2015年 撮影紀行(その7)



5月17日 牛奥ノ雁ヶ腹摺山・小金沢山

 冬季閉鎖されていた林道も4月末には解除され小金沢連嶺や南大菩薩へ入るのも容易となった。今回は西尾根ルートで牛奥ノ雁ヶ腹摺山〜小金沢山を訪れることにした。今年1月末に牛奥ノ雁ヶ腹摺山を目指したが積雪の多さに西尾根の稜線に出たところで断念した経緯がある。当山へは約4ヶ月ぶりの山行となるが、既に立夏を過ぎ、標高2000mの山でも夏への移行が進んでいると思われる。
 昨日は降雨により大地に湿り気が与えられた。今日の天気予報は晴マークが付き、雲海の発生が期待出来そうである。
 午前1時45分、日川林道に取り付く登山口に到着。駐車場は特にないが路肩に3台ほど止められるスペースがありそこに車を置いている。自宅を出る時に降っていた雨も来る途中で上がり、今は星空を望むことが出来る。無風状態であるが、ひんやりした空気が漂っている。気温は低く湿気は感じられないが、果たして雲海発生が有るのだろうか?今日は日曜日であり、カメラマンが入ることも考えられるが今のところ他の車は止められてはいない。
 2時10分、登山口を出発。入口の案内標に山頂まで70分と表記されているが、私にとっては厳しい所要時間である。登山口に入ると多くの大木が伐採され、視界がかなり広がった様子が窺える。1月に訪れた時は未だ伐採されていなかったため、つい最近作業されたと思われる。全体がどのような状況になっているのか暗くて把握できないが、下山時に確認したいと思う。この西尾根コースへは連休中に大勢の登山者が訪れたと思われる。途中、迷いやすい箇所もあったが、以前に増してしっかり踏み固められ、登山道らしくなっている。獣道などに迷い込むと足の裏の感触でコース外であることが直ぐに判別出来るようになった。明るい時であればピンクのテープの道標が細かい間隔で木々に巻き付けられ登山道を外すことはない。
 1時間ほど登り詰めると西尾根稜線のピーク点に到着する。この地点からは南〜西に掛けての展望が得られ、西に見える甲府盆地は雲海で覆われている。その雲海は南へ連なっている様子が窺えるが、富士山の姿は雲に覆われているのか暗くてハッキリ姿は確認出来ない。ピーク点から一度サグ点(鞍部)に下る箇所がある。この付近は立ち枯れの木が多く、その倒木で登山道があちこちで塞がれていたが、最近になって倒木は整理され歩き易くなった。
 山頂には3時35分に到着。日ノ出まで未だ1時間ほどあり、徐に撮影準備を始める。風はなく気温5℃とやや肌寒い。未だ暗くて確認しづらいが、西〜東に掛けて一面雲海で覆われ富士山は5合目ぐらいからポッカリ姿を覗かせている。今日の雲海はかなり広範囲に渡った大規模な雲海だと云っても良い。
 日の出時間(東京)は4時35分。東からの日の出は確認出来たが、暫く経っても富士山に朝の光が入ってこない。そのためか富士山は精彩を欠いた表情をしている。光が無いとコントラストが失われ単調な写真にならざるを得ないのは残念である。時折、山頂にもガスが押し寄せ視界がなくなることがあり、標高の低い山では雲海に飲み込まれ富士山を望むことが出来ないと思われる。今回、高い山を選択して正解である。
 雲海は西から東へと形を変えながら移動しているが、富士山の高さを超えるような(そのように見える)雲が時折現れ姿を隠すこともある。このような状況が繰り返されるが、デジカメで撮った写真を見ると、満足な写真が撮れていない。彩がないためポイントを何処に絞るか判断しづらく雲海撮影の難しさを感じる。
 牛奥ノ雁ヶ腹摺山での撮影を終え、5時50分小金沢山に移動を始める。40分ほどで小金沢山に到着するが、撮影場所を山頂から東に少し下った岩の上で行うことにする。この場所は視界が開け山頂より撮影しやすい。雲海に大きな変化は見られないが、上面は平坦になり幾分トップが下がったようである。また、雲海自体微妙に細かくなった感じを受けるが、これ以上撮影を続けても撮影結果に変化はないと判断し、8時40分、小金沢山を後に下山を始める。牛奥ノ雁ヶ腹摺山を通過する時に、甲府盆地の雲海は殆ど消えていたが、南西方面は雲が多く富士山はその雲の中に姿を消していた。
 登山口には10時30分に到着。登山口付近の大木が伐採され視界が大きく広がっていた。100段以上ある木製階段も全て見渡せる状況となり、開放感溢れる登山道に様変わりしていた。そして、何と言っても南アルプスの全景が展望出来ることは魅力である。また、上日川ダムも間近に俯瞰でき素晴らしい情景が目に入る。  日川林道の路肩には自分の車の他1台の車が止められていた。今日は日曜日と云うこともあって、多くの登山者と出会った。小金沢山頂で7人のグループと牛奥ノ雁ヶ腹摺山へ戻る途中で1人の登山者、山頂では大峠から登って来て大菩薩峠まで往復するという登山者、更に西尾根を下る時に若い1人の登山者と、そして犬を連れた夫婦と合計12人と出会った。


今日の富士山

牛奥ノ雁ヶ腹摺山より(今日は雲海に恵まれた)       
          5:20頃  






小金沢山より              7:45頃







山頂および登山道と花の開花状況




南アルプスの展望(牛奥ノ雁ヶ腹摺山より) 5:05  










以下写真は小金沢山からの下山時に撮影したもので時間を追って配置してある。


小金沢山より        6:30頃  

原生林(牛奥雁腹山と小金沢山の中
間点)    9:05頃

笹源(牛奥雁腹山と小金沢山の中間
点)    9:15頃

牛奥雁腹山と小金沢山の中間点に
咲くスミレ   9:15頃  




牛奥ノ雁ヶ腹摺山山頂       9:
20頃

山頂直近の西尾根登山道  9:20頃
西尾根ピークに向かう鞍部の立ち枯
れ樹木     9:30頃

倒木の多い牛奥山頂と西尾根ピーク
の鞍部    9:30頃




西尾根ピーク付近から望む 上日川
ダム    9:35頃  

新芽の吹き出たサラサ        ドウダ
ン         9:40頃  


モミジの花          9:55頃


 新緑が眩しい     10:10頃  




大木が伐採され視界が大きく広がっ
た      10:20頃  

西尾根登山口付近の100段 以上あ
る木製階段 10:20頃

路肩に駐車(3台位駐車      可
能)        10:25頃

 登山口付近で見付けた      スミ
レ         10:30頃







登山口の案内標柱       10:30頃











行程:西尾根登山口(2:10発)→牛奥ノ雁ヶ腹摺山(3:35着・5:50発)→小金沢山(6:30着・8:40発)
                                     →牛奥ノ雁ヶ腹摺山(9:20通過)→西尾根登山口(10:30着)

                                  使用カメラ:OLYMPUS E-M1    FINE PIX F1000EXR



4月23日 大蔵高丸・ハマイバ

 25日の林道冬季閉鎖解除を前に大蔵高丸。ハマイバを訪れることにした。前日の22日は、降雨量は少なかったものの大地に湿り気を与えた。雨の直後、天候に恵まれれば雲海の発生する確率は高く、特に甲府盆地ではその現象が現れやすい。風向きや雲海の規模にもよるが、大月の山々にもそれが風に乗って移動してくることがある。このような条件が満たされれば、甲府盆地に近い小金沢連嶺や南大菩薩の山々からは雲海上に浮かぶ富士山の素晴らしい情景に出会える可能性は高い。もう2日待てば湯ノ沢峠まで車で容易に入れるが、体力を削ってでも雲海の現れるチャンスをものにしたいという気持ちが強くあった。  
 今年1月に大蔵高丸を訪れているが、積雪が多く山頂まで息も絶え絶え5時間掛かった。その結果、日ノ出時間に間に合わず、意図した富士山を撮ることが出来なかった。雪道は積雪量によって所要時間が大きく異なり予定が立てにくいが、その点、無雪であればそのようなことはない。
 21日午後11時40分自宅を出発。フロントガラスに細かい雨が当たりワイパーを掛けながら天候の回復があるのだろうかと心配になった。高速に入ると路面はドライになっていたが、晴れ間は見られず、早めの天候の回復を祈ることにした。
  焼山沢林道の閉鎖ゲートに着いたのは午前1時30分。湿気が多く気温は高め、無風、天空を仰ぐと曇り空。晴れることに期待を寄せ 、1時50分ゲートを出発。舗装された林道を40分ほど歩くと焼山沢沿い登山口へ向かう分岐点に差し掛かる。湯ノ沢峠への林道は左にカーブをしているが、そのまま直進し未舗装となった林道に進入する。20分ほどすると沢沿い登山道口に到着する。今月8日に5年ぶりの春雪が降ったが、ここまでの間は何処を見ても白いものは目に入ってこない。
 沢沿いの登山道は急峻ではないが水量のある沢を横断したり、沢底まで5m以上ある中腹を歩く箇所があり、ヘッドランプの灯りでは何とも心許ない。暗がりで足を踏み外さないよう気を配りながら歩くのは神経を使う。更に沢の水量が雪解けで多く、水深のある箇所ではバランスを崩しドボンしないよう細心の注意を払わなければならない。また、所々に沢を跨ぐ丸太が渡してあるが、これが古く朽ちて不安定なものもあり、状況によっては沢の中を横断した方が安全である。
 湯ノ沢峠には3時40分に到着。出発から1時間50分、先ず先ずのペースで登って来たことになる。ハマイバまで残り50分。日ノ出時間少し前には到着出来そうである。天空はやや抜けが悪いものの、星空が確認され天候は回復したと見られる。
 大蔵高丸を4時25分に通過、既に周辺は明るみを帯び、富士山の姿も確認出来る。西側に展望できる甲府盆地は雲海によって埋め尽くされている。予測は的中したようであるが、これが東に移動してくれれば雲海上に浮かぶ富士山が撮れる可能性がある。
 ハマイバ山頂を通り過ぎ、視界の開けた撮影場所に到着したのは4時50分。富士山の姿は靄により鮮明さに欠ける。雲海は未だ甲府盆地に留まっている。気温は5℃ 。湿気が多く、緩やかな西風を受けるがやや生暖かい感じがする。それにしても富士山の雪は大分減ったような気がする。日ノ出時間(東京)は4時59分、今日から4時台の早い日ノ出時間帯に入る。周辺はかなり明るくヘッドランプはもう不要である。急いで撮影の準備に取り掛かる。
 日ノ出時間が迫ると富士山上空の雲に色が付きだした。時間経過と共に富士山の雪面に朝日が入り薄らと焼け始めた。湿度が高いせいか色合いは暗めでやや鈍い光を放っている。暫くすると西方から甲府盆地の雲海が西風に乗ってゆっくり移動してくる。更に西に移動して欲しいが、大谷ヶ丸の稜線西側で留まっている。この稜線を乗り越えてくれると雲海上の素晴らしい富士山を撮影できるが、残念ながら雲海にはそのエネルギーはなさそうである。
 その後、7時半頃になると雲海は薄すれ始め、間もなく甲府盆地を埋めていたものは全て消滅した。今日は撮影場所を2度ほど移動したが、8時にハマイバを後に下山を始めた。
 途中、湯ノ沢小屋で休憩を取り、焼山沢沿い登山道を下る。ゲートに戻ったのは11時20分。それにしても舗装された林道を最後に下るのは結構辛いものがある。
 今日は誰にも出会うことはなかったが、5時半頃、撮影中左側(南側)に動物の気配を感じた。ゆっくり左に目を移すと後ろ姿が目に映ったが、逃げるように南の方へ早足に去って行った。距離20m位、最初、熊かと思ったが上体は木の枝で見えなかった。黒っぽい色の2本足で歩いていたことは確かである。人間だったら声を掛けるだろうし、湯ノ沢から入った形跡はない。入るとすれば米背負沢からだろうか?やはり人間だったのだろうか?


今日の富士山


い色に焼ける(山頂の雪は大分少なく
なった)   5:10頃  


甲府盆地の雲海が西風に乗って寄せて
くる    6:10頃  


雲海の量は徐々に          増え
てくる     6:15頃

雲海は大谷ヶ丸の稜線を越えることは
なかった。その後富士山に雲が掛かりだ
した  7:15頃






山頂と登山道の状況

 湯ノ沢峠〜大蔵高丸〜ハマイバ間はこれからツツジや山野の花が咲き、まもなくと思われるが華やかな季節がやってくるのは楽しみである。今月降った雪は何処にも見られないが、未だ新芽も見られず、標高1700mでは春の息吹は殆ど感じられない。
 湯ノ沢のお花畑には以前から動物による植物の食害を防ぐため周囲に進入防止ネットが張られ、人が出入りできるように扉が南北に2箇所とその内側にも2箇所設置され、二重構造で動物の侵入を防いでいる。そして、昨年11月には、ハマイバにも格子状(細い丸鋼の組合せ)の侵入防止柵が広範囲に設置された。人の出入りのため南北2箇所に扉が設けられている。大型動物に対応するためと思われるが、ネットではなく堅固な格子状の亜鉛メッキされた柵が設けられている。自然景観の中に目立つ存在となり景観を損ねることになるが、塗装を薄緑色にして目立たないようにするとか、そのような配慮があっても良かったように思われる。


以下写真は下山時に撮影したもので時間を追って配置してある。




ハマイバ山頂       7:00頃  


ハマイバにも動物侵入柵が設置され
た(南側扉) 8:05頃



北側の扉         8:10頃  

周囲を囲んだ鋼製柵(亜鉛メッキされ
ていて目立つ)     8:10頃  




マイバ〜大蔵高丸間も  ロープで
仕切られている    8:15頃    



大蔵高丸山頂        8:30頃

大蔵高丸山頂から(富士山頂は既に
雲で覆われている) 8:30頃  



お花畑の西側扉      8:55頃




お花畑から望む大蔵高丸     9:00
頃  


湯ノ沢峠分岐点        9:10頃

湯ノ沢峠の駐車場(25日には利用さ
れる)  9:15頃  

湯ノ沢避難小屋(10組位の布団が備
えてある) 9:20頃





  湯ノ沢小屋付近を下る    登山
道 。   9:40頃  


  丸太橋が朽ちて使えない     
        9:45頃

沢底まで深いところには柵が設けら
れているが曲がっている      9:
50頃

 
水量が多く音を立てて流れている
       10:05頃




林道から沢沿い登山道への分岐
点        10:40頃  





閉鎖されたゲート(25日には閉鎖解除
予定) 11:15頃







     行程:閉鎖ゲート(午前1:50発)→沢沿い登山道への分岐(2:30)→登山道入口(2:50)→湯ノ沢峠(3:40)
         →大蔵高丸(4:25)→ハマイバ(4:50着・・・この間撮影・・・8:00発)→大蔵高丸(8:30)→湯ノ沢峠(9:15)
           →湯ノ沢小屋」(9:20着・9:30発)→林道と沢沿い登山道分岐点(10:40)→(この間15分休憩)→閉鎖ゲート(11:15着)

                                           使用カメラ:OLYMPUS E-M1   FINEPIX  F1000EXR