2018年撮影紀行(その2)




3月10日 奈良倉山

 前日と前々日に降雨があり大地に湿り気が与えられ雲海発生のチャンスが訪れた。当日のピンポイント予報で大月は未明から晴のマークが付いていた。風も殆どなく雲海発生の条件が整っていると考えられた。季節の変わり目は雲海発生する確率が高く、富士山と雲海を撮影する山の選択は重要である。雲海トップの位置の高さによって、標高が高い山低い山を選ぶ必要があるため、それを決める要素としては降水量の多い少ないによって決まってくる。降水量が多いと水蒸気の量も多く、高く上昇することが考えられる。今回の降水量は比較的多かった点を考慮すると、高い山の方が雲海に飲みこまれることは少なく良い情景に出会える可能性が高い。今回、標高1500m以上の山であれば問題ないと考えられるが、冬期閉鎖中の林道もあり北の方の山では登る時間と体力を多く要することになる。現在の自分の体調、体力に合わせると標高1500mに満たないが、奈良倉山から狙うのが適切と考えられた。
 自宅を午前1時半に出発したが、やや雨足のある雨が降っていた。予報通りであれば止んでいなければならないところであるが、目的地はどのような状況なのだろうか。いつも通り青梅街道経由で鶴峠に向かうかことにした。松姫峠への道路は現在冬期閉鎖中であり、山頂へは鶴峠から登ることになる。途中、奥多摩湖付近から雨が雪に変わっていた。
 鶴峠に3時10分に到着したが、雪の降り方はやや強く、昨日から降った雪が積雪を増しているようである。登山口でこの状態だと山頂ではある程度の積雪が予想された。気温が高く雪の凍結はないが、安全を考えアイゼンを持参することにした。
 3時40分、登山口を出発。積雪はそれ程多くはなく、アイゼンを装着する必要は今の所なさそうである。小菅村は林業が盛んで地図にはない林道が一帯に張りめぐらされている。暫くその林道を行くが、途中で林道が途絶えていた。林道から登山道へ入らなければならないがその入口を見失ったようである。積雪で入口箇所が分かりにくくなっていたためである。登って来た道を戻り、登り直すのは肉体的、精神的にもダメージを受ける。ロスタイム30分程度で良かった。気を取り直し山頂目指す。
 途中、松姫峠からの登山道に合流するが、暫く南に進むと東側(左側)が日の出の準備でオレンジ色に染まり東方面の山並みがシルエットで目に入る。今日は直感的に素晴らしい情景に出会えると思った。ロスタイムしたことにより日の出時間(東京6時00分)が間近に迫り、焦りを覚えた。ピッチを上げようとするが体力的に限界で思うように捗らない。山頂到着5時50分、何とか日の出時間にギリギリ間に合ったが、富士山の姿が何処にもない。期待した雲海は発生していたのの主役不在では写真にならない。天候回復が遅れているのだろうか、天気予報と合致しない状況である。未だ僅かながら雪が降り続いている。気温は−1℃と冷え込みはない。雲海の動きも刻々と変化し何れ富士山が姿を現すだろうと思い待機することにした。
 雲海の高さは比較的低く、発達しても標高1349mの奈良倉山が飲み込まれる事はないと思われた。暫く前衛の山並みが見え隠れしていたが、9時を過ぎた頃から雲海や山並みが白一色に変わった。山頂が一時霧に被われたようである。暫くこのような状態が続き、回復はないと思われたが10時まで希望を繋いだ。しかし、状況に変化はなく、10時15分山頂を後にする。
 今回は残念ながら主役不在で撮影することが出来なかった。撮影者の立場から富士山が姿を現して欲しい気持ちは強いが、天気予報が外れそれが原因と考えるのは撮影者の思い違いである。登山口には11時40分に到着。未だ雪がパラ付いていた。



登山道と山頂の様子

 山頂付近の積雪は5cm程と少ないが、気温が高く雪に湿気が多く、少し歩いただけで靴底にくっつき団子状態になり大変歩きにくい。時々靴底の雪を落とさないと歩行困難となる。中腹まで下山すると積雪は殆どなくなり通常の歩行で問題なくなった。
 山頂の樹木には昨晩降った雪が付着している。このような状態は風が強かったことが窺える。下山時に三頭山方面を展望するが山頂付近は雲に被われていた。


山頂の状況

強風で樹木の側面に貼り付いた雪
同 左    
重い雪で枝が垂れ下がっている


山頂には多くの方向を示す
案内標が見られる
同左



以下、下山時に撮影したもので時間を追って配置してある。

下山時の山頂(ガスが漂っている)
10:25頃    
山頂直下の下山道    10:30頃
鶴峠への案内標       10:35頃


松姫峠への分岐点     10:40頃  
所々に設置された鶴峠への案内標
10:40頃
中腹を過ぎた頃     11:00頃


中腹以降の積雪はなくなった 10:05頃    
登山口に近づくと案内標が多い11:10頃
同左        11:15頃


三頭山方面は霧が漂っている  11:20頃  
JTの森小管の入口  11:30頃
鶴峠バス停      11:40頃


鶴峠の登山口(JTの森小管の看板がある)
11:40頃  
登山口近くの空き地に駐車 11:45頃





                                                                  使用カメラ:   CASIO  EX-ZR62




3月2日 高畑山

 3月に入ったが前日は関東でも春一番が吹き大荒れとなった。ここの所天候不順からか富士山を撮るチャンスは中々訪れないが、大荒れ天気の次の日は特別な情景に出会える可能性があると思われ期待を込めて撮影に出掛けることにした。当日の天気は晴で風が強く気温は高いという予報であった。風が強いと雲海が発生することは皆無と云って良いが、願わくは動きのある雲が出てくれればと思う。
 今回も来年のカレンダー作りの一環として、何月は何処の山にするか計画し、それに基づき行動しているが、撮影が上手く行かない場合もあり、今年1月末に訪れた高畑山から、再度撮影することにした。高畑山は前面が杉林になっていて、視界が妨げられ撮影しづらい山と云っても良い。この様な状況から秀麗富岳十二景を狙うカメラマンには敬遠されがちである。しかし、高畑山から見る富士山は左右の均整が取れ、撮影が制限されながらも前衛の山並みも素晴らしく個人的には好きな山である。秀麗富岳十二景写真コンテストに始めて応募した第13回は選に漏れたが次の年の第14回のコンテストでは高畑山からの写真が初入賞した。自分では駄目と思っていた写真が入賞したのは意外だったが、それ以来高畑山から撮影する機会が多くなった。何度か通う内に高畑山からの富士山の魅力や美しさを知ることになる。不人気の理由となっている視界の問題は、杉林の木を多少伐ることにより解決出来る。しかし、私有地の場合、保障問題など難しい面も発生するが、視界の広がりにより更なる美しい富士山を望むことが出来るようになり、登山者の増加も見込める。また、富士山撮影に於いても大写しに頼ることなく、構図に自由性が生じ更なる素晴らしい作品が生まれることにつながり、カメラマンの不人気も解消される。
 今回も登山口は時間短縮できる秋山無生野から入山することにした。この登山口へのアクセスは車以外、バスを利用することになるため交通の便が悪く、無生野から入山する登山者が少ないのもこれらの理由によるものと思われる。登山者が少ないことから登山口から穴路峠まで登山道はやや荒れ気味で分かりにくい箇所もある。今までにこの登山口から40回程利用しているが登山者と出会ったのはたったの1度だけである。他に交通の便が良い大月側からの登山口もあり、こちらからのコースを利用する人が多いと思われる。
 上野原ICで高速を降り県道35号線で無生野から北に向かう林道に入り間もなくすると、道路の真ん中に大きな落石があり先に進むことが出来ない状況に出会った。車を降り落石を除けようとするが、押してもビクともしない。丸太でもあればと思い付近の林を探したが適当なものが見付からない。20cmほど動かせば何とか通ることが出来そうであるが、転がすことは不可能でも僅かであればずらすことは出来そうである。押してみたが舗装された路面との摩擦で動かない。方向を変えて押してみるとある方向に僅かながら動くことが分かった。渾身の力で押すが10cm程左方向に動いただけでこれ以上はどうにもならない。落石の右側を車幅一杯であるが右の林に車を突っ込めば何とか通れそうである。車の側面は車のランプでは照らすことが出来ず勘を頼りに通り抜けるしかない。右側の林に思いっきり突っ込み、車の左側面を擦らずに何とか通り抜けることが出来た。
 毎回であるが無生野の登山口には午前3時に到着。昨日の天候の続きなのか強風で木の間を通り抜ける風音が騒がしい。寒さはなく気温は高めで強風の状況下において富士山はどのような姿を見せてくれるのだろうか。3時半無生野の登山口を出発。穴路沢は水量が多く、時折深いところに足を突っ込みバランスを崩すこともあるが転倒したらズブ濡れ間違いない。夏場であれば気持ち良いで済むが、低い気温下では風邪を引くのが落ちである。水量のある沢を離れると水のない沢に分岐するが、倒木が道を塞いだり、杉の枝か散乱したり、道が分かりにくく登山道は荒れた状態である。ピンク色のテープ(道標)をヘッドランプで確認しながら先に進む。
 暫くすると穴路峠に到着。ここは風の通り道で更なる強風に晒される。穴路峠は尾根の鞍部で高畑山、猿橋町小篠、倉岳山への分岐点になっている。高畑山へ向かう尾根道はハッキリしていて暗くても道を外すことはない。西に向かう尾根道の先には今日満月を迎える大きな月が木々の合間から顔を出す。明るい満月は夜道を歩く人の助けとなってくれて心強い。
 山頂到着は5時10分。既に東の空は明るみを帯びている。日の出時間は3月に入ってから大分早まり、今日は6時10分(東京)に陽が昇る。相変わらず風は強く木の間を通り抜ける風音がうるさい。眼下はゴルフ場であるが、山頂との間は杉が植林され年々生長し富士山方向の視界が大分狭められている。その狭められた先には暗いながらも満月の明かりで富士山の姿がハッキリ確認できる。今日はカメラに富士山を収めることが出来そうである。
 撮影の準備を始めるが強風で三脚が倒れそうである。山頂には重りになる小岩石が沢山あるため三脚に取り付けるストーンバックに詰め込み安定させるが微震動は免れそうもない。日の出時間が近づき富士山頂に朝陽が差し込む。僅かながら色づきを見せたが感動する程のものでない。今日は強風のためか空気が澄んでいるようで、鮮明な富士山を見ることは出来るがピーカン状態と云っても良い。時折、筋雲が出るが画像に大きな変化はもたらさない。強風も時間と共に収まりつつあるが、これ以上の変化は期待できず、8時40分、山頂を後にした。
 無生野登山口到着は丁度10時。強風もだいぶ治まり気温も上昇。春らしい気候となった。


今日の富士山

 今日は空気が澄み渡り、久々に鮮明な富士山が見られた。また、富士山の雪も大分厚さを増し、初春に相応しい姿となった。

日の出時間帯の富士山(少しピンクに染まった)
6:20頃  
雲が出て画面に多少変化を与えた       6:50頃



山頂及び登山道の状況

以下写真は下山時に撮影したもので時間を追って並べてある。 

山頂の様子(下山開始)  8:35頃  
杉が生長し視界が狭まっている
8:40頃
杉林に囲まれた山頂直下の下山道
8:40頃

 高畑山中腹の急斜面   8:45頃    
木々の間から見える倉岳山
8:50頃
明るく広い尾根道    8:55頃

日影となった斜面に残る雪  
9:00頃      
天神山山頂        9:10頃
天神山からの大月市内俯瞰  
9:10頃

天神山からの展望      9:15頃  
穴路峠(右側へ倉岳山)  9:20頃
穴路峠からの下山道   9:20頃


杉林の中を行く登山道  9:30頃    
水量の多い穴路沢    9:50頃
無生野登山口(林道終点)
10:00頃




                                                                                                     使用カメラ: OLYMPUS  E-M1      CASIO  EX-ZR62





2月23日 百蔵山

 前日は都心でも僅かながら雪が降り、大地に湿り気がもたらされた。降水量は全般に少なかったようだが大月市の山も雪で白くなっていると予測された。湿り気は雲海発生の必要条件であるが、雲海発生があるかどうか、降水量不足が考えられ微妙な状況である。一方、富士山が姿を現すかどうかは天気予報で予測できるが、tenki-jpの予報では当日午前4時から晴れマークがついていた。予報通りだと富士山は姿を現す可能性は高いが、天気の回復が遅れると撮影ができなくなる。このような状況から出掛けるかどうかの判断に迷うが、天候の回復は読みづらく、富士山を撮影出来るかどうかの確率は五分五分と考えられた。出掛けなければ撮影は出来ず、後悔はしたくないという気持ちを考えると行動が先だとの判断に至る。今回は雲海発生の確率が高い百蔵山から富士山を狙うことにした。
 午前3時、百蔵山の駐車場に到着。風はなく、天空を仰ぐと星の瞬きが確認出来る。天気予報の晴れマークは的中したと思われた。これで富士山は姿を現す可能性は高いと判断出来るが、雲海の発生は湿度が低いと可能性は少ないと考えられた。雲海発生はなくとも。ともあれ富士山の姿は撮影出来ると確信した。
 登山口出発は3時40分。登山道とその周辺は昨日降った雪が地面を白く染めている。降雪量は少なかったようで積もるほどのものでないが、それでも標高が上がるにつれ雪の白さが増し、百蔵山の尾根では数センチの積雪となっていた。中腹の富士山展望所からは富士山を確認することが出来なかった。
 山頂には5時10分着。細長い山頂は雪で全面白くなっている。登山口で見えていた星空も雲に被われ星を見ることが出来ない。富士山も雲の中に姿を隠し、厚い雲に被われた曇り空の天気である。予報に反し、天気の回復が遅れているようである。気温はマイナス4℃とそれ程冷え込んでいないが、眼下の街灯りがクリヤーに見えていることから雲海発生は今の所考えられない。いつも持参しているデジタル計測器の湿度計が数値を示していない。故障かと思われたが、表示限界値だった可能性がある。
 日の出時間過ぎてもどんよりした曇が天空を被い回復の兆しは全くない。スマートフォンで富士山のライブカメラを見るが、富士山は雲に隠れ姿を現していない。暫く待機するが、天候回復までは暫く時間が掛かりそうである。8時、撮影を諦め下山することにした。登山口の駐車場には9時15分到着。下山時に誰とも出会うことはなかったが、駐車場で帰り支度をしていると下の方から熊除けの鈴の音が聞こえてきた。
 今日は残念ながら天気の回復が遅れ富士山をカメラに収めることが出来なかった。天気の読みが甘かったようである。



山頂および登山道の状況

以下写真は下山時に撮影したもので時間を追って配置してある。

登山道及び山頂は昨日の降雪で白く染まっていた。積るほどの雪ではなく降雪量が少なかったと見られる。

山頂の様子         8:00頃  
細長い山頂は雪で染まっていた
8:00頃
山頂から続く尾根道    8:00頃


葛野部落と登山口への分岐点
8:20頃    
分岐点からの下山道     8:20頃
富士山展望所の分岐標    8:35頃


富士山展望所        8:35頃    
薄日が差してきた     8:35頃
雪が段々薄くなってきた  8:50頃


水場            9:05頃      
登山者カード提出箱     9:10頃
駐車場                9:15頃



                                                     使用カメラ:・CASIO  EX-ZR62