2013年撮影紀行 NO4




2月28日 牛奥ノ雁ヶ腹摺山


  前日27日は雪の予報が出されていたが、大月市内は霙から雨に変わり、午前中には雨も上がって天気は回復した。それでも北の方の山は雪が降った可能性があり、雪景色に覆われた前景の山々と富士山を撮るため、牛奥ノ雁ヶ腹摺山を訪れることにした。今回も西尾根を直登する予定で、日川林道に取り付く登山口から山頂を目差すことにした。
  冬期以外は県道218号線から日川林道に入り、登山口まで車で行くことが出来るが、この時期は県道が上日川ダムの南側で冬期閉鎖され、県道〜日川林道へは歩いて入らなければならない。このため所要時間は大幅に増えることになる。 ペンション“すずらん”を左手に通り過ぎ、200m程北に進むと黄色い閉鎖ゲートが前に立ちはだかる。到着時間は午前2時35分。気温は−5℃で、風もなく割と暖かい感じがする。天空には寝待月(月齢18日)が煌々と輝き周辺を明るく照らしている。昨日、雪が降った形跡はなく、以前から降り続いた積雪が可成りある状況が確認され、登山道の積雪量が気になるところである。
   ゲート前を3時に出発。林道経由で登山口まで約5kmの距離で、雪があるため2時間程の所要時間を見ておかなければならない。しかし、県道途中からショートカットする山道を行くと1時間程で西尾根登山口に到着可能である。積雪量によって所要時間に違いが出るが、雪の多いとショートカットの山道を行っても時間的に大差はないことがある。この理由は、林道に取り付く最後の約200mが道のない笹藪となっていて新雪がある場合に熊笹が頭を垂れ通過に時間が掛かるためである。以前、僅か200mを通過するのに30分以上掛かったことがある。今回は雪の状態を判断しショートカットの山道を行くことにした。
  林道取付の西尾根登山口に着いたのは4時15分。入口は木製の階段が設けられているが、雪に埋もれ完全に見えない。この状況から積雪は30cmを超えていると思われる。トレース跡は以前のものと思われるが、ハッキリしないため頼りにならない可能性がある。これらの状況から登りには多くの時間を要することが予想された。救われたのは月明かりが周辺を照らしてくれていることである。それにしても山頂6時到着の目標は厳しそうである。
  登山口を暫く進むと100段を超える木製階段があるが、やはり雪に埋もれ階段は確認出来ない。今回も登りではアイゼンを付けないことにした。雪の底には所々にある階段や折れた小枝などが散乱し、アイゼンでこれらを踏むと引っ掛かり転倒する可能性があるためである。 登山道は木に巻き付けたテープなどの目印によって確認出来るが、雪が多いため歩行が捗らない。西尾根のピークに着いた時は6時を少し過ぎていた。これより山頂までは雪の状態から30分以上掛かることが予想された。既に日の出時間が迫り、急遽、視界の開けたこのピーク点で富士山を撮影することにした。
  東の空には雲があり富士山に陽が差したのは日の出時間を10分程過ぎてからである。僅かに富士山の雪面が僅かピンクに染まったが、それ以上のことはなかった。30分程、日の出時間帯の撮影を済ませ、6時40分、山頂へ向かい撮影を続けることにした。山頂へは一度下りサグ点を通過し登りに入るが、雪の積もった笹原は、動物の足跡が縦横に迷路のように張り巡らされ、何処を歩いて良いか分からない状況である。しかし、ここまで来ればとにかく、上に向かって歩けば山頂に到着する。
  山頂到着は7時10分。雲が多く日差しも弱い。気温−5℃、風はやや強いが寒さはあまり感じない。積雪は深い所で膝まで潜り50〜60cmに達する。降ってから暫く経っているため表面が薄く凍り、いきなりズボッと足が潜り、それを抜くのに大変な労力を要する。今日の富士山はクリヤーであるが、光が弱く暗い感じの姿に見える。しかし、前景の山々は雪に覆われ、その遠方に浮かぶ富士山は堂々と威厳を放っている。
撮影は10時で打ち切り、下山を始める。西尾根のピーク点に差し掛かる頃、富士山上空に雲が発生し、絵になると思い、再度、ピーク点で撮影を始め、30分程撮影を行い、再び登山口に向かい下山する事にした。
  途中まで順調に下山したが、登山道を示すテープなどの目印を見失った事に気が付く。上り下りを何度か繰り返し目印を探したが見つからない。どのみち西尾根は1本尾根であることが頭の中にあり、その内、登山道は見つかるだろうと下山を続けた。ところが尾根道を歩いているにも関わらず、急斜面が多く何かいつもの道と違うと思いながらも、登山口に向かったが、この時、始めて別の尾根を下っていることに気が付いた。西尾根から派生した尾根と思われるが、南西方向に下っているようである。この尾根一帯は枯木や雑木、ブッシュが多く、ザックが引っかかり思うように下山も出来ない状況である。そんな時、動物の足跡で雪上が溝になって雑木やブッシュを避けた獣道になっていたため、それに誘われ歩いていると、いきなり足を取られ滑動を始めた。足から15m程急斜面を滑り落ちたが、運良く木の間に挟まり止まった。腰を少し打った程度で、動くには支障ない状態でホッとしたが、滑り落ちた斜面を這い上がるのに、ズルズル滑り、やっとの思いで落ちた元の場所に戻った。この尾根は全般に荒れた尾根でとにかく歩きにくい。雑木やブッシュを避けながら勾配の緩い所を降りて行くうち、視界が開け眼下に雪で真っ白な林道が遙か先に見えた。これで何とか帰還することが出来ると思いホッとした。
  林道に降り着いた場所は水のある沢沿いで、西尾根登山口より、南に1km程離れた所であった。林道にも30cmを超える雪があり、勿論、轍はないが、所々で人の足跡が確認出来たが、途切れ途切れで沢に向かって降りている。もしかしてハンターのものかも知れない。林道を北に向かい、元の登山口まで戻り、登ってきた山道を下山することにした。
  山道から県道に出る直前にアイゼンを外した。ところが県道に取り付く所に水溜まりがあり、飛び越えられる距離でないため、片足を出した瞬間、いきなり勢い良く転倒、水溜まりが凍結していたのである。14時を過ぎていたので水溜まりという先入観があった。転倒した時は衝撃で一瞬脳しんとうを起こしたようであるが、直ぐに気を取り戻した。左肘を強打したのと、転倒の弾みで首に負担が掛かり、首筋に痛みを感じたが、歩いているうちに回復した。 ゲートに戻ったのは15時を少し過ぎていた。
  今回、下山時に西尾根から派生する南西尾根に誤って入り込み、散々な目に遭った。元々、西尾根自体が荒れ気味で、登山道がハッキリしない所があり迷い易い状況がある。雪道ではハッキリしたトレースがあれば別であるが、目印が頼りとなり、これを見逃すと登山道を外し迷うことになる。そのため、あちこちの木に目立つようテープなどを巻き付け登山道の目印にしているが、1年もするとその木が倒れたり、テープが劣化したり、目印がなくなっている箇所も多く、復旧させておく必要がある。
  単独登山の場合、怪我などで動けなくなった時は、遭難の恐れがあり、慎重な行動が要求される。今回、事なきを得たことは運が良かったと云う他ない。仮に遭難していたら、雪山の単独登山に制限が掛かることも考えられ、他のカメラマンや関係者に迷惑が及ぶことになる。改めて何事もなく帰還出来たことに安堵すると共に、この様なことを再び繰り返さないよう、無理な行動は慎むべきと反省している。


今日の富士山


  牛奥ノ雁ヶ腹摺山西尾根ピーク点より        (日
の出 時間帯 )       6:20頃  





山頂より(富士山に入る光が弱い)    9:15頃  








山頂および登山道の状況


 山頂の積雪は50〜60cm、膝まで潜り、移動に難儀する。西尾根登山道は平均30cmの積雪量。多い所では40cmを超えている所もある。途中、雑木地帯に入ると、トレースがないため登山道は不明となるが、目印のテープなどが頼りである。暗い登りでは見失う事があるが、登る方向は限られ、登りで迷うことは少ない。 西尾根ピーク地点は南からの太陽が当たり積雪は少ない。今回、南西に延びる尾根に入り込んだ地点は確認出来ないが、次回訪れた時に確認しておきたい。何度か積雪時に訪れているが道を誤ったのは初めてである、増して枝分かれしている尾根の存在を把握していなかった。知っていたらこの様な状況にならなくて済んだ可能性がある。いずれにしてもそれ程深い山でないため、南西から西に向かって下山すれば、日川林道に出られる可能性は高い。それにしても迷い込んだ尾根は急斜面で枯木、雑木、ブッシュが多く荒れた斜面である。  西尾根のピーク点は視界が良く富士山の美しい姿が見られ、撮影ポイントとしても良い場所である。


奥ノ雁ヶ腹摺山山頂          (積
雪は50 〜60cm)  10:00頃


青空に映える山頂の樹木 10:00頃

西尾根のピーク点       10:40頃  





ピーク点から上日川ダムの展望  11:10頃
 (奥の山は雪の被った        八ヶ岳
連峰と金峰山 )


 積雪の多い西尾根登道            12:00
頃    


同左







程:県道218号線閉鎖ゲート(午前3:00発)→日川林道西尾根登山口(4:15)→西尾根ピーク点(6:10

  〜6:40)→山頂(7:10〜10:00)→西尾根ピーク点(10:40〜11:20)→ → →閉鎖ゲート(15:00着)









3月6日 扇山


 扇山は昨年12月に訪れて以来3ヶ月ぶりとなるが、十二景の山では比較的登る頻度が少ない。山番号も12番のうち6番で中心にあり、且つ市内にも近く、比較的容易に登ることが出来、時を選ばず何時でも登れるという安堵感のようなものがあるためと思われる。
 今日は晴の予報が出され、日中の気温は20℃近くに上がるということであるが、水蒸気が発生し富士山の抜けの悪い状況になることも考えられる。
 梨ノ木平の駐車場には午前2時半に到着。気温は5℃と高めであり寒さは感じない。東の空には半分以上欠けた月が明るく輝いている。 時間が未だ早すぎるため準備にゆっくり時間を掛け、3時10分に出発する。今年は雪が多かったせいか、雪の重みで折れた小枝や、杉の葉が登山道に散乱し、足に絡みつきやや歩きにくい状況である。周辺を見回してみても雪は完全に消えているようであるが、未だこれから降雪の可能性は考えられる。
 3時40分中腹の水場を通過。気温が高いせいか、額にも汗がにじみ出てくる。これからつづら折りの登りが続くが、なるべく汗を掻かないよう時間を掛けて登ることにする。ツツジ群生地への分岐点を4時10分に通過。更につづら折りの登山道が続き、百蔵山の分岐点には4時30分に到着。ここは鞍部となっていて、風当たりは強く、掻いた汗を乾かしてくれるのは有り難い。
 山頂には4時40分到着。風音は大きいが、それ程強く風は受けない。気温は5℃、梨ノ木平と同じである。南西方向には富士山の姿がはっきり確認出来る。雲は殆ど見られないが、東の空には多少認められるが、日の出を遮る程のものではない。
 今日の日の出は6時05分頃。この時間ちょうどに富士山の山頂に光が差す。僅かに薄紅色に色付き始める。濃い色ではないが、乙女が恥じらうように、ほんのりとした色付きを見せてくれた。今日は雲一つない晴天で懸念された富士山の抜も素晴らしく、クリヤーな姿を見せてくれていた。しかし、写真となると変化に乏しく、物足りなさを感じる。
 8時10分、下山を始める。既に陽は高く日差しが強い。一気に春が訪れた感じがする。途中、中腹の展望所からも堂々たる富士山が望めた。梨ノ木平の駐車場には9時15分に到着。今日は誰一人登山者に出会うことはなかった。



今日の富士山


朝日で山頂が薄紅色に染まる          6:08頃





一点の雲のない青空に映える      6:38













山頂と登山道の状況


 山頂(新たに山名板が建て       られ
ている)      8:10頃    


山頂直下の登山道(西斜面で雪が未だ残る)
        8:15頃    


百蔵山への分岐点        8:20頃    





ツツジ群生地への分岐点    8:35頃


水場付近の登山道(岩や石がゴロゴロしてい
る)    8:55頃  


梨ノ木平駐車場           9:15頃  







                                                 使用カメラ:  OLIMPUS EP-2   FINEPIX F300-EXR