2017年 撮影紀行(その1)




2月6日 扇山

 ここの所晴天が続き神々しい冬富士を望むことは出来るが、写真撮影となると青空に映える富士山は主役としての存在が大きい故、表現が大変難しい。そこで脇役となる雲や雲海、花など、冬期であれば霧氷、樹氷などの雪景色が表現上必要不可欠である。これらは気象条件によってそのチャンスがあるかどうかに掛かってくる。冬期の気圧配置は西高東低の冬型気圧配置が多く、風の強いピーカン日に代表され副材も少なく撮影チャンスが中々訪れない。今回、前日の5日に僅かながらの降雨があり、冬型の気圧配置が崩れ、何らかのチャンスがあるだろうと扇山を訪れることにした。扇山には昨年9月に訪れて以来である。
 午前2時40分梨ノ木平の駐車場に到着。ここは大月カントリークラブの入口直近で、このゴルフ場を目差してくれば迷わず到着出来る。風は殆ど無く、湿度と気温は高めで寒さは感じない。天空を仰ぐと満天の星空。車で坂道を登ってくる途中、霧が発生していて視界の悪い場所が暫く続いた。これが雲海発生につながってくれれば良いと願わずにはいられない。梨ノ木平の標高は594m、山頂の標高1138m。544mの標高差がある。所要時間はゆっくり歩いて2時間弱である。
 3時05分、梨ノ木平を出発。全般に登り傾斜は緩いが高めの気温と湿気で汗が噴出しその熱で眼鏡が曇る。真冬でこのようなことは余りない。冬の登山は汗が出ない程度に歩く速度を調整するのが良いと云われている。確かに休憩中には風が強いと汗が冷やされ急激に体温を奪われる。特に山頂で待機しながらの撮影となると体力低下に?がり、汗を掻かないよう登ることは重要である。
 中腹の水場を3時45分に通過。これからつづら折りの登山道が尾根の出会いまで続く。暫く登るとツツジ群生地への分岐点に差し掛かる。時間は4時15分。既に1時間以上登ったことになる。ここは富士山の展望地となっているが、暗くて姿は確認出来ない。街の方向を見渡すと木々の合間から所々灯りが漏れている。残念ながら雲海の発生がないことを証明している。これまで風を殆ど感じなかったが、木々の枝を抜ける風音が遠くから聞こえてくる。
 百蔵山への分岐点(尾根の出会い)に4時45分到着。いきなり北西からの強風に晒される。掻いた汗が急激に冷やされ寒さを強く感じる。ここまで来ると山頂まで僅かである。
 山頂到着4時55分。更なる強風に晒されるが天空は満天の星空。東の空は僅ながら朱色に染まり今日の幕明けが始まろうとしている。遠く丹沢方面に雲海が見られるが、それ以外は何処にも見当たらない。富士山はハッキリ形が確認出来ないが、朧気ながら外郭が黒い姿で見られる。確認のためデジタルカメラで撮ってみると何と雲を被った富士山が写し出された。
 今日の日の出は6時37分(東京)。立春を過ぎ少しずつ時間が早くなっている。同時に明るくなる時間がそれ以上に早まっていることは確かであり、春が近づいていることが実感できる。東の空には水平線に沿って黒い雲が重なり、朝日の差す時間は遅れると思われたが、日の出の5分程前に富士山上空の雲が色を帯びてきた。見る見るうちに上空の雲は綺麗な朝焼けとなったが、富士山山頂は雲の中。残念ながら紅富士を見る事は出来なかった。
 時間が経過しても雲は終始山頂から離れようとしない。これ以上風の強い山頂に居座っても富士山頂の雲は取れないと判断し9時に下山を始める。
 今日は山頂で1人の男性登山者と出会ったが、下山途中、誰とも出会うことはなかった。駐車場には10時20分に戻る。
 今回、予想に反し気温が高いうえ強風が吹き荒れた。富士山も荒れ模様。山頂を被った雲は形を変えながら終始居座り続けた。



今日の富士山

 今日は富士山頂には雲が居座り山頂を見ることが出来なかった。太陽は終始顔を見せていたが富士山頂は荒れ模様の状況が見て取れた。それでも日の出時間帯に上空の雲が綺麗に朝焼けたのは印象に残った。

暗い内にバルブで撮影したが
既に雲に被われていた
5:45頃
黒い雲も掛かり山頂は
荒れている模様      6:15頃
日の出時間帯の朝焼け
  6:40頃
雲が取れそうであるが
しぶとく居座る    7:45頃



山頂及び登山道の状況

 登山道は良く整備されていて危険な箇所は見当たらない。十二景の山の中でも訪れる登山者が多いことが頷ける。鳥沢駅を起点に登山口までバスの運行も有り、気軽に登れる山である。山頂も広く富士山の眺めは最高である。              

以下、下山時に撮影した写真を山頂から下山口まで時間を追って並べてある

扇山山頂  9:05頃
山頂付近の残雪      9:05頃
百蔵山と鳥沢駅への分岐点
9:10頃
分岐点から百蔵山への
登山道 9:10頃


つづら折りの登山道   9:20頃
ツツジ群生地への分岐点
  9:30頃
望地からの富士山 9:30頃
水場近くの祠       9:45頃


中腹の水場       9:50頃
1部石が転がっている箇所あり
9:50頃
杉林の中を行く(登山口近く)
10:10頃
梨ノ木平駐車場
(登山道入口 )10:15頃



                                使用カメラ(デジタル):・OLYMPUS E-M1    ・CANON SX610SH





1月16日 清八山

 笹子方面の登山口から降雪直後、清八山に登るのは体力的にかなりハードである。一昨年2月に山頂を目指したが40cm超えの積雪だったため予定を2時間遅れ、山頂に着いたときは陽が高く8時30分を回っていた。この日の積雪は清八峠付近で股下ぐらいまであり、10m進むのに5分程の時間を要した。山頂を直前に、清八峠〜山頂まで雪が無ければ10分弱の所要時間であるが、この時は何と40分も掛かった。
 今月8日に降った雪も大量で、積雪は一昨年と変わらない状況と考えられた。今回は一昨年の二の足を踏まないよう笹子側からは登らず、三ツ峠登山口から入山する計画を立てた。三ツ峠登山口から入山するコースは初めてということもあり、知り合いの山岳写真家に案内をお願いした。
 三ツ峠の登山口には40cm程の積雪が有り予想を超えていた。この積雪では山頂を目指すのは難しいと思われたが、しっかりしたトレースが確認出来たためこれなら行けると判断した。しかし、トレースが途中で切れていた場合、状況によってはそこで引き返そうということになった。三ツ峠側から入るコースは清八林道を終点まで歩きこれより登山道に入る。ここからは清八山への稜線に出て山頂に向かう登山コースとなるが、冬期以外は林道のゲートは解放され終点まで車の進入は可能である。冬期以外の林道解放時は林道終点から登ることが可能で、実質上の登山道入口である。無雪の場合、登山道入口から30分程で山頂に立つことが出来るようである。
 午前3時30分、三ツ峠登山口を出発。清八林道のゲートを抜け、三ツ峠とは反対方向に幅の広い林道を清八山に向かう。トレースがついているためそれ程足は潜らず比較的楽に歩くことが出来る。林道の傾斜は緩く順調に歩行を進められるが、徐々に積雪は増え、足への負担が増してくる。トレースがなかったらラッセルを強いられ恐らく途中ギブアップとなっていたと思われるが、幸いにも3人〜4人のトレースは少なくとも清八山までは連続していると思われた。南西の空には月齢18日の月明かりが雪に反射し辺りを明るく照らしている。月明かりは夜道を歩く人の不安を解消してくれる強い味方である。
 林道終点に着いたのは5時20分。林道を2時間弱歩いたことになるが、正直、雪の有る林道歩きは予想以上に長く感じた。
 これより登山道に入るが、トレースはそのまま清八山に向かっている。これで何とか山頂には立てそうである。登山道に入り積雪は更に増し、トレースはあってもやはり雪道は体力を消耗する。徐々に傾斜はきつくなり、山頂直下の急な岩場でついに立ち往生。足場は悪く以前痛めた腰が痛み、山頂まで後一歩のところを登り切れない。先に山頂に着いた知り合いに引き上げて貰う始末。本当に情けない。
 6時到着。天空は既に明るみを帯びている。東の空は色付きを見せ、今日の幕明けが始まろうとしている。日ノ出時間は6時50分(東京)。周辺に雲は殆ど見られないが、南アルプスや八ヶ岳などの高い山には灰色の雪雲がかかり、富士山山頂にも雲が渦巻き、強風で荒れている様子が窺える。
 今日は抜けるような晴天ながらも風が強く気温−13℃、体感温度はそれを5℃程下回る。日の出時間には山頂に掛かる雲は朝焼けに染まるが、やや不足感がある。終始山頂に雲が掛かりドラマティックな情景は期待できず、9時10分、山頂を後にする。
 三ツ峠登山口駐車場には10時40分到着。下りは1時間30分の所要時間となった。登りに比べ1時間の差があった。今回初めて三ツ峠側から登ったコースであるが、笹子から入るよりも所要時間の短縮が図られた。しかし、この結果は林道、登山道ともトレースされていたためである。トレースが無ければ恐らく2倍近い時間が掛かったと思われる。やはり積雪40cm超えの場合、笹子側、三ツ峠側共に最低限5時間の所要時間を見込む必要があると思われる。


今日の富士山

 山頂に掛かる雲がなかなか取れず満足な情景に出会えなかったが、抜けの良い富士山が見られただけでも山頂に登った甲斐があった。

朝焼け富士(日の出時間帯)         6:50頃    
山頂の松の間から(積雪は60cm位)     8:20頃



登山道と雪の状況

 積雪量は40cm〜60cm。今月8日に降った雪と思われるが気温の低い日が続いたため積雪に変化が無かったように思われる。雪の質は水分を含みやや重い感じがする。トレースは3〜4人の登山グループでラッセルしたと思われる。三ツ峠には写真家が多く訪れると思われるが、清八山に訪れる人は少ないと思われる。大雪の時に笹子側から入るか三ツ峠側から入るか迷うところである。  

山頂直下の登山道(積雪は
60cm超え)      9:15頃  
清八山山頂(松の木の
あるところ)      9:20頃
清八山登山道の
案内標柱      9:30頃  
清八林道終点の登山道への
案内標柱    9:40頃


林道の終点(登山道入口)
9:40頃    
雪面は凍結している
10:30頃
清八林道のゲート  
          10:40頃    
御坂トンネル入口付近で
見掛けたニホンカモシカ    



  
行程:三ツ峠駐車場(午前3:30発)→清八林道終点(5:20)→清八山(6:00着〜9:10発)
                                        →林道終点(9:40頃)→三ツ峠駐車場(10:40着)

                                     使用カメラ:OLMPUS E-M1  ・CANON SX610HS





1月10日 百蔵山

 今月8日の降雪は関東甲信地方の広域に及んだ。富岳十二景の山はすべて雪景色と富士山が見られる状況となり撮影する山を選ぶのも中々難しい。今シーズン初めての雪山に登ることになるが、積雪情報が得られないこともあって、深い雪の場合でも無難に登れそうな百蔵山から富士山を狙うことにした。
 本来であれば降雪の次の日が撮影条件的に相応しいが、午前中は雪マークと曇りの予報で富士山が望めない可能性も有り、天気が回復する次の日に訪れることにした。
 降雪後は交通に混乱を来し、予定時間に到着出来ないことが過去に々あった。今回は同行者1人と午前3時に駐車場で待ち合わせのため余裕を持って自宅を出発した。ところが雪による混乱はなく、西コース登山口の駐車場には午前2時に到着した。途中、積雪が確認出来たのは大月市内に入ってからである。百蔵浄水場辺りまでは道路に雪はなかったが、それ以降は15cm程の積雪が道路にあり、普通乗用車では進入が難しい状況がありそうである。同行者の乗用車も15cmの積雪はクリヤーしたらしく早めに到着した。
 登山準備が整い2時45分、登山口を出発。気温は高めであるが風が強く寒さが身に染みる。今日の月は十三夜(満月の2日前)で木立の間から月明かりが漏れ雪面を明るく照らしている。登山道は林間を行くため積雪は思いの外少なく、アイゼンを着けずに登る。
 途中の休憩所から富士山が見えていることを確認。葛野部落への分岐点となる稜線には3時50分に到着。風は更に強さを増し、掻いた汗は直ちに冷やされ体が温まることはない。
 山頂到着は4時10分。山頂には15cm位の積雪がある。十三夜の月は西に沈んだのだろうか何処にも見当たらない。気温は0℃と高めであるが強風で寒さは半端ではない。天空は満天の星空。風が強いため空気は澄み切っている。個人差はあるが4等星ぐらいまでは見えていると思われる。富士山と星の軌跡をデジタルカメラのライブコンポジット機能を使い撮ることにした。
 日の出時間が近づくにつれ東の空のオレンジ色が濃くなり、今日の幕開けが始まろうとしている。日の出時間は6時51分(東京)。東に雲はなく時間通り日の出を迎えられそうである。朝焼けに期待したが富士山は薄いピンクに染まった程度で物足りなさを感じる。今日は全く雲がなく完全ピーカン状態。この変化のない状況を写真にするのは難しい。これ以上山頂に居ても状況に変化はないと思われ、7時40分山頂を後にした。


今日の富士山

  早朝から風が強かったが、その分空気は澄み渡り満天の星空はクリヤーで素晴らしかった。

富士山と星の軌跡(ライブコンポジットで撮影)  5:05頃  
日ノ出時間の富士山(朝焼けは殆どなかった)   6:55頃  



山頂と登山道の様子

 積雪は山頂が最も多く15cmぐらい。登山道は少なくアイゼンは必要としなかった。湿気の多い雪質で凍結はない


山頂の様子     7:40頃    
東西に長い山頂には
15cmの積雪   7:40頃
登山口と葛野部落への
分岐点  7:55頃  

中腹の休憩所        8:15頃


 狭い登山道(右側は深く
落ちている)     8:40頃    

登山口近くの水場    8:40頃




                               使用カメラ:・OLYMPUS E-M1   ・CANON SX610HS