2015年 撮影紀行(その9)



7月14日 百蔵山

 ここの所梅雨の中休みが続いているが、日中は日差しも強く真夏の暑さである。南には台風があり、その影響で風が強く大気が安定していない。このような気象状況の中、富士山上空にも普段見られないような雲が発生し、面白い情景に出会える可能性がある。そんな出会いに期待を寄せ、百蔵山を訪れることにした。
 午前2時20分、西コース登山口に到着。登山口は和田美術館前を通る道路の終点となっていて車5台ほど止められるスペースがある。天空を仰ぐとやや不鮮明ながら星空を望むことが出来る。台風の影響と思われるが風が強く木の葉を揺らした音が響く。強い風は比較的冷たく暑さは感じない。
 2時40分、登山口を出発する、西コースは全般に傾斜は緩やかで距離も短く登りやすい。一方、東コースの傾斜は急でややハードである。今回は同じコースを往復する予定である。
 中腹の休憩所には3時10分に到着。暗い中にも富士山の姿は確認出来る。今日は富士山を何とかカメラに収めることが出来そうである。15分ほどで稜線に出るが、風は一層強く身体が揺らされるほどである。
 山頂には3時50分に到着。東の空は明るみを帯び幕明けの準備が始まっている。山頂からの夜景は街灯りや、道路の美しい曲線を描いた明かりが美しい。また、夏の風物詩といえる富士山登山道の明かりは天と地を結ぶ架け橋のようで、天に向かって伸びている情景は印象的である。
 今日の日の出は4時35分(東京)。1年中で最も早い日ノ出時間より10分ほど現在は遅くなっている。これから冬に向かい徐々に遅くなる。因みに1年中で日の出の遅い時間は6時51分で来年の1月初めである。その時間の差は2時間26分である。
 日ノ出まで暫く時間があるため夜景の撮影を始める。暗くて未だ状況はハッキリ掴めないが、富士山の中腹付近にもくもくと雲が湧いているのが確認出来る。2枚目を撮影する頃には周囲が大分明るくなりバルブ撮影を終了し、通常の撮影に切り替える。
 日ノ出時間を迎えたが、東の雲が朝日を遮り、富士山上空が多少焼けた程度に終わった。面白い雲が道志山系の山にいくつか浮かんでいた。西に少しずつ動きを見せていたが富士山に絡むところまでなかなか移動してこない。近くまで来ると形が変わり、思うような状況にはならない。そのような繰り返しが何度かあったが、面白い情景に出会うことなく撮影を終了した。この頃には強かった風もだいぶ治まり一気に気温が上昇した。 山頂を後に、8時に下山を始める。今日は珍しく、下山時にも、誰1人出会うことはなかった。登山口には9時20分に到着。


今日の富士山

夜明けの情景    4:00頃      
微かに朝焼ける      4:45頃
爽やかに晴れ渡る   7;30頃
夏富士              8;00頃





花の開花状況


クサボケ(白)(バラ科)      山頂に
咲く      

オオバギボウシ(ユリ科)    山頂に
咲く            

キヌタクソウ(アカネ科)     穴地峠
〜登山口間に咲く  

オカトラノオ(サクラソウ科)   穴地峠
〜登山口間に咲く




不明(調査中)                    


ダイコンソウ(バラ科)


オオバジャノヒゲ(ユリ科)






山頂および登山道の様子



山頂の様子   8:00頃        

山頂近くの登山道(松の木に白い布
が 巻かれている    が・・・・ 8:15 頃  


葛野部落への分岐点(稜線への出合
い)  8:25頃

中腹の展望所      8:35頃    







登山口近くの水場     9:10頃

登山口(車5台位止められる) 9:30









                                      使用カメラ: OLYMPUS E−M1    FINEPIX F1000EXR




7月11日 倉岳山

 倉岳山は昨年11月に訪れて以来8ヶ月ぶりである。生長した木が視界を妨げ富士山撮影が制限されていたが、その木も今はある程度伐採され条件は大分良くなった。しかし、伐採は完全なものではなく、状況によって表現が制限される。以前に比べある程度撮影の自由度は高まったが、制限を受けることなく撮影出来れば申し分ないのであるが・・・・・。
 梅雨も中休みと云うことで暫く晴れ間が続くようである。当日のtenki.jpによる予報で午前3時、6時、共に曇りで湿度は90%。その3時間後の9時からは晴れのマークが付いていた。場合によっては日ノ出前に雲海の出る可能性があると思われるが、富士山が姿を見せるかどうかが問題である。  
 午前2時15分、秋山無生野の登山口に到着。今回も穴路峠を経て倉岳山を目指す。状況が良ければその後、高畑山へも立ち寄る予定である。
  2時35分登山口を出発する。倉岳山へは他のコースもいくつかあるが、無生野からのコースは車で林道奥まで進入出来るため最も短時間で山頂を踏むことが出来る。山頂からの撮影チャンスを最大限得るため、このコースを利用することが多い。
 天空を望むと星空は見られず予報通り曇り空である。この付近一帯は林業が盛んで、杉や檜が植林され、天空を仰いでもこれらの木々によって視界は狭まれている。登山道はそれを縫うように敷設され、視界も穴路峠までは得ることが出来ない。
 登山口から間もなくすると水の豊富な穴路沢に沿って行くが、石や岩のゴロゴロした沢の中を歩く箇所があり、転倒しないようにバランスを保つのも老化現象なのか最近厳しく感じる。
 沢沿いの道を暫く歩くと穴路峠へ向かう登山道に方向を変える。沢音は遠ざかり、杉林を縫うように登り坂が続く。気温は低めなのか運動量が多くとも流れるような汗にはならない。
 登り坂が緩やかになると間もなく穴路峠に到着する。出発してから50分。やや遅いペースである。逆アーチ型になった峠は風が通り抜け、心地よい風が身体を癒してくれる。天空には星と月齢25日の細長い月が輝きを見せている。曇り空が晴れ間に変わったようである。ここから富士山を仰ぐことは出来ないが、富士山が姿を現してくれることを願う。
 穴路峠は西に高畑山、北に大月市鳥沢、東に倉岳山への分岐点となっている。尾崎喜八(1892年〜1974年)の詩文集「雲と草原(秋山川上流冬の旅)」の中に穴地峠(別名:小篠峠)が紹介されている。以前、秋山に住む人達が無生野から冬場に穴路峠を越えて鳥沢の宿まで炭俵を背負って運んでいたという話が詩文集の中に載っている。それもお爺さんが1俵、お婆さんが2俵背負っている人達に、喜八が小篠から穴地峠に登る途中で出会ったことが書かれている。鳥沢の宿場は活気があったと思われるが、峠を隔てた南側は貧しい生活だったのだと想像出来る。
 穴地峠より東に道を取り倉岳山に向かう。登山道は緩やかな登りと急な登りが繰り返されるが、稜線に出る最後の登りは急峻で体力を使う。
 倉岳山山頂には4時に到着。天気は良いが富士山は濃い靄に覆われ、姿はやっと輪郭が分かる程度で写真には写らない状態。気温は低め、風はそれ程強くないが、掻いた汗はその風によって冷やされ、暫くすると寒さを感じるようになる。
 北方面の桂川の谷には小規模ながら雲海は発生しているが、南方面の秋山川沿い或いは道志川沿いの谷には雲海は皆無である。
 暫く待機しチャンスを待つが一向に靄は取れず回復の兆しはない。撮影は諦め7時50分、山頂を後に下山を始める。登山口には9時20分に到着。下山途中1人の登山者と出会う。今日は残念ながら富士山をフィルムに写し込むことは出来なかった。


花の開花状況

 この時期、花の開花は比較的少なく、山頂に僅かに見られるが、倉岳山の稜線では殆ど見られない。無生野の登山口に下る途中でも殆ど見られず、いつもこの時期見られるフタリシズカは様子がおかしい。花は咲かず、本来直立していなければならない2本以上の花茎は横たわり、花の開花が見られない。原因は不明であるが、元気もない。

オオバノヨツバムグラ(アカネ科)  山
頂に咲く      

ミズキ(ミズキ科)         山頂に
咲く

ヤマホタルブクロ(キキョウ科)   山頂
に咲く

フタリシズカ(センリョウ科) 花が咲
かない  穴路沢沿い





コナスビ(サクラソウ科)    穴路沢
沿いに咲く    



サワギク(キク科)        穴路沢
沿いに咲く








山頂と登山道の様子

以下写真は下山時に撮影し、時間を追って並べてある。

倉岳山山頂(遠方に富士山が薄ら見
える) 7:50頃        

山頂からの下山道            8:00頃


穴地峠             8:30頃    

杉林の中を行く登山道         8:40頃





水量の多い穴路沢  9:10頃



無生野登山口(3台程止められるスペ
ース有り)9:20頃








                                             使用カメラ:FINEPIX F1000EXR



6月22日 小金沢山・牛奥ノ雁ヶ腹摺山

 小金沢山のサラサドウダンと富士山を撮るため訪れる日を見計らっていたが、梅雨時で天気が落ち着かず、タイミングが少しずれ込んだ感がある。今年は全般に花の開花が早くサラサドウダンも例外でないと思われる。花と富士山を撮影するタイミングは大変難しい。花は満開でも富士山が姿を見せない事は良くある。当日の天気予報は9時頃に晴マークが付いていたが、富士山が姿を現すか微妙なところである。   
 今回は日川林道の登山口近くで車中泊し、それに挑むことにした。今回も始めに牛奥ノ雁ヶ腹摺山で日ノ出時間帯の富士山を狙い、光が廻った頃、小金沢山へ移動しサラサドウダンと富士山を撮る予定である。
  午前1時30分登山口を出発。早めの出発であるが、サラサドウダンを撮影するための脚立を持ち込んだため、荷がいつもより2sほど重く時間に余裕を見込んだ。 霧で視界がなくなったり、時折小雨が降ったり、天空が開け星空が見えたり、目まぐるしく変化する不安定な空模様に今日はどんな天気になるか予想も付かない。湿気が多く登りが続くと汗と霧で眼鏡は曇り、視界が確保できず眼鏡を外して歩く嵌めにならざるを得ない。西尾根の稜線に出たのは2時50分。1割増の荷物のせいか、いつもよりそれ以上の割合で時間が掛かっている。西尾根のピークから晴れていれば富士山が望めるが、雲に隠れているようで姿は確認出来ない。
 牛奥ノ雁ヶ腹摺山の山頂に3時10分に到着。天空は抜けていたが、直ぐに霧に閉ざされる。気温は10℃。掻いた汗が引くと肌寒く一枚着込み寒さを凌ぐ。風は殆どないがサラサラと音を立て風と共に霧が流れると付近の木々が薄らと姿を見せる。このような状況はいきなり視界が開け、富士山が姿を現すことがある。そんな期待感もあり撮影準備を始める。時折降る小雨と霧で機材や衣服が濡れないように対策を施し、待つこと2時間、突然視界が開け雲海上に浮かぶ富士山が目前に現れる。感動の一瞬である。このようなことがあるからこそ撮影を止められないのだと思う。それも束の間、視界は閉ざされ何も見えなくなる。このような繰り返しが暫く続くが、霧は完全に晴れることなく抜けの良い富士山は見られない。撮影条件としては良くない状況で、鮮明な画像は望めない。それにしても今日の雲海は360度に渡る大規模なものである。
 牛奥ノ雁ヶ腹摺山での撮影を終え、本来の目的であるサラサドウダンと富士山撮影のため小金沢山へ向かい移動する。
 小金沢山には7時30分に到着。富士山は相変わらず霧の幕で不鮮明である。更に雲が多く出始め間もなくすると富士山は雲に隠れる可能性がある。肝心のサラサドウダンは山頂の大株も花が殆ど見られない。蕾などは見られず、やはり咲き終わってしまったようだ。それにしても花が下に落ちていない。花が殆ど実を付けなかった可能性もある。
 山頂を東に下った所の株も数輪の花は残っていたが、富士山にレイアウト出来るほどのものではない。今年のサラサドウダンは外れ年なのかも知れない。来年に期待を繋げようと思う。
 富士山はついに雲の中に姿を隠した。相変わらず、陽が差したり、霧の発生や小雨が降る目まぐるしい天気の中、撮影チャンスは終わり、9時に下山を始めた。
 日川林道の登山口には11時に帰着。現在、登山口付近は樹木の伐採中で重機が入り、登山道の一部はキャタピラーで寸断され、その跡は降り続いた雨で泥濘が酷く、登山靴やスパッツは泥だらけになる羽目となった。今日は小金沢山で2人組の元気な中高年女性登山者と出会った。介山荘に泊まり牛奥ノ雁ヶ腹摺山を越えて下山すると云っていた。


今日の富士山


 視界が閉じたり開けたりと目まぐるしく変化する中で、合間の撮影。ガスが残り不鮮明な富士山となった。東西南北全ての雲海は繋がりを見せた。牛奥ノ雁ヶ腹摺山頂より。

ガスが残っていることが窺える        5:30頃    





左の谷からもガスが上がってくる       5:45頃








登山道と山頂の様子


 小金沢山頂のサラサドウダンは僅かに花は残っているものの終局を迎えたようである、元々花芽も少なかったように思われる。今年はミツバツツジも終わっているようで花は全く見られない。その他、山頂東の直下にはアズマシャクナゲが咲き始めていた。
 小金沢山〜牛奥ノ雁ヶ腹摺山の間の尾根には現在殆ど花は見られない状況だが、チゴユリが一輪、雨に濡れながらも健気に咲いていたのが印象的だった。
 牛奥ノ雁ヶ腹摺山山頂東側にはシロバナヘビイチゴの白い花が群生し目を引いた。牛奥山頂から日川林道へ下る西尾根でもサラサドウダンが僅かに咲いているのが見られた。  南へ下った大蔵丸付近の熊笹は花が咲き、枯れる運命にあると云われているが、小金沢〜牛奥〜西尾根登山口までの熊笹にはその様な状況は見られない。小金沢連嶺も南大菩薩嶺と一連の山と思われるが、水系による違いがあるのだろうか。



以下写真は時間を追って並べてある。


サラサドウダン(ツツジ科)  小金沢
山山頂東側直下に   咲く(僅かに
残る)

 アズマシャクナゲ(ツツジ科)     
  同左        (蕾から開花が
始まった)



小金沢山頂         9:00頃    

小金沢山〜牛奥雁腹間の登山道 9:
15頃    熊笹に花は 見られな
い      




同左(視界の広がる高原  地帯) 
9:20頃

同左(原生林のある地帯)  9:40頃
牛奥ノ雁ヶ腹摺山北の笹源  9:45
頃        


チゴユリ(ユリ科)      




牛奥ノ雁ヶ腹摺山山頂     9:50頃  
山頂南側に群生する     シロバ
ナヘビイチゴ  

立ち枯れ木(山頂を下った鞍部) 
10:00頃


西尾根ピーク点     10:10頃




尾根取付付近の巨大な岩   10:15
頃    

雑木地帯の登山道        10:20頃

大きな樹木が伐採され視界が良くな
った

登山口近くの日川林道         11:05




                                           使用カメラ:OLYMPUS E-M1   FINEPIX  F1000EXR