2015年 撮影紀行(その3)



3月2日 百蔵山 

  雨上がりの早朝は気象条件により雲海や迫力ある雲が発生する確率が高いと考えられる。今回は桂川沿いに発生する川霧を狙って百蔵山を訪れることにした。
  車で登山口に向かう途中、上野原は濃霧で視界は閉ざされていた。この状況から念願が叶うように思われたが、大月に入ると西の空に月齢11日の月が煌々と輝き、嘘のように視界が鮮明になった。霧はいったい何処へ消えてしまったのか?上野原と大月では地形条件の違から区分けされるのだろうか?
  西コースの登山口に車で着いた時は抜けるような満天の星空。やや強い風が吹き気温は高め、川霧の発生は見事期待外れとなったようである。
  午前3時20分、登山口を出発する。時折強風に晒されるが、登るに従い風は弱まった感じである。暫く谷沿いの登山道を行くため風が遮られているからだと思われる。気温は高め、汗がなかなか引かない。中腹の富士山展望所に4時に到着。未だ暗いが富士山の輪郭は朧気ながら確認出来る。
  葛野への分岐点に差し掛かると強風にまた晒される。汗は一気に引くことで寒さが体を襲う。寒さの解消を図るため山頂に向かいピッチを上げる。
 山頂到着4時40分。空気は澄んでいるようで街の灯りが鮮明に見える。雲は何処にも確認出来ず、堂々たる富士山の姿が目前に迫る。風は相変わらず強いが、気温は−2℃とやや高め。
  日の出まで暫く時間があるため、街灯りを配した長時間露光撮影を行う。3カット撮影を終える頃には明るくなり、その撮影も難しくなった。それにしても、ここ半月ぐらいの間に明るくなるのが大幅に早くなった感じを受ける。
  日ノ出時間を迎えクライマックスが始まったが、富士山の朝焼けは殆ど無く終わった。たっぷり雪を被った富士山の雪面はソフトクリームのような柔らかさで心温まる優しさに溢れていた。そんな富士山に向かいカメラはシャッターが切れないと小さな声で呟いた。
  今日は撮影チャンスが殆ど無く、7時40分早々に山頂を後にする。西コースを戻り登山口には8
時40分に到着。今日は誰とも出会うことはなかった。


今日の富士山

大月から富士吉田に掛けての夜景       5:35頃

 
 
 




日ノ出時間(僅かに焼けた雪面)        6:10頃
 









登山道と花の開花状況


 陽が昇る頃には気温が大分上がり冬の終わりを実感する。登山道際にも所々新芽が見られ、春がそこまでやって来ていることが窺える。先月は降雪日が多かったものの百蔵山では雪は全く見られない。ここの所、雪山ばかり登っていたため雪が無いのは寂しい思いはあるが、これからの山は植物が一気に生長し、春に登る山からは新たな命が貰えそうで今後が楽しみである。
 百蔵山西コースの登山道は傾斜も緩く、山頂まで1時間半もあれば充分に登れる山である。登山口から中腹に掛けては石や細かい岩が登山道に散乱するところもあるが、中腹を越えると足場は良く歩き易くなる。また、中腹の展望地にはベンチが置かれ富士山の眺めも良い。登山口から40分位の所にあり山頂を目指さなくとも十分富士山の展望が楽しめる。
 百蔵山の山頂は東西に長い広い山頂である。ベンチも置かれ富士山の展望も素晴らしい。これから暖かくなると登山者も多く訪れ、山頂はにわかに賑わいを見せる。

以下、下山時に撮影したもので、時間を追って配置してある。


東西に長く広い百蔵山山頂   7:40
頃    

山頂直下の西コース登山道  7:45頃
葛野への分岐点(ここから左に谷を
下る)    7:55頃    

中腹の展望所(ベンチも置かれてい
る)   8:05頃





展望所脇の案内標(百蔵山と猿橋駅
への標記)  8:05頃  

中腹の石や岩の散乱した箇所(やや
歩きにくい) 8:20頃

登山口近くの水場(美味しい沢の
水)      8:35頃  

西コース登山口(広い駐車スペー
ス)     8:40頃





                   

                           使用カメラ:OLYMPUS E-M1    FINEPIX F1000EXR






 

2月19日 清八山


 清八山には5年前(2010年)の同月日に訪れている。今回も降雪の翌日を狙い、清八山の朝焼けに染まる雪景色と富士山を撮影する予定である。清八山は富岳十二景の山の中で最も富士山に近く、迫力ある富士山を望むことのできる山である。
 前日、大月の市街地は雪ではなく雨が降り、積雪がなかった様子はライブカメラで確認出来る。しかし、標高1500mを超える山では多くの降雪があったと推測される。最近、他の山を目指す際、積雪の多さに所要時間が予定を大幅に超え、日ノ出時間に間に合わないことが何度かあった。撮影チャンスを逃した反省を踏まえ、今回は同じような状況である2010年に登った際の所要時間を5割附加し、日ノ出時間に間に合うよう余裕を持った行程とした。  
  国道を走行中、市街地の雪は見られないが、笹子追分から登山口に向かう道路に入ると突如として路面に雪が現れた。進入するに従い雪の厚さは増し、周辺はすっかり雪景色に変貌。変電所辺りに来ると30cm以上の積雪量になっていた。車は腹を擦りながらやっとその先の橋を渡ることが出来たが、登山口はこれより更に500m程先ある。少しでも時間を稼ごうと車で行けるところまでいこうと進入したが、やはり途中でスタックした。これ以上進むことが出来ず、車をその場所に置き、歩くことにした。天空は満天の星空、風もなく気温は0℃。寒さは感じない。天気は問題なさそうであるが、果たして朝日に染まる雪景色を撮影することが出来るだろうか。
  午前2時50分、車を置いた場所を出発。日の出時間まで3時間30分、積雪量によって所要時間が左右されるが、想定していたよりも雪は多く、日の出に間に合うかどうかやや心配になる。結果は登ってみなければ分からないというのが正直な気持ちである。今は、積雪が多くないことを祈るしかない。登山口まで林道を500mほど歩くが、気温が高いせいか登山靴はズボズボ潜り、湿った雪で重い。暫くすると5年前に植林された小高い丘に差し掛かるが、積雪は既に30cmを超えている。この小高い丘を登りそこから山道の登山道に入るが、やはり昨日の降雪量はかなり多かったようである。
  中腹のベンチの設置された休憩所を4時50分に通過する。ベンチが2基設置されているが雪に埋もれて確認出来ない。ここまでは予定の行程範囲内であるが、積雪は増える一方。これから清八峠までつづら折りの長い登りが待っている。この多い積雪ではこれから厳しい状況が窺える。標高に比例して積雪は確実に増加し、所々で膝まで潜る状態に歩行は足踏み状態、時間が過ぎゆくばかり。日の出時間が刻一刻と迫ってくる。既に辺りは明るく東の空はオレンジ色に焼けている。気持ちは焦りを覚えるがどうにもならない。
 このコースは山頂まで富士山の展望がなくその状況は窺い知れないが、途中、南アルプスや八ヶ岳連峰が展望出来るところがある。そこに目を向けると雪を被った稜線がオレンジ色に焼けている光景が目に入る。今頃、富士山も同じように焼けているだろうと悔しい思いが込み上げてくる。時計を見ると6時30分、既に日の出時間に達している。またまた、撮影チャンスを逃した思いである。
 現在位置は登って来た休憩所と山頂の中間点にあり、3分の2は登ったことになるが、この積雪では山頂まで未だ1時間以上掛かると推測された。山頂に登るのは一時諦めようと考えたが、1月に牛奥ノ雁ヶ腹摺山で山頂を断念した経緯もあり、時間はともかく山頂を極めようと決意した。
 つづら折りの斜面は思いの外きつく歩行は一向に捗らない。この登りが一段落すると、緩い登りに変わるが斜面の中腹を歩く場所が続く。このまま清八峠に続く道であるが、その登山道は雪に埋もれ全く存在が分からない。勘を頼りに先に進むが斜面中腹は想像以上の積雪で、股下まで潜り体力の限界を感じる。しかし、ここで諦める訳にはいかないと気合いを入れ直す。
 途中、登山道を外したが清八峠に7時50分に到着。稜線に出ると僅かながら積雪量が減った。ここから山頂まで僅かな距離であるが、最後の急な登りが待っている。
 山頂到着8時30分。何と車を置いた場所から5時間40分掛かった計算になる。山頂は時折強い風が吹くが気温は−5℃と割と高く寒さはない。水筒の水も凍ってはいない。陽は大分高くなっているが白く清らかな富士山が目前に迫る。他の十二景の山と違い富士山が大きい。雪花が太陽の光を受け綺麗な輝きを見せている。日の出時間の撮影が叶わなかった事は悔やまれるが、贅沢は言えない。神々しい富士山が見られただけで十分である。山頂に長居をしたが雪景色を存分に堪能出来た。
 10時50分、山頂を後に下山。車の場所に戻ったのは13時20分。今日は誰とも出会うことはなかった。



今日の富士山


 

雪花が光を浴び輝きを見せる         8:35頃     




富士山に雲が掛かり始めた          9:30頃   








山頂と登山道の状況


 昨日は清八山でも多くの降雪があったことを積雪の多さが物語っている。以前降った雪は根雪となって下部で凍りついている。登山道は北側に面しているため、雪も融けづらく新雪によって積雪が増している状況である。

  清八峠に近い斜面中腹を歩く登山道には70cm〜80cmの積雪があると思われる。気温が高いせいか雪面は柔らかく、片足に体重を掛けるといきなり足はズボッと潜りバランスを崩すことが多い。また、この雪は湿気が多くアイゼンを付けても滑りやすく、特に谷足が谷川に滑ると滑落する危険性を孕んでいる。


以下写真は下山時に撮影したもので時間を追って並べてある


 
山頂の様子       10:50頃    

  青空に映える雪花       (山
頂付近)  11:00頃

 清八峠に下る登山道         11:00
頃    

清八峠(先は本社ヶ丸方向) 11:10頃




登山道は不明だがこのような斜面を
暫く歩く   11:15頃  

左画面の積雪(ストックの2段目も埋
まる)  11:25頃

つづら折りの登山道が暫く  続
く        11:40頃  

植林された小高い丘への    アプロー
チ      12:45頃




小高い丘からの展望(中央のピ−ク
は笹子雁腹山)        12:50頃  


小高い丘を下る登山道     12:50頃


登山口(登山者カード提出箱が設
置)    13:00頃    


車を置いた場所(この少し先でスタッ
ク)  13:20頃





行程:車を置いた場所(2:50発)→登山口(3:15)→山道入口(4:00)→中腹休憩所(4:50)

      →清八峠(7:50)→山頂(8:30着〜10:50発)→清八峠(11:10)

               →山道出口(12:50)→登山口(13:00)→車を置いた場所(13:20着)



                                                 使用カメラ: FINEPIX F300EXR