2018年撮影紀行(その1)




2月3日 扇山

 1日の夜半から雨が雪に変わり大雪が降るのは困りものだが、天気予報では降水量はあまり多くないと報道されていた。やはり雪景色を撮るには雪の降った次の日でないとその情景が雪景色にならない可能性が有る。降水量はあまり多くないという予報に市内近辺の山であれば、登山道の積雪量も登山に難儀するほどではなく交通渋滞に嵌まることもないと考えられ3日未明に出掛けることにした。
 当日は気象情報から予測すると雲海の発生が考えられた。雲海及び雪景色を撮るには市内近くの山では百蔵山、高川山、扇山が適地と考えられるが、前面の樹木に着いた雪を富士山に配置するには扇山が最も条件に合致すると思われた。そんな情景を思い浮かべ当山を訪れることにした。
 上野原で高速を降り国道20号に入ると道路は完全に除雪されていた。国道から大月カントリーに向かう道路もゴルフ場の東側通用門まで除雪されていたが、梨ノ木平へ向かう道路の除雪はされてなく、進入防止柵が置かれ通れないようになっていた。積雪は15cm程度でジムニーなら難無く走破出来る。防止柵を車の通れる幅にずらし進入した。6年前、この道路で25cmの積雪があった時、車は腹を擦りながら梨ノ木平の駐車場に到着したことがある。今回の積雪は10cm程少なく楽勝だと思い進入した。
  梨ノ木平の駐車場には午前3時に到着。風はなく寒さは感じない。所々星の瞬きが見えるが、雲が多いようだ。西の空には満月から2日過ぎた立待月が西の空に朧気ながら顔を覗かせている。今日の予報は曇りのち晴の天候で、朝のうちは雲の多い状況と思われる。富士山が姿を見せてくれると良いのだが、少なくとも富士山が撮れれば御の字である。登山口付近の積雪は15cm位で、アイゼンの装着に迷ったが、気温が高めのため凍結はないと思われた。しかし、標高の上がった山頂付近では凍結の恐れもあり最初から装着して登ることにした。
 午前3時30分梨ノ木平登山口を出発。湿気の多い雪質でやや重い感じはするが、積雪は多くないためそれ程足への負担はない。それよりアイゼンを着けると歩きにくく、外すのも面倒なため着けたまま歩くことにした。やはり少ない雪でも無雪の登山道を歩くのとは異なり思った以上に時間が掛かる。そろそろ大きなドラム缶の置いてある水場に到着するはずであるが、多く時間を見積もってもその場所に到着しない。その内急峻な斜面が目の前に立ちはだかり、登山道を外したことに気が付く。雪道の場合元に戻るのは容易だが、急な雪の斜面を下るのは大変である。この時はアイゼンを着けていて良かったと思った。本来の登山道から外れ西側の谷に入り込んでしまったらしい。この付近は大雨の時に倒木が流れ着いたらしくその流木が縦横矛盾に散乱していたため登山道らしき道が見当たらず、勘を頼りに歩かざるを得ない状況にあり、それが裏目に出たようだ。コースアウトによりロスタイムに30分費やした、それでも山頂には6時頃に到着する予定である。
 ツツジ群生地の分岐点には5時30分に到着。予定時間はロスタイム分上回っている状況である。この付近は今まで歩いてきた登山道の積雪より標高が上がった分10cmほど増加している。ここは富士山の展望所となっているが、その方向を覗いても暗いためか富士山の姿は確認出来ない。これより、つづら折れの登山道が百蔵山からの尾根取り付まで続く。雪道はやはり足が重い。  
 百蔵山からの尾根分岐点に6時10分到着。無雪であればこれより山頂まで10分程度であるが、尾根には積雪が40cm〜50cmあり深いところは膝辺りまで足が潜る。これでは日の出6時40分までに間に合わない可能性がある。一歩踏み出した足は潜り、それを引き抜く動作は左右の足で行われ、労力を多く費やす。一歩一歩時間を掛けて進むしか方法はない。
 山頂到着6時40分。丁度日ノ出時間であるが、東側には雲が多く朝日は富士山に届いていない。富士山頂には形の悪い雲が貼り付き、直ぐには取れそうもない状況である。雲海も発生していて山頂の変な雲が除かれればすばらしい情景になり得るが、この状態では撮影意欲が湧いてこない。チャンスが来るまで待つことにした。曇が多く時折雲の間から光が差す程度で撮影にはやや光不足である。
 暫く待つも形の悪い変な雲は山頂に居座り続けている。これ以上変化はないと判断し下山することにした。間もなく富士山は雲の中に姿を消した。今回は山頂に掛かった形の悪い雲が居座り雲海が発生したにも係わらず良い写真が撮れなかったのは残念だったが、自然現象のため仕方がないと受け止め、次回に期待したい。
 下山開始は10時20分。登山口には11時55分に到着。今日は土曜日とあって登山者も多かった。9時半頃山頂に1人の男性が登って来た。それ以外は下山時に登山道で出会った人達で 都合10人である。男女とも若い人が多かったようである。


今日の富士山

  雲海の発生した好条件となったが、山頂に貼り付いた形の悪い雲は残念ながら絵になる情景にはならなかった。また、光りの不足と空気中の水蒸気が多く全体的に鮮明さに欠けていた。

形の悪い雲が山頂に終始貼り付いていた     7:00頃  
雲は山頂付近で形を変えていた    7:40頃



山頂の雪景色

山頂の木々には雪が付き雪後の情景は
印象的だ       7:00頃  
十二景の看板にも雪が積もり氷柱も
出来ていた         8:05頃


広い山頂も40cmの積雪            9:35頃    
大月市内上空には雲が点在         9:35頃



登山道の状況

 降雪の翌日で未だ足跡のない真っさらな雪道を歩いた。ヘッドランプの灯りで別次元という感じで誰もいない道は自分1人のもののようで優越感を得た気持ちになる。
 扇山はトレースが無くても登山道は確認しやすい。積雪は登山口から水場まで10cm〜15cm、ツツジ群生地分岐の所で15cm〜20cm、尾根から山頂まで40cm〜50cm、山頂は40cm位の積雪だった。
 50cmの積雪となると登山靴の厚さを含めても膝下5cm位の所が雪面で一歩踏み出すにはその高さまで足を持ち上げなければならず想像以上の労力を要する。トレースがあるとその労力は半分ほどに軽減される。
 雪質は湿気が多く山頂まで凍結はなかった。斜面も比較的緩く今回の雪ではアイゼンは必要としない状況であった。
 暫く山頂に待機していたため下山時刻が10時を過ぎていた。このため、樹木に積もった雪が解けて、雨のように降り注ぎ衣服が大分濡れた。

以下写真は下山時に撮影したもので時間を追って配置してある。

山頂の山名板と山梨百名山の標柱 10:20頃  
山頂直下の登山道    10:30頃
尾根道の積雪は40cm位 10:30頃


百蔵山への分岐点      10:40頃    
百蔵山方面の登山道を望む 10:40頃
尾根道から外れた登山道  10:45頃


ツツジ群生地への分岐点   11:00頃  
展望所から(富士山は雲の中)11:00頃
展望所から登山口へ向かう登山道11:00頃


水場近くの祠        11:20頃  
登山口近くは積雪15cm位 11:45頃
梨ノ木平駐車場(他に車はない)11:55頃



                                                               使用カメラ: ・OLYMPUS E-M1   ・ CASIO EXILIM EX-ZR62





1月26日 百蔵山

 東京では今週初めに降った雪が20cm以上積もり、いつものように交通麻痺が発生した。雪の止んだ次の日(24日)には撮影に出掛けようと考えていたが、以前、交通渋滞により目的地に到着出来ないことが数回あった。今回はその二の舞を演じないよう、2日遅れで百蔵山から雪景色を狙うことにした。体調が良ければ牛奥ノ雁ヶ腹摺山や大藏高丸など北の方の山から雪景色を撮りたかったが、現在の体調では50cm以上積もった山に登るのは到底無理と思い比較的楽に登れる百蔵山を訪れることにした。
 百蔵山の駐車場には午前3時10分に到着。大月の積雪は思ったよりは少なく百蔵浄水場までは除雪されていた。この先の駐車場までも5cm〜10cmの積雪で難無く到着することができた。車から外に出ると風が強く相当冷え込んでいる様子が窺える。天気は良いはずであるが、何故か星空を望むことが出来ない。駐車場には10cm程の積雪があり登山道にも同程度の雪があると考えられた。
 登山準備の際、アイゼンの装着に迷ったが、気温が低く更に標高が高くなるにつれ雪が凍結している可能性があるため、安全をみてアイゼンを装着することにした。アイゼンは1年ぶりの使用となるが、久々のため登山靴に取り付ける固定バンドの取り回しが上手く行かず思いの外、準備に時間が掛かった。
 登山口を4時に出発。冷え込みが強く風も強いため運動量の割には身体が温まらない。途中、登山道に小さな岩が散乱したところがあるが、10cmほどの雪に被われ、その上ヘッドランプの灯りでは岩の存在がわかりにくく、予期せぬ状態でアイゼンの刃がそれを踏みバランスを崩すことがある。今の所雪の凍結はなく、アイゼンがなくても滑ることは無いが、取り外すのも面倒なため付けたまま歩くことにした。
 中腹の富士山展望所には4時50分に到着。暗いながらも富士山の輪郭が確認出来る。ここまで来ると空気が澄んでいるようで星の瞬きがよく分かる。雲は殆ど無く今日も晴天の1日になりそうである。
 暫く登ると葛野部落への分岐点に到着する。ここは百蔵山の稜線に取り付くところで風当たりが強く寒さが一層厳しい。ここからは展望が良く街灯りが鮮明に浮かび上がり、思った以上に近くに見える。
 山頂に向かう稜線に入ると雪の量が一気に増す。30cm程の積雪であるが雪の凍結はない。ところが歩くにも雪の抵抗を感じ運動量が倍近くに増加した感じがする。
 山頂到着は5時50分。相変わらず強い風で気温を見るとマイナス9℃と厳しい寒さである。東の空は既にオレンジ色に染まり、今日の幕開けの準備をしている。雲は殆ど見当たらず、快晴の1日になること間違い無しである。日の出時間に紅富士が見られれば最高であるが、この強い風では難しいかも知れない。6時30分の気温はマイナス10℃と今冬最低の気温を体験することになる。強い風のため体感温度は5℃程低いと思われる。水筒の水は凍り、朝食のパンに挟んであるフィッシュフライもコチコチに凍り噛みくだくのが容易でない。陽が差し気温が上昇してからの食事で良いと思われるが、”腹が減っては戦ができぬ”と云った心境で、体力温存のため早めに朝食をとることにした。強い風は暫く落ち着きそうもない感じである。
 東京の日の出時間は6時45分。その時間になるも朝焼けは殆ど無く平凡な富士山となった。しかし、周辺の山々は雪を被り、寒さの厳しい冬の情景が目前に展開されている。キリッと引き締まった富士山。何と神々しい姿、まさにこれぞ冬富士だ!!! この情景はしっかりカメラに収めた。
 9時30分、山頂を後に下山を始める。登山口に戻ったのは10時55分。今日は登山道で誰とも出会うことはなかったが、帰り支度をしていると1台の大きな車が駐車場に入ってきた。車からは男女5人の中高年登山者が降りて登山準備を始めた。挨拶をすると雪の状態を聞かれ状況を話した。アイゼンを着けるか躊躇しているようだったが、着けなくても危険は無いと云ったら着けずに出発していった。 今日は真っ白な神々しい富士山に出会うことができた。雪のたっぷり被った何の飾り気のない富士山は周辺の景色に融け合い、その存在感を大きく示している。

 

今日の富士山

日の出時間(僅かに色付くも紅富士に至らず)  6:50頃  
近隣の山も雪化粧し寒さが伝わってくる     7:00頃


左側の大きく高い山は標高1682mの御正体山                     7:00頃


山頂西側端から前面に草木を配置  7:50頃
山頂から見る富士山の西側前面を俯瞰      8:15頃

周辺の山々も雪化粧し、厳しい寒さの中に
聳える富士山は神々しさに溢れている







山頂と登山道の状況

以下写真は下山時に撮影したもので時間順に並べてある

山頂の様子         9:25頃
広い山頂にはベンチがある 9:30頃
山頂付近の積雪は30cm位 9:35頃

 

山頂からの尾根道      9:45頃
葛野部落への分岐点(尾根取付)
9:50頃
尾根から下る登山道     9:50頃

中腹の富士山展望所    10:05頃
展望所からの富士山    10:10頃
白い雪面に杉の葉が散乱 10:45頃

水場近くの急峻な谷     10:40頃
水場             10:45頃
水場にできた氷のオブジェ  10:45頃

登山口近くの崩落跡    10:50頃    
登山計画書提出ボックス  10:50頃
駐車場(後程1台車が止められる)

10:55頃


                                                                使用カメラ: ・OLYMPUS  E-M1   ・CASIO EXILIM EX-ZR62

     

   

       




1月10日 高畑山

 晴天が暫く続き富士山の雪は例年に比べ少なく、地肌が透けて見えそうなところも見受けられる。一昨日から久々に大地に雨がもたらされ、富士山の雪も厚さを増していると思われる。今回は本来の冬富士が見られると予測し高畑山を訪れることにした。
 高畑山へはいつも通り上野原から秋山経由で無生野の登山口に向かい現地には午前2時50分に到着。無生野の登山口は県道35号線から北に向かう林道に入り、約500m走行すると目的地である。車2台程置けるスペースはあるが、この林道は幅員が狭く途中100mほど未舗装の悪路となり普通乗用車では腹を摺る可能性がある。無生野から入るこのコースは大月側から入るより遥かに距離は短く、山頂への時間短縮ができるためカメラマンにとっては最も有益なコースと云える。
 東の空には半分以上欠けた月が笑っているかのように見える。何かを呼びかけているような表情だが、返す言葉が咄嗟に出てこない。今日の気圧配置は冬型で等圧線の間隔が狭く風の強い日になりそうである。気温はそれほど低くはないが、衣服の中を強い風が通り抜け、厳しい寒さを感じる。この強い風では富士山上空の雲が飛ばされピーカンの可能性は高い。今日の富士山はどのような表情を見せてくれるのだろうか。
  3時20分登山口を出発。暫く岩のゴロゴロした水量の多い沢を歩くが、寒いこの時期に転倒したら大変な事になるのは自明である。ヘッドランプの灯りで沢歩きは心持たない。滑って転倒しないよう肝に銘じつつ先に進むことにする。
 沢音が静かになると沢から離れ山頂に向かう登山道に入る。この付近一帯は杉が植林され林業が盛んに行われている地域である。杉林の中に切られた登山道は杉の枝があちこちに散乱し、登山道にも多くの枝が重なるようにして落ちている。その枝は弓のように曲がり、勢い良く踏みつけると足に絡み付き、歩幅がいきなり制限され躓いて転倒することがある。強く踏み付けず、ゆっくり歩く事で転倒は回避できる。
 穴路峠を4時10分に通過。風の通り道になっていて更なる強風に晒される。これより10分程登ると途中の天神山に到着する。山頂からの展望は良く大月市内の街灯りが浮かび綺麗に俯瞰できる。これから高畑山へ向かう尾根道は若干のアップダウンはあるが緩やかで歩き易い登山道である。
 暫くすると山頂直前の急斜面を迎える。息絶え絶え登り切ると山頂である。時刻は5時00分。1時間40分掛かった計算になる。思いの外時間が掛かったが、体力の低下と共に腰痛もありやむを得ない結果である。
 山頂は風が強く富士山の見える南側直下はゴルフ場でその場内の灯りがポツリ、ポツリと見えるが、肝心の富士山は暗くて見えない。しかし、目を良く凝らすと富士山の輪郭が影のように見えているように錯覚する。期待感が強いがための幻なのだろうか?そこで、状況を把握するため暗い中でもそれを表現してくれるデジタルカメラのライブコンポジット機能を使って撮影してみる。すると真っ白な雪を被った富士山が写し出されているではないか。雲は何処にも見当たらず、いわゆるピーカン状態である。ピーカンの富士山は表現が難しく、撮影がしづらい。こうなると紅富士を狙うしかない。日の出時間は6時51分(東京)それまで暫く時間があり、フィルムカメラで長時間露光撮影を行う。6時の気温は−3℃と強い冷え込みではないが、強風の影響で体感温度は低く気温以下の厳しい寒さを感じる。
 日の出時間には時間通り富士山頂に朝日が入る。しかし、空気に淀みがあるのか光が鈍く思うように赤味が付かない。青空で雲一つ無いピーカン状態。フィルム1本、デジタル20枚ほど撮影し、8時30分下山を始める。今まで倉岳山まで足を延ばし下山していたが、今はその元気はない。登山口到着は10時00分。このコースは今まで数十回歩いているが登山者に出会ったのは10年ほど前にたったの1回きりでそれ以降出会ったことがない。原因は良く分からないが電車やバスの便が少なく、登山口へのアクセスが悪いことが利用者を少なくしていると思われる。



今日の富士山

 昨日一昨日と下界は雨が降ったが、地肌が透けて見えるような富士山の雪も厚さを増し冬富士らしくなった。雲一つ無い晴天、日の出の紅富士を狙ったが光が弱く焼けることはなかった。

日の出時間帯に撮影                              7:50頃



山頂及び登山道の状況

以下写真は下山時に撮影したもので時間順に配置してある

山頂に昨年8月に備えられた札
(熊野修験と表記)  
高畑山山頂              8:25頃      
高畑山山頂からの展望    8:30頃


  山頂にある方向案内標
8:30頃      
山頂直下の下山道       8:30頃  
岩のゴロゴロした山頂直下の
急斜面   8:40頃


畑山からの明るい尾根道
    8:50頃            
天神山山頂              9:05頃
天神山からの大月市内俯瞰
(右奧は百蔵山)9:05


穴路峠(高畑山、倉岳山、鳥沢への
分岐点) 9:10頃          
杉林の中を行く無生野へ向かう
登山道   9:20頃
穴路峠の小楢と表記された天然記
念物の看板 これより右80mと案内
されているが確認出来ず   9:20頃


無生野の登山口(車2台位は止められる)
9:20頃


                              使用カメラ(デジタル): ・OLYMPUS  E-M1   ・CASIO  EX-ZR62