撮影をこれで打ち切り、下山準備に取り掛かる。衣服は未だ半乾き状態であったが、冷たさを感じながらも身に付け、7時15分山頂を後にする。女坂コースを下山するが、気温が上昇し、乾ききっていない衣服が追い打ちをかけられたように、また汗で濡れ、乾く間がない。昨日から汗の排出量が多い割には昨晩寒かったせいか水分の補給量は少ないが、それにしても疲労感が強い。やはり暗いうちに登った方が汗の排出量も押さえられ体力の消耗も少ないように思われる。
 登山口には8時30分に到着。既に日差しは強くなり、今日も猛暑日になりそうであるが、この暑さを敬遠してか、山頂や登山道で登山者と出会うことはなかった。



今日の富士山


湿気が多く水蒸気の発生で抜けが悪い

夕景                19:00頃    

夜景                  21:00頃

 夜景(霞が棚引く)             1:30頃





朝焼け                   4:50頃




 早朝の夏富士                6:05頃








山頂からの光景


月没 (三つ峠山頂付近)        3:10頃    




 朝焼け空              4:45頃








花の開花状況


ヤマユリ(ユリ科)山頂にて  

オカトラノオ(サクラソウ科)
山頂にて

高川山山頂           7:20頃
 ママコナ(ゴマノハグサ科)     
  山頂にて





ヒヨドリバナ(キク科)山頂にて  
ギボウシ(ユリ科)登山口付近にて


アキノタムラソウ
(シソ科)・登山口
付近にて







行程:  初狩側登山口(17:30発)→山頂(18:45着〜翌日7:45発)→初狩側登山口(8:30着)





使用カメラ:   OLYMPUS EP-2   FINEPIX F300EXR