2012年撮影紀行 NO1




1月27日 奈良倉山


 奈良倉山へはここ5年間に平均して年4回ほど訪れている。この回数は十二景の山の中でも頻度が高い方である。自宅から松姫峠まで一般道で所要時間が1時間40分〜50分というアプローチの良さや、積雪があっても容易に山頂を踏むことが出来るのもその理由である。また、奈良倉山は富嶽十二景の山では富士山からの距離(45.5km)が最も遠く、奥行きのある景観は他の山の追従を許さない。前衛の山並の遠方に映し出される富士山は遠くとも高さを誇り、堂々とした姿にいつも心打たる。そんな奈良倉山からの富士山は、来る度にまた撮影に訪れようという気にさせてくれる。このようにいくつもの好条件が揃っているからこそ、訪れる回数も多くなるのだと思う。
 今週初めに降った雪が未だ残っている状況に鑑み、今回は奈良倉山の雪景色に富士山を配した情景を撮影すべく当山を訪れることにした。
 松姫峠を午前4時40分に出発。積雪のため倍の歩行時間を見込んでの出発時間である。峠の気温は−7℃。天空は星空で一杯であるが輝きがやや不足しているように見える。風が強く体感温度は5℃程低く、寒さが身に応える。いつもの撮影場所(山頂南側直下の林道)に向かい林道を歩き始めるが、雪面に1人のトレース跡が見られる。恐らく昨日のものと思われるが、カメラマンの足跡かも知れない。林道の積雪は40cm以上と深く、トレース跡を歩くのは新雪面を歩くより余程楽である。この林道は南東に向かっているが、途中、富士山の展望の良い所でトレース跡が終わっていた。やはりカメラマンの足跡だったようである。撮影場所は更に先になるが、真っ新な雪の上を歩くのは夜道でも気持ちの良いものである。膝下10cmまで潜る足は重く体力の消耗は大きい。
 6時00分、山頂南側林道の撮影場所に到着。今日は富士山の姿は良く見えるが、未だ日差しがなく、コントラスト不足のモノクロ写真のそのもので少し淋しげな姿に見える。
 今日の日の出時間は6時45分頃。既に東の空はオレンジ色に染まり、日の出の準備に入っている。刻々と変化する空の色に朝焼けが期待できそうである。風は相変わらず強いが、空気に水蒸気が多いためか、薄い膜が張ったようで富士山の抜けはあまり良くない。
 東の空には雲は殆どなく、日の出時間2分位前から富士山頂にうっすら朝日が差し始める。徐々にピンク色に染まり、ほぼ、日の出時間にはクライマックスを迎える。やや薄めの上品な色付きとなったが、富士山の堂々たる姿はいつ見ても感動的である。
 7時25分、ここでの撮影を終え山頂に向かう。林道からやや急峻な登山道を登り山頂には7時40分に到着。山頂にはトレース跡はなく暫く山頂を踏んだ形跡はないようである。
 7時50分、山頂を後に次の撮影場所に移動する。山頂より西側の登山道を林道に向かい下り、林道を南東に向かう。登る時と重複する道であるが、他の人のトレース跡が終わっていた所が撮影場所である。この場所は前面が開け展望の良い絶好の撮影場所である。暫く撮影を続けるが、時間の経過と共に、富士山の抜けは更に悪くなってしまった。これ以上撮影を続けても写真にならないと思い9時15分、撮影場所を後に松姫峠に向かう。
 松姫峠の駐車場には10時20分到着。駐車場に他の車は止められていなかった。




今日の富士山


今日は風が強く富士山も荒れ模様。富士山の抜けはあまり良くない。


日の出時間直後(薄いピンク色に染まった)    6:50頃  




この時間になると富士山の抜けは更に悪い     8:45頃  

山頂南直下の林道から撮影                  






山頂南西直下の林道から撮影


山頂南西直下の林道からの西方面の展望





山頂と登山道


 林道には40cmほどの積雪かあり、歩行時間は無雪期の倍は掛かる。今回は林道〜山頂間以外は林道歩きとした。遠回りとなる山道は積雪が多くても危険な箇所はないが、更なる積雪により歩行時間が多く見込まれるため、林道を歩くことにした。


山頂南直下の林道撮影場所(左の斜
面を登った所)    7:30頃    

山頂へ向かう山道の入口   7:35頃
植林帯を行く山頂への山道  7:40頃
山頂の富士山展望所から    7:45




奈良倉山山頂(踏まれた跡はな
い)     7:50頃    

山頂から西方向へ下る山道 7:50頃
積雪の多い林道    9:30頃  
松姫峠の駐車場   10:20頃
 自分の車以外止められて  いない





                                              使用カメラ:  OLYMPUS EP2    FINEPIX F300 EXR







1月23日 牛奥ノ雁ヶ腹摺山


  牛奥ノ雁ヶ腹摺山は春夏秋冬満遍なく訪れているが、最近は積雪時に訪れることが多く、今回も山頂から雪景色と富士山を狙うことにした。昨日降った雪がどの程度の積雪か情報が無いまま予定を組んだが、昨年3月の大雪の時には思った以上に登る時間が掛かり撮影のチャンスを逃した経緯がある。今回も同じぐらいの積雪を見込んで、更に余裕を持って行程を立てた。
 日の出時間30分前には山頂に立とうと“ペンションすずらん”先の県道218号ゲートを午前1時30分に出発。天空は星空で一杯であるが煌めきが少し不足している感じである。気温が0℃と高めであることが関係していることが考えられる。
 今回も牛奥ノ雁ヶ腹摺山の西尾根を往復する予定で、日川林道取付の登山口まで県道〜日川林道は遠回りとなるため、県道の途中から植林地帯を抜ける近道を行くことにした。積雪はゲート付近で30cm〜40cm。昨年3月と同じぐらいである。ゲートを越えると何と県道は除雪されているではないか。何故だか分からないまま先に進むが、返って除雪されていると路肩の雪から融け出た水が凍りツルツルで滑り易く大変歩きにくい。アイゼンを付けガリガリ歩くのも抵抗があり、路肩の雪のある所を歩くことにした。
 20分ほど県道を歩くと、近道となる木出し道路に分け入る。県道の除雪もここまでで、この先は30cmほどの雪が積もったままになっている。分け入った木出し道路も除雪されていて、木材の切り出し作業が進行中のようである。更に20分ほど歩くと切り出した木材のストックヤードがあり、除雪もここまでで、これから先は上り勾配の積雪の中をひたすら歩く。更に進むと道幅が徐々に狭まり、日川林道に取り付く道にそろそろ入ることになるが、積雪で入口がなかなか見つからない。この時点で天気は急変したようで小雪が舞い出した。暗闇の中を1人、ヘッドランプ1つの灯りを頼りに入口を探し回る気持ちは焦りと淋しさで不安が募る一方である。
 このまま山頂を踏んでも富士山を見ることができないのではないかと思うと、引き返そうかという心の動揺が起き上がるが、しかし、天気は山頂に立って見ない限り分からないと思い直し、引き返そうという気持ちを払拭する。
 暫く探し回りやっとの思いで入口が見つかった時には正直“ホッ”とした気持ちである。この日川林道に取り付く道は林道の西側に位置し、終点側では林道にほぼ平行となり200m位の位置に近接する。林道に一番近づいた所で90度方向転換し林道めがけて登りに入る。この間は道らしきものが不明瞭で藪こぎ(笹藪)を強いられる。この場所からは明るい夜であれば林道の白いガードレールが確認できるが、今日は全く分からず勘を頼りに登る。しかし、雪で頭を垂れた笹藪は行き先を阻み、思うように進むことができない。とにかく前に進まなければと思いつつ、益々深い笹藪に迷い込んでしまったようである。
 30分ほど藪との闘いの末、やっとガードレールが上方に確認できた。しかし、残り100m足らずの距離にも係わらず多くの時間を費やし、日川林道取付の登山口に着いた時は3時30分になっていた。何とゲートから2時間を要したことになる。この所要時間だと近道をせず県道〜日川林道をトレースした方が30分ほど早かった計算になる。これからが登山本番となるが、この時点で体力を使い果たした感じである。
 西尾根の登山道には40cmほどの積雪で、雪は膝下10cmぐらいの位置になるが、気温が高いため雪が重く、一歩踏み出すのに相当なエネルギーを使い、超スローペースでしか歩くことが出来ない状況である。これほど体力の減退を感じたことは初めてである。しかし、ここで引き返す訳にはいかず、時間的制約を解除し、意地でも山頂を踏もうという気持ちになった。
 この西尾根コースは途中から雑木(ざつぼく)の生い茂った中に切られた迷いやすい登山道を通過して行くことになるが、最近は木に巻き付けられたテープなどの道標などが多く、迷い込むことは少なくなった。しかし、雪が多いと道標を見逃すことがあり、今回もコースアウトを幾度となく繰り返したが、雪道で迷い込むと体力は2倍以上消耗することになる。
 この雑木帯を通過すると見晴らしの良い尾根に出る。既に時間は6時を少し回っていた。西尾根登山口を出発し3時間以上経っている。体力の衰えを改めて認識することになる。
 空は明るみを見せ始めているが、相変わらず小雪が舞い灰色の空で視界は殆どない。山頂に近づくにつれ積雪は10cmほど厚さを増し、多い所では50cm位あると思われる。山頂には足跡が残らないよう迂回して立つ。時間は7時20分。ゲートを出発してから5時間50分掛かった計算になる。昨年3月より10cmほど積雪は少なかったものの1時間多い所要時間となったことは残念である。道に迷ったことと体力の消耗が激しかったことが原因である。
 山頂の気温は-3℃と高めで風もなく寒さは殆ど感じない。水筒の水もシャーベット状で完全には凍っていない。昨晩から何も食べていないため、空腹感を覚え半分凍りかけた“おにぎり”をほおばる。胃の中が満たされると気持ちも落ち着いてきた。

 相変わらず天気は小雪が降り回復の兆しはない。直ぐに下山するのも抵抗があり、雪景色を見ながら暫く待機するが、天気は一向に変化はない。天気予報は晴れとなっていたが街は日差しがあるのだろうか?山だけが悪天候かも知れない。
 今日の撮影は諦め、8時50分、下山を始める。登る時に迷った箇所をチェックしながら無事下山の途に着く。ゲート到着は13時10分。今日は誰にも会うことはなかった。


“今日の富士山”は残念ながら望むことが出来なかった。


登山道の状況


 西尾根コースは日川林道登山口からの距離及び標高差ともそれほど厳しいものはなく、無雪期であればゲートから2時間10分ぐらいで山頂に立つことが出来るが、30〜40cmの積雪があると少なく見積もっても2倍の時間は掛かる。
 今回、登山に多くの時間を要した最大の原因はゲートから日川林道の登山口まで近道を選んだにも係わらず、道に迷ったり、更に笹藪の深い所に入り込んだり、序盤に体力を使い果たしてしまった結果である。むしろ遠回りでも林道をトレースした方が体力の消耗は少なかったと思われる。今回、下山時に迷った箇所をしっかりチェックしたので今後この様なことにはならない。
 西尾根コースは中腹から登山道の不明瞭な雑木(ざつぼく)の生い茂った箇所を通過するが、この雑木帯は折れた枝木などが散乱し無雪期でも歩きにくい。積雪の場合は雪の下が確認できないため散乱した枝木を踏んでバランスを崩して転倒することが良くある。特に雪の多い急斜面で転倒すると起きあがるのにザックを外すことになり無駄な時間を浪費する。この様な箇所の通過に多くの時間を要することがあるため行程に組み入れておく必要がある。この様な箇所でのアイゼン使用は刃を引っかけ返って転倒し易いため、使用は避けた方が良い。今回は登りの急な箇所で一部使用したのみで、下山時にも使用しなかった。


山頂の様子         8:10頃      

 山頂の様子          8:30頃 (雪を
被るサラサドウダンの  冬芽)

山頂の様子             8:35頃
山頂の様子         8:50頃




以下写真は下山時に撮ったものを時間順に並べてある。


山頂から西尾根への下山道口   8:
55頃(山頂に案内を示すものは何もな
い)  

樹林帯の中を行く登山道    9:00頃

所々にある案内標    9:10頃
西尾根頂部より日川ダムを俯
瞰        9:40頃




西尾根頂部の細尾根(富士山の展望
が利く)  9:40頃

雑木林の中の登山道10:20頃木にテ
ープを巻き付けた道標が所々に見ら
れる

西尾根登山入口直近の案内標      
11:20頃    

西尾根登山入口取付の日川林道    
   11:20頃




西尾根登山入口(日川林道取付箇
所)   11:25頃    登山口に案内を示
すものは何もない(現在は赤いテープ
が木に巻き付けてある)

近道への入口(日川林道から)      
11:20頃

日川林道直下より 11:50頃  日川
林道の白いガードレー ルが上方に
見える        

日川林道に取り付く入口(道はな
い)     12:05頃     これより林
道まで藪こぎが強いられる




木出し道路へ向かう道     12:15頃
日川林道へ向かう道の入口 12:20

切り出した木材の         スト
ックヤード  12:45頃

木出し道路          12:50頃
 除雪され木材の切り出し作業が進
行中のようである




県道と木出し道路の取付部 12:55
頃    

木出し道路の入口はこの距離標が目
安になる  12:55頃

閉鎖されている県道218号冬期ゲー
ト    13:10頃









  行程:ゲート(午前1:30発)→木出し道路取付き(1:50)→日川林道登山口(3:30)→山頂(7:20着・8:50発)→

           西尾根頂部(9:40)→日川林道取付(11:20)→ 木出し道路取付き(12:55)→ゲート(13:10着)






                                             使用カメラ:  FINEPIX F300EXR